AMDに続きIBMも離脱
Globalfoundriesの7nmを利用する顧客がいなくなった
ただその後もGlobalfoundriesは7nmが量産可能という姿勢を崩さなかった。2016年9月には、プロセスデザインキットの提供を2017年後半(有力顧客のテープアウトは2017年末)、リスク生産は2018年の初頭からスタートするというプレスリリースを出していたが、2017年5月の説明会では最初の顧客のテープアウトが2018年第2四半期になると説明していた。
この時点ですでにAMDのタイムラインにはまったく合致しなくなっているのだが、それでもGlobalfoundriesはもう1つIBMという顧客を抱えており、おそらくはこのIBMのPower製品のテープアウトが2018年第2四半期だったのだろう。そのIBM、2016年のHotChip 28ではこんなロードマップを出していた。
画像の出典は、HotChips 28におけるBrian Thompto氏(POWER Systems, IBM Systems)の“POWER9 Processor for the Cognitive Era”
POWER9はGlobalfoundriesの14nmプロセスを利用して製造されるが、この時点ではまだPOWER9ファミリーは2製品であり、この後におそらくは7nmプロセスを利用したPOWER10を予定していた。ところが今年のHotChips 30ではロードマップが下の画像のようになってしまった。
画像の出典は、HotChips 30におけるJeff Stuecheli氏とWilliam Starke氏(POWER Systems, IBM Systems)の“The IBM POWER9 Scale Up Processor”
2018年にIBMがテープアウトする製品は、14nmベースに戻ってしまった形だ。Globalfoundriesの言う「7nmの需要が決して高くない」は、AMDとIBMという2社がどちらも、Globalfoundriesの7nmを使わないことを決断してしまい、結果としてGlobalfoundriesの7nmを利用する顧客がいなくなってしまったと判断するのが妥当だと思われる。
AMDがGlobalfoundriesの7nmを量産に不適当と判断してTSMCに鞍替えした後も、Globalfoundriesは7nmの開発なのか修正なのかはわからないが、引き続き計画を続けていたのだろう。ただその後IBMからも見放されるに至り、またおそらくは7nmで量産に不適当とされた問題の解決に時間がかかる、もしくは解決ができないと判断された結果、7nm以降を諦めるという決断を下したものと思われる。
余談ながら、GlobalfoundriesのCEOは今年3月、前任者のSanjay Jha氏からTom Caulfield博士に突然交代した。Caulfield博士はもともとIBMで300mmウェハーの製造ラインに長く携わってきた経験があり、これはGlobalfoundriesに対するIBMの影響力を増す措置かと当時は思われたのだが、今から思えばこの時点で7nmが立ち行かなくなっているのは明白だったはずで、その立て直しをCaulfield博士が任じられたのかもしれない。
AMDのロードマップに影響はないが
先端プロセスの開発に一石を投じる
今回のGlobalfoundriesの発表は、AMDにはなにも影響がない。ここまで説明してきたように、決断は少なくとも1年半前に下されていたわけで、Fabの変更に備える時間は十分にあったからだ。
NVIDIAがTuringでTSMCの7nmの量産ラインを利用できず、12nmのまま量産せざるを得なかったの対し、AMDはCPUとGPUの両方でTSMCの7nmの量産ラインを確保できたというのは非常に大きなインパクトがある話であり、いまだに(実質的にはTSMCの7nmと同等以上に微細化された)10nmの立ち上げに苦しんでいるインテルとも互角に争えるポジションを確保したということになる。
とはいえ、先端プロセスの開発がどれだけ大変かということを改めて確認できる話ではある。これで7nm以降を手掛けるファウンダリーはTSMCとSamsung、インテルの3社になってしまった。その3社が今後も微細化を続けられるのかに疑問を抱かざるを得ないニュースと言えよう。
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