分岐予測ミスを回避するために
新たな命令フォーマットを搭載
パイプライン1段あたりの処理を減らしても、まだ分岐予測ミスにはペナルティーがあるわけだが、これに対して博士が考えたのは、BRANCH AND EXECUTEという命令フォーマットである。
これは一種の遅延スロット(これもRISCの特徴の1つに挙げられている)の実装で、オリジナルは博士によれば1952年にロスアラモス科学研究所(ロスアラモス国立研究所の前身にあたる)が構築したMANIAC I(Mathematical Analyzer, Numerical Integrator, and Computer or Mathematical Analyzer, Numerator, Integrator, and Computer)というマシンで実装されたアイディアだという。
博士はこのBRANCH AND EXECUTEを交換機用に利用した場合のシミュレーションを行ない、かなり良い結果を得たことで、これを搭載することにしたという。
この方式の欠点は命令密度が下がることだ。例えばSystem/370に搭載されているADD FROM STORAGE命令(メモリーから値を読みだして加算を行なう)は、この仕組みを使うとLOAD(メモリーからレジスターに値を読み出し)、とADD FROM REGISTER(レジスターの値を加算)の2命令に置き換えられることになる。
ただ逆に言えば命令密度が落ちるだけの話で、System/370がADD FROM STORAGE命令を実行する時間で、こちらは2命令以上を実行できるという見積りが出たことで、この欠点は許容されることになった。
ほかにもSystem/370でよく利用される命令を調査したところ、実行時間の大半はLOAD/STORE/BRANCH/FIXED-POINT ADD/FIXED-POINT COMPAREという命令で占められていることが確認され、これらの命令もうまく代替できる見通しが立った。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ











