ローコーディング3製品で業務改善に成功した2社の事例
Power Platformによる業務効率化のカギは「動線の工夫」と「部署同士の協力」
2019年02月07日 11時00分更新
来訪者受付システムの試作版が4時間で完成:ソントレーゾ
Power Platformで社内業務の電子化に成功した株式会社ソントレーゾの事例を紹介する。「スタートアップ会社を支えたPower Platform! 社内の業務をすべて電子化できた成功例」というセッションで登壇したのは取締役CTOの中村亮太氏。中村氏はインフラ上がりのエンジニアで、開発はほとんどしたことがないそう。
ソントレーゾは2017年に創業し、Office 365の導入サービスやインフラ構築、受託開発などを行っている。1期目は管理部がすべての予算を管理し、開発部長が全社員の勤怠承認をしていたという。オフィスもコワーキングスペースを利用していた。2期目には実績が上がり、オフィスを契約。部署も管理部、営業部、クラウド事業部があり、その下に複数のグループが作成された。
当初は業務用社内システムとしてOffice 365を利用していたのだが、来訪者受付や入退室管理、会議室の利用状況など、管理しなければならない情報が出てきた。さらには、承認フローが複雑化したり、勤務状況実態を分析できないといった課題も出てきた。「タブレットで来訪者受付を作れば、社名の表示もできるので、余計な費用がかからずに済みますよね、と管理部に提案されました」(中村氏)。
大手が使っているような受付システムだと50~200万円するが、そんな金額は払えない。中村氏がいろいろと調べたところ、「PowerApps」を見つけたという。「自分の中でノンコーディングとはどういうことか整理したところ、難解なソースコードを書かずに、アプリを開発できる技法ということがわかり、とりあえずやってみようという気持ちが芽生えました」(中村氏)。
実際にチャレンジしたところ、来訪者受付システムのパイロット版をなんと4時間で完成させたという。フォームに会社名や名前を入力してもらうと、通知が届く仕組みだったのだが、リリースしたところ管理部から要望が来た。来訪者がわかっているのなら、全部入力させるのではなく、簡易化したいという内容だ。
「結果的には、他の仕事をしながら4日でバージョンアップできました。あらかじめ発行した予約番号をタップするようにしました。予約番号の発券は別のアプリを作り、従業員が操作すると、お客さまのメールアドレスに予約番号が送られる仕組みです」(中村氏)。
この成功体験から、Power Platformを活用し、様々な業務アプリを作成することになった。自宅勤務が多い管理部のメンバーのための「日報作成ツール」や「各種申請ツール」、その他にも「鍵解施錠管理システム」「勤務状況サマリレポート」などのアプリを作成した。。
Power Platformを使うと、表現力の向上というメリットがあると中村氏。PowerAppsなら、ちょっとしたモック画面を実際のアプリに近い形で直に触ってもらうことができるようになる。
「実際に触ってもらうのと、口頭ベースで表現するのでは、100倍くらい興味のつかみが違うと思います。また、これまでアイディアを出したりアプリを作ったりするのはエンジニアだけでしたが、Power Platformなら非エンジニアや経営層から積極的な提案が出てくるようになりました。欲しい機能は欲しい人が作るべきです。そうすることで、アプリの利用率が向上し、必要に応じて拡張されてより便利なアプリに成長していきます」(中村氏)。
だったらエンジニアは不要なのかというと、そうではないという。Power Platformとはいえ、標準ではできないこともある。コネクタが用意されていないサービスやIoTデバイスと連携したい時などは、カスタムコネクタを利用できる。
「最終的にはPower Platformで、社員同士が協力しあった素敵なアプリを作成する場ができます。今までは、それぞれの部署が丸投げし合うような仕事ではなく、お互いの善し悪しを理解して、アプリを作っていけば会社全体で共創が生まれてくると思います」(中村氏)。
今後は、社内でPower Platformのセミナーを開き、社員内での利活用を推進していくという。また、インフルエンサー的な人を立てるなりして、その人を評価制度の主軸にして環境整備を行っていく予定とのこと。
「たくさん使うと、その分ライセンス料が発生します。PowerAppsのPlan 1だと月に760円、いっぱい使えるPlan 2だと月に4350円かかりますが、そこはお金を出し惜しみするのではなく、積極的に予算化してやりたい人には使ってもらえる環境を作っていきたいと思っています」と中村氏は締めた。
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どちらの事例も、Office 365での運用で課題が生まれ、Power Platformで解決できている。コードが書けなくても、業務で活用できるアプリを作成できるのがPower Platformのポイントとなる。小林氏は手間をかけずに使ってもらえる動線の工夫が重要、中村氏は部署同士で協力し合うことが業務効率化のポイントだと紹介してくれた。どちらも、社員を巻き込んで活用度を高めるためには欠かせないところ。これからPower Platformを導入しようとしている企業は是非参考にして欲しい。
(提供:日本マイクロソフト)