ローコーディング3製品で業務改善に成功した2社の事例
Power Platformによる業務効率化のカギは「動線の工夫」と「部署同士の協力」
2019年02月07日 11時00分更新
2018年12月21日、マイクロソフトのPower Platform「PowerApps」「Microsoft Flow」「Power BI」をテーマにしたユーザーイベント「ローコーディングの極み!Power Platform Day Winter '18」が開催された。Power Platformとは、世界で唯一、データの収集から解析・予測まで、一気通貫でローコーディングにより実現可能なプラットフォームだ。イベントでは多数のセッションが開催されたのだが、今回は社内の情報をPower Platformでつなげて業務を効率化するという切り口で、2つのセッションの様子を紹介したい。
工数管理にOneNote、kintoneを経てPowerAppsへ:フロッグポッド
まずは「経営者が語る:Power Platformで業務改革! 作業工数を把握し可視化せよ」というセッションでは、株式会社フロッグポッド 代表取締役の小林竜也氏が登壇した。フロッグポッドは、2006年に設立され、システム開発やデザイン制作、ノベルティの作成、自社開発サービスの提供などを行っているおり、規模としては従業員数が13名、2017年度の売り上げは1億2900万円となる。
「私はエンジニアではないのですが、業務を簡素化し、改善できたので、管理部門の人であれば、必ずできるし、やってみたいと思ってもらいたいです」と小林氏。
システムの開発会社は期末まで経常利益が確定しなかったり、受注金額が増えれば入金サイクルが悪化したり、開発が長期化すると赤字リスクも上昇するなど、様々な課題がある。そこで重要になるのが工数管理だが、スタッフは全員忙しいので社長が自らやるしかない。当初は、社員がクラウドメモアプリ「OneNote」に作業内容を記録し、エクセルに転記してグラフ化するという作業を行っていた。
セッションでは実際にOneNoteの画面を見せてくれたのだが、年月のノートブックの中に日付のページを作成し、スタッフはページ内に自由に書き込んでいて、ちょっと見づらかった。
「入力してもらうことが大事なんです。どんなにすごいシステムを作っても、入力してもらえなければ意味がありません。面倒くさいと入力する文化が育たない。そのため、管理する側は面倒ですけど、普段使っているOneNoteでやってみようと始めました」(小林氏)。
しかし、自由に入力してもらっているので、案件情報の書き方が人によって違うので識別化が難しいという課題があった。エクセルにコピーしなければ時間のカウントもできない。それも、時間数を入れるところに、プログラマーが文字で「休み」と入力したりしていたそう。結局、レポートを作成する手間は減らず、そのうえ情報を把握できるのはレポートが完成した月1回のタイミングのみ。そこで、小林氏は工数の入力をアプリ化したいと考えた。
まず、サイボウズのアプリプラットフォーム「kintone」を導入した。小林氏が非エンジニアでも業務に使えるアプリを作成できそうだと感じたためだ。そこに、見積・請求書サービスの「MakeLeaps」をAPI連携させようとした。「いきなりJava Scriptを書けと言われるんですが、非エンジニアにしてみると拷問です(笑) それを書かないと連携できないので、2~3週間かかってなんとかつなげました」(小林氏)。
その結果、データの転記作業とレポートの加工時間を削減でき、社内にある情報をつながると業務改善につながるのではないか、ということに気がついたそうだ。しかし、JavaScriptを書き続けるのは耐えられなかったと小林氏。そこで、次に採用したのが「Power Platform」となる。
ビジネスアプリ作成ツール「PowerApps」で工数入力アプリを作成し、タスク自動化ツール「Microsoft Flow」でコラボレーションツール「Teams」に飛ばすようにした。さらに、収集した情報は「Common Data Service」に保存し、データ可視化ツール「Power BI」でグラフ化した。
すべてマイクロソフトのソリューションを使うことにより、「Office 365」や「Azure Active Directory」ともシームレスに連携できるというメリットもある。複数サービスを使うときに、いちいち異なるアカウント情報でサインインすると、入力するという作業を遮ってしまうデメリットがある。社員に入力して欲しいなら、動線を上手く作ることが重要だという。
「経営者としては、この人がこのタイミングで見るのはこの情報、別の人に必要なのは別の情報、と切り分けして提供できるようになったのがありがたいところです。社員全員が改善マインドを持っているわけではありません。改善したくない人でも、簡単に情報を渡してあげれば、見てくれるようになります。これは、私たちの会社ではとっても重要なことでした」(小林氏)
その結果、受注金額や作業時間といったデータがわかりやすく可視化されることで、全社員が自然にコスト意識を持つようになった。作業時間の削減以上の効果が得られたのだ。今後は、販管費を管理している「MFクラウド会計」をMicrosoft Flowで連携させ、販管費と売り上げの比較などを自動的に可視化していく予定だという。