先日、JR亀戸駅(東京都江東区)近くにある持ち帰り弁当店「キッチンDIVE」が実施している「24時間営業の売り場の様子をYouTubeでライブ配信する」ユニークな取り組みがネットメディアやテレビで取り上げられ話題となりました。
公式Twitterアカウントのツイートによれば、客が「どんな弁当が店頭に並んでいるか」「買いたい(食べたい)弁当があるかどうか」が来店前に確認ができるようにしたいという目的で、ライブ配信を活用し始めたのだそうです。
また、ライブ配信を活用し始めたことで、売上が5%上がったことだけでなく、これまで被害を受けていた万引きや、いわれのないクレームをする客の来店といったトラブルも大きく減らすことへ繋がったそうです。このため客が来店前に在庫確認ができるようにしたいという本来の目的以外にも、当初期待されていなかった“二次的な効果もあった”と触れられています。
ライブ配信に問題があるかのような議論になっている
一方、売り場の様子をライブ配信することは、来店した客の顔も映り込んでしまう可能性があることについて「プライバシーや肖像権の問題もあるのでは?」とソーシャルメディア上で意見も挙がりました。
実際に「キッチンDIVE」を訪れてみたところ、店の入り口には「YouTube Liveにて生放送中!」という掲示と共に、その下にはライブ配信されている実際の映像も店頭で映し出されており、お店へ入る前にそれを確認することができるようになっています。これによって、ライブ配信そのもの(YouTube Live)を知らない人にも、それが具体的にどういうものなのかを知ることが可能です。
店の入り口だけでなく、店内のレジカウンターにも同じ掲示があり、ライブ配信されていることに気がつかないようなことがないよう、プライバシーや肖像権などへの配慮がなされている印象を受けます。また、実際に筆者がお店に行った後日、ライブ配信していることをさらにわかりやすいような改善もされているようです。
もちろん、誰に対しても無断でライブ配信していれば「プライバシーや肖像権の問題があるのでは?」という話へ繋がってしまうのは仕方がありません。ですが、今回のようなきちんと配慮されたうえで実施しているユニークなこの試みがネットメディアやテレビで「問題があるかのような議論になってしまう」ことに疑問を感じます。
見ている人たちだけでなくそのお店のファンも生む「ライブカメラ」
こうしたその場の様子をリアルタイムで映し出すライブ配信は、飲食店をはじめ、集客の手段のひとつとしてライブ配信を活用する方法が模索されています。
お店の業種や映し出しているその様子(アングル)に違いはあるものの、その場の様子をリアルタイムで映し出すライブ配信(=ライブカメラ)の事例は、一回あたりの配信時間に上限が無いYouTube LiveやUstream、FRESH LIVEといったプラットフォームで見受けられてきました。
こうしたライブカメラは、お店の人からとってみれば「客の利便性」や「集客を目的」であるものです。しかし、ライブカメラを見た人たちからすると、その何気ない風景を映し出すその様子は普段「その場へ行くことができない人の代わりの目」となります。時にはあたかもその場へ出かけたかのような、ちょっとしたお出かけ気分や癒しを与えてくれることもあるのです。
さらには、ライブ配信ならではのチャット機能によって
「何かこれずっと見ちゃう」
「買い物で楽しいのは選ぶ時だよね、だからこそ種類の多いこの店は楽しそう」
「行ったら昼と夜の分買ってしまいそう」
「(店内に置かれている)おにぎり美味しそう」
「お弁当がだいぶ減ってきた」
といった感想や感動、今の状況を見ている人たちと一緒に共有するコミュニケーションが生まれることもあるでしょう。
その場の様子をリアルタイムで映し出す映像はもちろん、その様子を見ている(見守る)人たち同士が展開するワイワイとしたコミュニケーションが展開される様子を合わせて見ているのと楽しいものです。
ライブ配信の影響でその場へ行ってみたくなる気持ちを刺激する
その場の様子を映し出すライブカメラは、その様子を見た人たちに「その場へ行ってみたくなる気持ちを刺激する」効果ももたらします。
そのお店のファンになったことで「画面越しでなくいつかその場に行きたい」と感じ、結果的にお店の集客へ繋がっていることも少なくありません。
これは飲食店などをはじめとしたお店だけでなく、観光地やイベントなどのような場所でも同じことが言えます。素敵な観光地やイベントをリアルタイムで映し出すライブカメラであれば、画面越しに見た「その場へ行ってみたくなる気持ちを刺激する」ことにもつながります。
“リアルな場所”と“ライブ配信”が組み合わさることによって、将来的には観光面でのインバウンド需要も出てくるのかもしれません。こういうことにこそ「ライブカメラ」の存在意義があるのだと感じます。
その有益性を感じ、さまざまなハードルを超えた上での工夫が凝らされた「ライブカメラ」の事例がこれからもっと増えていくことに私は期待をしたいです。
ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda)
ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com
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