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山根博士の海外モバイル通信 第432回

スマホ普及とIT化の波で様変わりする北米モーターショー

2019年02月18日 10時00分更新

文● 山根康宏 編集●ASCII編集部

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北米モーターショーの主役は
SUVやトラック

 北米モーターショーの直前に開催されたCES 2019では、自動運転、次世代EV、自動車への4Gや5G搭載など、ITに絡んだ展示やカンファレンスが多く行なわれました。ところが北米モーターショーではEVすら主役ではなく、休日に山岳地へ家族でSUVに乗って出かけるシーンをアピールした新車発表が目立っていました。

 また、トヨタが往年の名車「スープラ」を復活させたり、フォードが「マスタング シェルビー GT500」の2020年モデルを発表するなど、スポーツカーの動きが活発でした。クルマファンにはうれしい動きと言えます。

スープラ復活を声高にアナウンスしたトヨタの豊田章男社長

 「今の自動車」の展示会としてなら確かに北米モーターショーには大きな意義はあるでしょう。しかし数年後、十数年後の次世代自動車に対しての技術開発を各メーカーは行なっています。その展示がほとんど見られないようでは、本当の意味で今の時代を反映した「モーターショー」とは言えなくなっているのかもしれません。

次世代自動車の発表は日産のコンセプト車「Nissan IMs」が目立ったくらい

IT系の展示もあるにはあったが……

 もちろん主催団体もそのあたりは理解しているようです。メイン展示会場とは別の小ホールで「AutoMobili-D」と題した展示をしており、自動運転、コネクテッドカー、Eモビリティー、モビリティーサービス、スマートシティーという5つのゾーンにIT企業などが出展していました。

AutoMobili-Dゾーンには。CESに出展するようなIT企業がブースを並べる

 今、北米で販売されている自動車の多くは4Gのモジュールを内蔵しており、インフォテイメントシステムも進んだものが搭載されています。GoogleアシスタントやAmazon Alexaへ接続できるものもありますし、スマートフォンを接続して音楽やナビを利用できる車種も増えています。しかし、北米モーターショーではそれらの展示はあまり目立っておらず「運転する車」としての展示ばかりが目立っていました。

ヒュンダイの自動車はAlexaに対応

 これは来場者が北米モーターショーにIT技術面の展示を期待していないということなのでしょう。しかし、昨年から来場者が減り出展企業も減少したことからわかるように、もはや「自動車だけの展示」は時代遅れなのです。

 CESの開催期間中はLiftが街中で自動運転のデモを行なったほか、ヤマハが会場内のホール間で顔認証で自動走行する低速自動運転車の実験を行いまいました。しかしCESの会場やラスベガス市内での自動運転関連のデモは場所の関係もありそれ以上のことは難しいでしょう。

毎日氷点下以下の気温が続く1月のデトロイト

 来年、2020年の北米モーターショーは6月の開催となります。現状の1月開催ではCESの直後であることから出展企業の奪い合い(実際にはCESに出展した企業が北米モーターショーに続けて出てきてくれない)になりますし、冬の寒さがきついデトロイトでは屋外展示ができず、自動運転などのデモもできません。

 しかし、6月開催になれば屋外展示がしやすくなり「CESは技術展示、デトロイトで実証実験」のように、両者のすみ分けもうまくいくようになるでしょう。来年の北米モーターショーは説明員がスマートフォン片手に操作をする展示が増えていることが期待できそうです。

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