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「ライブ配信メディア完全解剖 〜過去と今、そして未来へ〜」第117回

ニコニコとAbemaTV協業 アベマ側へのメリットは何?

2019年04月01日 18時00分更新

文● ノダタケオ(Twitter:@noda

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 ライブ配信・動画共有プラットフォーム「niconico」を運営する株式会社ドワンゴは、インターネットテレビ局「AbemaTV」を運営する株式会社AbemaTVとパートナーシップを締結したことを3月27日に発表しました。

 AbemaTVで配信されているドラマやバラエティなどのオリジナルコンテンツを中心に人気番組をニコニコ生放送で4月1日より配信開始するほか、ニコニコチャンネルに「AbemaTV チャンネル」を開設。生放送ではAbemaTVの人気番組にコメントを書き込みながら視聴ができたり、チャンネルでは番組のアーカイブ映像を視聴できたりします。

 niconicoとAbemaTVがタッグを組むというこのニュースに、ネット上では驚きの声を挙げた方も多かったように感じます。同時に「niconicoがAbemaTVと組むメリットはわかるけど、AbemaTVがniconicoと組むメリットがよくわからない」と感じた人も少なくないように思います。

 ドワンゴとAbemaTVの両社がパートナーシップを締結した、それぞれのメリット(狙い)はなんでしょうか。

niconicoは「提供できるコンテンツの幅が広がる」メリット

ドワンゴ・夏野剛

 ドワンゴのメリットは、AbemaTVのオリジナルコンテンツをniconicoで配信することによって「視聴(提供)するコンテンツの幅(ジャンル)を広げられる」ということでしょう。端的に言えば、AbemaTVがオリジナルで制作した番組をniconicoでも使いたいという非常にわかりやすい形です。

 niconicoは、「ニコニコ動画」も「ニコニコ生放送」も基本的にユーザーによってライブ配信、または、制作された動画コンテンツが集まることでサービスするUGC(=User Generated Contents)のメディア(プラットフォーム)です。

 加えて、少し前のniconicoでは話題となったアニメやドラマなどの人気コンテンツ(いわゆるPGC……Professionally Generated Contents、プロによって制作されたコンテンツ)を調達してニコニコ生放送で配信することで、新しいユーザー(視聴者)を呼び込むきっかけを作り、サービスを認知してもらう手法がとられていました。

 また、ドワンゴ自身が公式番組を制作したり、大きな話題や事件の突発的な緊急記者会見といった報道的な要素があるライブ配信など、独自のコンテンツを作ったりもしています。

 話題となったコンテンツを配信したり、独自のコンテンツを制作し配信したりすることは、自身のプラットフォームにある他のコンテンツへも循環(視聴)してもらい、サービスに定着(利用)し続けてもらう狙いもあったのでしょう。しかし、近年、AbemaTVと同じように新しいユーザーを呼び込むきっかけとなるコンテンツを調達したり、独自に制作したりすることが難しくなりました。

 これは、最近話題となっている運営基盤であるプレミアム会員の減少などの理由によって、ここ数年のniconico自体の運営体制の体力的な都合もあるのかもしれません。

 この「以前はやってきたけれどもいまはできなくなってしまったこと」を今回のパートナーシップ締結によって、AbemaTVで配信(制作)しているオリジナルコンテンツをniconicoへ乗り入れてもらい、niconicoへ新しいユーザーを呼び込むきっかけにしたい意図があるのでしょう。

「UGCをもつプラットフォームからの“人”の還流」に期待するAbemaTV

サイバーエージェント・藤田晋

 では、AbemaTVがniconicoとパートナーシップを結ぶメリットなんでしょうか。

 結論から言えば、AbemaTVは、niconicoというUGCのプラットフォームにいる“人(ユーザー)”たちにPGCのプラットフォームであるAbemaTVへ乗り入れてもらいたい、ということに今回のパートナーシップに期待している、と言えそうです。

 このことについては、2018年4月26日のサイバーエージェント「2018年9月期第2四半期決算説明会」の質疑応答における代表取締役社長・藤田晋氏の発言を改めて振り返る必要があります。

 「歴史的な経緯や事業開始の経緯で、もともとは AbemaTV FRESH! という名前だった。何故かというと、インターネットサービスのほとんどは“プラットフォーム事業しかうまくいかない”という(考え方が)僕の経験値のなかであった。(その当時)コンテンツを調達して流しているAbemaTVはそれだけでは心もとないので、一般のユーザーが配信をたくさんしてくれるプラットフォームをもっていれば、AbemaTVに還流されて、総合的にうまくいくと考えていた」(藤田氏)

 この「もともとは AbemaTV FRESH! という名前だった」「一般のユーザーが配信をたくさんしてくれるプラットフォーム」は、今年1月に事実上のサービス終了の宣言したサイバーエージェントが運営するライブ配信プラットフォーム「FRESH LIVE」です。

 PGCのプラットフォームであるAbemaTVは、一般のユーザーによってライブ配信、または制作された動画コンテンツが集まることでサービスの賑わいを創るUGCのプラットフォーム「FRESH LIVE」との両輪によって、FRESH LIVEとAbemaTVへお互いにユーザーが還流されて、ともに成長をしていくことを以前は目指していました。

 しかし、FRESH LIVEが事実上のサービス終了となったことで、サイバーエージェントはFRESH LIVEというUGCのプラットフォームをなくしてしまいました。

 この、AbemaTVへユーザーを還流するための役割を担っていたFRESH LIVEの代わりを、今回のパートナーシップを組む相手となるniconicoのニコニコ生放送へ期待しているはずです。

niconicoとAbemaTVの利害一致か?

 今回のパートナーシップは、それぞれの足りないところを補い合うための、ある意味自然な流れだったのかもしれません。

 しかし、冒頭で紹介をしたように「niconicoがAbemaTVと組む理由はわかるけど、その逆がよくわからない」。つまり、「AbemaTVがniconicoとタッグを組んだことでのメリットはなにがあるのだろう?」と感じる人は少なくありませんでした。

 そもそも、パートナーシップを結ぶことはドワンゴだけでなく、AbemaTVとしてもそのメリットがなければ、両社が今回のようにタッグを組むことはありえません。ですが、「niconicoがAbemaTVと組むことで得られるメリットよりも、AbemaTVがniconicoと組むことで得られるメリットのほうが小さい」ような気もしたのです。

 もちろん、AbemaTVで配信したものを日を少しおいてからniconicoで配信するような、コンテンツの再利用を(かつ、ニコニコチャンネルの月額課金もしくは都度課金の仕組みも活用)することによって、AbemaTVがniconicoから放送権料的な放送外収入を得る仕組みも念頭にあるかもしれません。

 おそらくAbemaTVは「AbemaTVのオリジナルコンテンツをニコニコ生放送でも配信して、AbemaTVの認知を広げていく」ことよりも、「AbemaTVで配信中のオリジナルコンテンツの“裏実況解説するライブ配信”をニコニコ生放送でしながら、AbemaTVも見てもらう」ことで、niconicoからAbemaTVへの“人(ユーザー)”の乗り入れをしてもらう展開を考えているのではないでしょうか。

 このようなかたちであれば、niconicoだけでなくAbemaTVにも賑わいを生み出すことができそうですし、今回、AbemaTVがniconicoとタッグを組んだことにも少し合点がいくように思います。

 なにはともあれ、本日21時からニコニコ生放送とAbemaTV同時放送予定の「夏野剛が生出演!AbemaPrime【AbemaTV × niconico】」でタッグを組んだ何かしらの理由が語られるかもしれません。


ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda

 ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com

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