トランスアクスル化に電動サイドミラー
まったく別物になったレクサス LC
まずエンジンはレクサス LC500をはじめとする、同社プレミアムモデルに搭載する排気量5000cc自然吸気V型8気筒の2UR-GSE改。これを可能な限り運転席側まで後退させ、よりマスを中央に寄せる形とした。
さらにトランスミッションとデフを一体化(トランスアクスル)し、車体の後方に配置。トランスミッションをフロントに配置しないことで、重量物が車体前方に集中するのを防ぎ、重量バランスの適正化がなされている。FRのトランスアクスルはレクサス LFAをはじめとする一部の高級スポーツカーでしか採用していない方式だ。
目につくのは、ドアミラー上のカメラ。これは10月に発売したレクサス ESで量産車としては世界初となる「デジタルアウターミラー」を応用したもので、左右のドアミラーの代わりに、車内のディスプレーで後方視界を確認する仕組み。
そのほか、サスペンションをはじめとして、ほぼすべてのコンポーネントが一新され、土屋選手のいうところの「まったくの別物」へと生まれ変わった。そして、これらのうちのいくつかの技術が、ニュルブルクリンクでの実戦の後、近い将来、私たちが乗る車へと反映されると思うとワクワクせずにはいられない。
超一流ドライバーとエンジニアが
万全の体制で車両をセッティング
車両のセッティングは、今回で7回目の参戦となる蒲生尚弥選手が担当。蒲生選手によると「昨年よりも全然乗りやすいし速くなっている」と笑顔。土屋選手も「去年よりすでにタイムがいいですね。つまりこれは、去年の反省を踏まえて、エンジニアが駄目だったところを修正し反映した結果です」と語る。もちろん荒れたニュルブルクリンクと路面が整っている富士スピードウェイでは条件がかなり異なるものの、「そこの違いに関しては、ノウハウがあるので心配はいらないですね」(松井孝允選手)と話す。
最も目に見える形で、今後同社の市販車に導入されるテクノロジーが、カメラを用いたサイドミラーだ。ちなみに、レクサス LCのルームミラーは以前よりカメラを用いたシステムで、これは市販車にも採用されている。「ドライバーからは0.1秒ほどの遅延があるという報告はあがっていますが、たとえば夕日の逆光がミラーに当たって見づらい状態でも、カメラならはっきりと見ることができたそうです。これから遅延や見やすさを詰めていきます」とメカニックは語る。こうして車は鍛えられていくのだ。