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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第81回

デジタル温度管理で料理のストレス軽減 Temp Pan自腹レビュー

2018年12月12日 12時00分更新

文● 前田知洋

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テクノロジーは人間の欲望で社会に浸透する?

 「テクノロジーは人間の欲望で社会に浸透する」ともいわれますが、娯楽に比べてやや浸透が遅めのキッチンにもデジタルの波が確実に押し寄せてます。今回紹介するビタクラフトのTemp Panは、「美味しいものを手軽に食べたいっ!」という欲望を満たしてくれるフライパン。バックライト付きデジタル温度計と同社独自のフッ素樹脂加工「マジックコート」という組み合わせがポイントです。

 マジックコートは高密度4層フッ素コーティングと超硬質セラミックスの加工が特徴で、耐摩耗テスト200万回をクリアしているそう。しかし、フッ素樹脂加工の弱点は金属ヘラと高温です。メーカーにもよりますが、フッ素樹脂の融点は240℃ほど。高温で使うとフッ素樹脂はすぐにダメになってしまいます。

 そんなわけでデジタル温度計付き、それもセンサーが熱源に近い部分に内蔵されたフライパンはとてもナイスな組み合わせなのです。

取手の端に電源スイッチ(赤い部分)と温度表示部分があります。ガラス製のフタ付き

これがホントの自腹レビュー(笑)

 ちなみに、筆者が購入したTemp Panは26センチ。横浜のデパートで購入しました。今回のレビュー用に用意したのは葉山牛のフィレ肉。記事のために少し見栄もはりましたが、筆者の地元の食肉店で買うと多少リーズナブルです。学校の先生が言うように「家につくまでが遠足」なら、今回は「お腹に入るまでがレビュー」。これがホントの自腹レビューかも…(笑)。

肉が大きいので薄く見えるかもしれませんが、葉山牛フィレ肉130gの証拠写真

 じつはフッ素樹脂のフライパンでステーキを焼くのは難しいといわれています。その理由はステーキ調理の最適温度は200℃~210。フッ素樹脂の限界温度の240℃ギリギリです。今回はそれに挑戦しますが、失敗したら肉もフライパンもダメになってしまう…。小心者の筆者としてはドキドキです。

200℃になると煙が立ってビビる

 フライパンに牛脂を入れて中火にかけます。ところが、160℃付近から温度が上昇しません。どうやら、ガスコンロの自動過熱防止センサー(空焚き防止機能)が働いて弱火になっているらしく、センサーをマニュアルで解除してさらに加熱。200℃に近づくと溶けた牛脂とフライパンから少し煙もあがってビビります。温度計付きのフライパンでなければ、できないギリギリの状態です。

あと40度でフッ素樹脂の融点になるギリギリの温度

 200℃になったら、バターと肉を投入します。「ジュ~~~!」と美味しそうな音がして、ドキドキが喜びにかわります。

 火加減の調整しながら200℃をキープ。フライパンがIHに対応しているおかげで鍋底が厚く、急激に温度が変化しないので調整も難しくありません。鍋底が厚いのでフライパンは重くなりますが、筆者は男性のせいか調理中はあまり気になりません。

 片面に肉汁が浮いてきたら、肉をひっくり返します…、って何の記事を書いてるのかわからなくなってきますが(笑)

200℃だと、表面がこんがりと焼き上がる

それぞれの食材にあわせて温度管理

 ステーキ調理のあと、アワビを炒めてパスタを作りましたが、これは160℃で。ちなみにアワビは知人からの誕生日プレゼントの返礼品です。いつも我家の冷蔵庫に豪華な食材があるわけではありません。

スライスしたアワビは160℃で

総評

 200℃をキープすることでステーキはレストランのクオリティで焼き上がりました。アワビは若干固く仕上がったので、130℃くらいが良かったかも。こんなふうに、デジタルの数字で温度管理ができることで、調理のばらつきがなくなること、フッ素樹脂加工の寿命をのばせることがTemp Panを使う利点でしょう。

 フッ素樹脂は急激な温度変化も苦手なので、調理後にフライパンが100℃以下になったことを確認してから洗えるのも嬉しい機能。

 温度センサーは0~300℃の範囲で測定できるため、炒め物だけでなく、50℃のお湯をつかった貝類の砂抜きや、生イクラのアニサキス予防に活用できると筆者は期待しています。温度表示部分のバックライトのオン/オフや電池残量表示も嬉しい機能です。

 最後に注意点として、Temp Panの防水性能はIPX5なので食洗機や漬け置き洗いはNGなこと。ちなみにフライパンや鍋選びのポイントとして、HI対応は底が厚く作られているので丈夫で温度が安定しやすい。ただし、そのぶん重くなるので注意が必要です。

 Temp Panは料理の腕前が上がったように感じるだけでなく、火の通り加減を数値でコントロールできることで、調理のストレスが軽減される…、そんな気分を気軽に味わえるプロダクト。あと、肉は常温にしてから焼くと美味しいよ!

ソースは九州の醤油ベースで

アワビのパスタ

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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