自律するクラウドへ、「Oracle Open World 2018」レポート 第3回
AI/機械学習機能、IoT/ブロックチェーン、SaaS移行支援サービスなど「OOW 2018」で紹介
基幹業務アプリのSaaS移行で“最後のアップグレード”を、オラクル
2018年11月14日 07時00分更新
ERP/EPM、SCM、HCM、CXそれぞれの機能アップデート
製品ごとに、今回または最近追加された新機能群を簡単に概観しておこう。
まず、Oracle ERP/EPM Cloudでは、AI/機械学習ベースの機能がいくつか追加されている。前述のExpense Reporting Assistantのほか、定常業務の自動化をAIが支援する「Intelligent Process Automation」、EPMにAIの洞察能力や不正検知能力を組み込む「Intelligent Performance Management」、ERPに対する内部からの不正アクセスを監視/防止する「Advanced Access Controls」などが含まれる。
また「Oracle Subscription Management」が発表されている。これはサブスクリプションモデルのビジネスを展開する際の顧客との購買契約、課金、収益認識などを管理するもので、バックオフィス側(ERP Cloud)とフロントオフィス側(CX Cloud)の機能を提供する。
Oracle SCM Cloudでは、生産予測などの製造業向けAI/機械学習機能のほか、IoTデータに基づくアセット監視や生産監視、輸送監視などの機能を提供する「IoT Applications」、そしてサプライチェーン全体のトレーサビリティや透明性を実現する「Oracle Blockchain Applications」などがある。Blockchain ApplicationsはSCM CloudやERP Cloudと連携して、紙ベースのプロセスを排除し、確実なデジタル証跡を残すことができる。
Oracle HCM Cloudでは、前述したAI/機械学習によるベストな採用候補者の選出、Digital Assistantとの連携機能のほか、人事部門がIT部門の手を借りずに人事プロセスを構成、パーソナライズ、合理化できるようにする「Oracle Experience Design Studio」が追加されている。
Oracle CX Cloudでは、前述したAI機能やDigital Assistant連携機能のほか、「Oracle CX Unity」を発表している。発表によると、CX Unityでは従来考えられていた“静的で直線的なカスタマージャーニー”ではなく、より動的でリアルタイムなカスタマーデータに基づいて、柔軟な提案を実施できるようにするというものだ。企業全体のオンライン/オフライン、サードパーティの顧客データソースをデータファブリックに統合し、ダイナミックな単一の顧客ビューを形成したうえで、機械学習技術の適用によって最適化されたカスタマー体験を実現するとしている。
オンプレミスからの移行コンサルティング+自動化ツール「Soar」
基幹業務アプリケーションの“Last Upgrade”、つまりSaaS移行を促すために、オラクルでは「Oracle Soar(ソアー)」というアセスメント/コンサルティング/移行自動化ツールのパッケージを提供している。
ミランダ氏は、Soarによっておよそ20週間でクラウド移行ができ、30%のコスト削減につながると価値をアピールした。なお、現在のSoarでは「E-Business Suite」「PeopleSoft」「Hyperion Planning」からのERP/EPM Cloud、SCM Cloudへの移行をサポートしているが、HCM Cloudへの移行も可能にする予定だ。
「顧客が最も懸念するのは、クラウド移行にどのくらいの時間とコストがかかるのかということだ」「Soarではそれらを(事前に)正確に測ることができる。オラクルのコンサルティングチームと連携し、移行のための自動化ツール群もパッケージして移行を支援するとともに、ビジネスプロセスが必ず改善されることを保証する」(ミランダ氏)
またエリソン氏は、Soarによって移行作業のかなりの部分が自動化、シンプル化されており、「移行、マイグレーションというよりも、製品の“アップグレード”という位置付けだ」と述べた。オンプレミスアプリケーションではカスタマイズされているケースがほとんどだが、顧客それぞれ独自の設定やデータは、移行自動化ツールによって容易にクラウド移行できるという。さらに、SAPやSalesforceのアプリケーションを併用する顧客向けにも、Cloud ERPと接続、統合するための豊富なコネクタライブラリを提供していると説明した。
* * *
SaaSアプリケーション群を紹介する中でエリソン氏は、オラクルのSaaSが持つ強みのひとつとして、高い可用性や拡張性、セキュリティを備える「Oracle Cloud Infrastructure」や「Oracle Autonomous Database」という基盤を持っていることを挙げた。「SaaSの競合他社の場合、強固なサービス基盤をなすインフラを持っていない場合がある」(エリソン氏)。同時にこれらは、顧客オンプレミスでも実現できない強みと言える。
そしてやはり、AI/機械学習による自動化だ。ミランダ氏は、スタンドアロンのAI/機械学習エンジンではなくアプリケーションに組み込まれていることで、より詳細なデータの取得と顧客に応じたチューニングが可能になると説明する。そしてエリソン氏は「SAPやE-Business SuiteからOracle ERP Cloudに移るべきメリットは何か」という顧客の問いに、こう答えたいとまとめた。
「AI/機械学習は複雑なビジネスプロセスを完全に自動化でき、信頼性も高い。これにより、前の世代の(オンプレミスの)基幹業務アプリケーションよりも高い生産性を実現するからだ」(エリソン氏)
この連載の記事
-
第2回
クラウド
オラクルIaaS新発表まとめ、セキュリティ統合やEPYCインスタンスなど -
第1回
クラウド
オラクルのエリソン氏、OOWで“第2世代”クラウドのビジョンを語る -
クラウド
自律するクラウドへ、「Oracle Open World 2018」レポート - この連載の一覧へ