日本の互換機製造メーカー相手に戦った
IBM産業スパイ事件
問題はこのAdirondack Hardware Design Workbookが、日立の手にも渡っていたことだ。ただ1981年の時点では、27巻のうち一部(10巻程度)しか日立は保有しておらず、本気でS/370-XAの互換機を開発するためには27巻全部が必要と考えた。
かくして日立はこの非公開資料を入手できないかと水面下で画策するが、この画策は直ちにIBM側の知るところとなり、FBIまで出てきておとり捜査が行われた挙句にまず6人が逮捕され、最終的には16人もの日立関係者が起訴されるという騒ぎになった。
最終的に日立には1983年に罰金が科せられ、三菱電機(日立に連座する形で同社社員1人も逮捕され、やはり起訴された)は司法取引により1983年に不抗争で決着する。ただこれは刑事訴訟の方で、IBMによる民事訴訟も当然同時に発生することになる。
こちらも1983年に秘密協定締結とのセットで和解に達したが、これは要するに日立や三菱電機はIBMの互換機を引き続き製造できる代わりに、多額のライセンス料やロイヤリティーを支払うことが義務付けられた形だ。
ちなみに富士通はこのスパイ事件とは無縁であったが、同社はやはりIBMのソフトウェアを無断で複製しているとの訴えを起こされ、こちらも1982年10月から交渉に入り、最終的に1983年7月に和解に達している。
ただし、この和解条項に不備な点があったため、1985年にIBMはAAA(米国仲裁協会)に訴えを起こし、1987年に一旦裁定が出たものの、そこからさらにSF(Secured Facility)の運用などを巡って再び争いが始まる。
最終的に1997年7月まで都合15年もの間、両社は争いを続けており、その間にSystem/370というよりも、メインフレームの市場が事実上消滅することになった。
ちなみに海外の互換メーカーは、3081以前に低価格なIBM 4300シリーズの出現で事実上蹴散らされており、ハイエンド互換の日本のメーカーだけが残っていたという状況だった。ただ、1980年代には稼ぎ頭であったメインフレームであるが、その1980年代の終わりには状況が変わり始めていた。
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