Serverlessconfはサーバーレスアーキテクチャを用いたアプリケーション開発や運用の知見を共有すべく、グローバルで開催されているコミュニティイベント。東京での開催は今回3回目で、今回は9月29日に開催されたメインカンファレンスに参加してきた。
横長モニターがかっこいい会場
3日間でワークショップ、メインカンファレンス、コントリビューションデイをそれぞれ違う会場で行なうServerlessconf。2日目のメインカンファレンスの会場は、東京タワーのまさにお膝元にある「スターライズタワー」だ。48:9という変態的で記者泣かせな横長モニターを持つスタジオっぽい会場には、朝早くからエンジニアたちが詰めかける。
会場には小規模ながらスポンサーブースも用意され、アマゾン ウェブ サービス ジャパン、マイクロソフト、リクルートライフスタイル、CData Softwareなどが出展していた。長丁場の参加者をサポートすべく、無限コーヒー、無限ドーナツ、お弁当等も提供されたほか、英語セッションにも同通レシーバーが用意され、快適な聴講環境だった。
冒頭、開会の挨拶に立ったSection9の吉田真吾氏は、「前日のワークショップの参加者も100人を越え、今日も300人以上が参加する見込み」とイベントの規模が拡大していることをアピール。また、「クラウドベンダー、開発者、ツールベンダーによるエコシステムが重要。サーバーレスに前のめりに取り組んでもらうことで、組織内によいパラダイムシフトを起こせる」とコメントした。
付加価値を生まないUndifferentiated Heavy Lifting
基調講演に立ったのは、アマゾン ウェブサービス ジャパン(AWSJ)のスペシャリストSAで、長らくサーバーレスアーキテクチャを担当している西谷 圭介氏。西谷氏は、AWS Lambdaの進化を振り返りつつ、サーバーレスの価値や可能性について丁寧に観衆に語りかけた。
サーバーレスが生まれたのは、クラウドやコンテナの誕生と同じような背景がある。西谷氏は、本来デベロッパーは他社と差別化できる価値を生み出すビジネスロジックに集中したいのに、付加価値を生まない作業をこなさなければならないという課題を指摘。AWSでは、こうした作業を「Undifferentiated Heavy Lifting」と呼んでいるという。
たとえば、サーバーやOS、ネットワーク、ランタイム、ミドルウェアの設定など一連のサーバー構築作業をはじめとし、OSに対するセキュリティパッチの適用、プロダクションにおけるキャパシティプランニングやモニタリング、複数構成のためのシステムの冗長化、アプリケーションの認証・認可、APIのスロットリングなど。必要ではあるが、付加価値にはつながりにくいこうした作業がUndifferentiated Heavy Liftingだ。こうした作業を減らし、少ないエンジニアリソースを有効活用すれば、よりビジネスロジックに集中できる。こうして生まれたのが、そもそも負荷のかかるサーバー構築や運用自体をなくそうというサーバーレスの概念だ。
AWSがこうしたサーバーレスを具現化したサービスとして2014年に発表したのが、ご存じAWS Lambdaだ。AWSには顧客の立場に立ってプロダクトを開発する「Working Backward」というカルチャーがあり、AWS Lambdaも顧客の声から生まれたサービスだという。
特定のイベントをトリガーにファンクションを呼び出すLambdaは、管理のためのサーバーを必要とせず、利用しない場合は課金されない。サーバーレスの代名詞的な存在ともなったLambdaはプレビュー期間を経て、2015年にはLambdaやAPI GatewayもGAとなり、東京リージョンにも上陸。Lambda、API Gateway、Cognito、Step Functionsなど一連のサーバーレス関連サービスは、4年間で157もの新機能追加や機能強化が施されているという。「AWSのMVC(Minimum Valiable Products)の考え方で最低限の機能からスタートし、お客様の声を取り込んで作り上げてきたのが、AWSのサーバーレスプラットフォーム」と西谷氏は語る。