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スポーツエンターテイメントの未来

「スポーツは楽しい」を再認識させる仕掛けが産業化のカギ

2019年01月28日 06時00分更新

文● 本田雅一 編集● ガチ鈴木 /ASCII編集部 写真● 曽根田元

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 この事業モデルを考え出したT2APACの中心は「Astro Malaysia」だ。T2APCの事務局はシンガポールを本社に、上海とシカゴにブランチオフィスがあるが、事業の主体はマレーシアのコンテンツ企業である。デジタルコンテンツ配信やTV、ラジオ放送のインフラを持ち、メディア事業を起点に、ネットを通じた商品の販売もしている。(※)

 上海やシカゴにオフィスを持っているように、見据えているのはグローバル向けの配信だが、そもそもマレーシア国内だけでもリーグ運営が可能な規模を備えていることが、ひとつ大きなポイントではある。

 ネット配信を前提とするならば特定の国に閉じたコミュニティではなく、大きな規模を目指すとき、スピード感のある展開、ドラマチックな逆転劇なども要素としては必要不可欠だ。それらをルールの見直しによって作り出す方法を、T2APACは模索していた(大会期間中も2017年などはルール調整が行われていた)。その上で「ストリーミング”によって視聴者数を確保し、より手軽に映像として卓球を楽しめるようにしている。

 試合会場であるマレーシアのPinewood Iskandar Malaysia Studios内のスタジオの中に競技場、スタジオの観客ラウンジ、ホスピタリティスイート、選手のトレーニングエリア、および映像制作、ネット中継機材などのセットを一体化した専用アリーナ「T2Cavern」を設置。

 映画スタジオが場所に選ばれているのは、上記のような設備を1ヶ所に構築した上で、どの場所でも多様な角度から照明・カメラワークを行えるようにするためだ。コンパクトなレイアウトとし、多数のカメラを異なるファシリティに常設。スイッチングのパターンも簡素化することで、「短い試合」を「多数」、「チーム戦」で戦う様子を、観客や事前トレーニング風景なども含め、すべて「生中継」でひとつの番組として成立させるようにしている。スポーツであるからには結果がわからない生中継が基本となるのは当然として、そこにポストプロダクション(あと編集)で制作したような、ダイナミックな展開やカメラワーク、スイッチングを組み合わせ、映像チャンネルとして楽しめるよう創意工夫をしており、チーム戦は1本の生中継で完結するようになっている(試合時間に制限があるため)。

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