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Cybozu Days社長対談で披露されたクラウドの本質と両社のビジョン

サイボウズとAWSJの社長が語るAWSとクラウド、楽しい開発

2019年02月13日 07時00分更新

文● 重森大

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顧客のためのサービスなら社内コンフリクトも辞さない

青野:せっかくAmazonの話が出ましたので、Amazon独自の企業文化などがあれば紹介していただけますか?

長崎:AWSも含めて、Amazonは「地球上でもっともお客様を中心に考える」をミッションステートメントとしています。会議における意志決定でも、私たちの目先の利益ではなく「お客様がこれでハッピーになれるかどうか」が重視されます。言うだけではなく、この考え方が会社の隅々まで行き渡っているというのがAmazonの財産です。たとえばAWSでは優秀なエンジニアをたくさん抱えていて、サービスを形にする能力は高いと自負しています。しかしエンジニアリング能力が高いだけでは、できあがるサービスがお客様のためになるものかどうかわかりません。なので、まずプレスリリースを書くというルールを設けています。

青野:一般的にはサービスを作って市場に出すとき、最後にプレスリリースを書きますが、Amazonさんでは最初にプレスリリースを書くんですか? それは面白いですね。

前半は聞き役に徹する青野社長

長崎:このサービスを作ることでお客様がどのようなメリットを得られて、お客様体験がどう変わるかと、書くことは非常にシンプルです。書いて終わりではなく、このドキュメントをみんなに開示してフィードバックをもらいます。チームメンバーからダメ出しをもらってさらに良くすることで、サービスの軸が固まります。この最初のステップには時間がかかりますが、ここで軸を決めておくと開発過程がスムーズになるんです。何か問題が起きたときは、このドキュメントに立ち返り、自分たちは何を目指して何を作っていたのかと問い直します。

青野:お客さんにとってのバリューは何かというぶれない軸を、最初に作るんですね。初期段階でお客様のことを徹底的に考えるというのは、大変ですね。

長崎:大変ですが、お客様中心というのを絵に描いた餅ではなくて、きっちり体現していくために必要なことなんだと思います。

青野:AWSさんではデベロッパーやユーザーのエコシステムを丁寧に作っていますが、それもAmazonの文化なんですか?

長崎:Amazonの文化かと言われるとわからないんですが、特に日本においてはAWSを取り囲むユーザーグループの活動が盛んですね。AWSが正式に日本に進出するより前、2008年くらいにはAWSが好きな方のコミュニティができていました。それを一緒に育ててきて、いまは全国すべての都道府県に支部ができ、自発的な意見交換をされています。

青野:それがJAWSですね。実は私たちもユーザーコミュニティを作る際に、JAWSを参考させていただいたんですよ。

長崎:サイボウズさんのコミュニティやエコシステムも、いまどんどん広がっていますね。

青野:AWSさんのエコシステム、コミュニティと、サイボウズのコミュニティがシンクロしてきて、どっちも扱えるパートナーさんが増えて来たらお互いにハッピーですよね。

長崎:こんな風にコミュニティが進化してきた背景には、クラウドの良さがあると思います。特にAWSのサービスは、価格がガラス張りで、Webを見れば誰でも使えます。われわれよりお客様の方が情報に精通しているケースさえあります。そうするとこちらは隠すものが何もないので、お客様やパートナーさまと対等な立場でサポートができるんです。この対等な関係からお互いの信頼関係が生まれて、コミュニティが成長してきたのではないかと思います。

「AWSのサービスは価格がガラス張りで誰でも使える」(長崎氏)

青野:なるほど。確かにベンダーだけが知っている情報がたくさんあったら、パートナーさんとの関係は対等にはなりませんね。しかしガラス張りにするのは大変ではありませんか?

長崎:大変ですが、AWSを使うことでお客様のビジネスを加速すること、あるいはサービス開発を早めてイノベーションを加速することがわれわれの喜びですから。ビジネスを開始して以来、目先の利益よりもお客様に成功していただくことに重きを置いているということです。社内でも言い続けていますが、お客様の成功なくしてわれわれの成功はありません。特にいま成功しているユーザー企業さんは、クラウドを選ぶこと自体がチャレンジングだった数年前にAWSを導入してくださっています。そういったお客様に成功者になってもらわないと、われわれ自身にも成功はないと言い続けています。

「コードハッピー」「楽しいは正義」でエコシステムを広げる

青野:それはものすごく納得できる話ですね。私たちももう7年くらいクラウドビジネスをやっていますが、一番怖いのは解約されること。ではどういう場面で解約されるのかというと、お客様のビジネスがうまくいかなくなると解約される訳ですよ。従来のITなら売れた時点で終わりだったんですが、クラウドの場合はパートナーとして一緒に走り続けていかないと、自分たちのビジネスも立ちゆかなくなります。そこがこのビジネスの面白さでもありますね。

「クラウドの場合、お客様のパートナーとしていっしょに走り続けなければならない」(青野氏)

長崎:そうなんですよ。われわれとお客様の関係は、お客さんがAWSを使い始めた瞬間から始まります。そこから、より良いサービスを提案したり、コスト削減の方法を紹介したりということを積み重ねて信頼関係を築き、お客様のビジネスにインパクトを与えていきます。

今でこそクラウドは普通になりましたが、それ以前の我々はテクノロジーを売るのではなく、勇気をもってクラウドに来てもらうためのマインドチェンジを支えることを重視していましたね。

青野:提供する私たちも、お客さんとパートナーとして併走するというマインドチェンジが必要ですけど、お客さん側にもマインドチェンジが必要なんですよね、今までみたいにベンダーから何か買って使って終わりではなくて、小さいアイディアをどんどん立ち上げていくんですよと。このマインドチェンジを引き出していかないといけません。

長崎:今回のテーマである「楽しい」という観点では、いままで情報システム部でずっと保守ばかりやっていた方々が、AWSのテクノロジーに触れることによって新しいひらめきを得たり、楽しいことができるようになってきたと仰います。現状を保つだけではなく、ビジネスに貢献できるチームになってきたと、うれしそうにお話しいただくケースが少なくないんです。楽しくワクワクですね、テーマは。われわれはコードハッピーと言っています。コードを作ってハッピーになろうと。

青野:まさに「楽しいは正義」ですね。

長崎:その通りです。楽しくないとダメです。

青野:大変勉強になるワクワクするようなお話、ありがとうございました。

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