分岐予測ミスを回避するために
新たな命令フォーマットを搭載
パイプライン1段あたりの処理を減らしても、まだ分岐予測ミスにはペナルティーがあるわけだが、これに対して博士が考えたのは、BRANCH AND EXECUTEという命令フォーマットである。
これは一種の遅延スロット(これもRISCの特徴の1つに挙げられている)の実装で、オリジナルは博士によれば1952年にロスアラモス科学研究所(ロスアラモス国立研究所の前身にあたる)が構築したMANIAC I(Mathematical Analyzer, Numerical Integrator, and Computer or Mathematical Analyzer, Numerator, Integrator, and Computer)というマシンで実装されたアイディアだという。
博士はこのBRANCH AND EXECUTEを交換機用に利用した場合のシミュレーションを行ない、かなり良い結果を得たことで、これを搭載することにしたという。
この方式の欠点は命令密度が下がることだ。例えばSystem/370に搭載されているADD FROM STORAGE命令(メモリーから値を読みだして加算を行なう)は、この仕組みを使うとLOAD(メモリーからレジスターに値を読み出し)、とADD FROM REGISTER(レジスターの値を加算)の2命令に置き換えられることになる。
ただ逆に言えば命令密度が落ちるだけの話で、System/370がADD FROM STORAGE命令を実行する時間で、こちらは2命令以上を実行できるという見積りが出たことで、この欠点は許容されることになった。
ほかにもSystem/370でよく利用される命令を調査したところ、実行時間の大半はLOAD/STORE/BRANCH/FIXED-POINT ADD/FIXED-POINT COMPAREという命令で占められていることが確認され、これらの命令もうまく代替できる見通しが立った。
この連載の記事
-
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第787回
PC
いまだに解決しないRaptor Lake故障問題の現状 インテル CPUロードマップ - この連載の一覧へ