夏は逢魔が時が猫撮影に最適、なんてことを書いていたら、そういう時間に使える明るい単焦点レンズが欲しくなってしまった。買おうかどうか迷っていたら、たまたま打ち合わせした喫茶店がカメラ量販店のすぐ近くで、ついついお店を覗きに行って、うっかり買っちゃったのである。
まあレンズなんて、悩みはじめると買えなくなるので、「勢いで買っちゃう」くらいがちょうどいいのである。それがシグマの「30mm F1.4 DC DN」。マイクロフォーサーズ用なので画角的には60mm相当とちょっと望遠気味という、猫を撮るにはいい感じのスペックだ。
そして、お店のカウンターでいきなりレンズ装着。ちょうど夕刻だったので、そのまま逢魔が時の猫撮影散歩である。F1.4なので背景もそこそこボケるし、多少暗くても撮れる。
最初に出会ったのは、狭い路地の隅でちょこんと小さくなっていた猫。実は最初通り過ぎちゃって、あれ? と思って振り返ったらいたのである。近づいても動じなさそうだったので、そっと後ろからしゃがんで1枚。
こういうアングル、不用意に撮るとお尻にピントが合ってしまう。お尻に合わせたいときはお尻のままでいいが、ここは後ろ頭に合わせてみた。背景のボケ方もほどよい。背景がボケないと猫が背景とキレイに分離されないし、背景で撮影場所が分かっちゃう。ボケすぎると撮影場所の雰囲気が薄まる。
このキジトラ、人を警戒してないわけじゃないけど、それほどおそれているわけでもない……。まあ、飲食店街に住みついてるのだからそうなのだろうが、前に回っても動じないのでちょいと顔のアップを。
前に回ってみるとキジトラなんだけど、ちょっとサビネコっぽさもまじっている。耳がカットされてるから、きちんと世話をされているのだろう。
すぐ横の小さな駐車場に業務用の車両が止まっていて、その下に三毛系の猫発見。しゃがんで下から撮ろうとしたら、その車両の持ち主が荷物を持って現れたので猫はすすっと這い出してくる。
その兄さんが「まだ下にいるかい?」というので「もう出てきました」と応える。そんな瞬間の1枚。車の下から這い出してどこかへ歩いて行こうとしているところを猫目線で。
やがて18時をすぎて夏の猫が活動をはじめる時間になってきた。ぶらぶらとカメラを持って移動しながらお寺のお堂を見ると、塀越しに猫らしきもふもふを濡れ縁の端に発見。ぐるっと回って門から入り、お堂の端へまわると、やなり猫なのであった。キジトラが古い木造のお堂と同系色なので気づきづらいのがミソ。
しかも、人があまり来ないのでくつろぐには最適なのですな。めちゃくつろいでる。近づいても薄目をあけるだけ。
そのままぐるっとお堂の周りを歩くと、反対側の濡れ縁にチャトラを発見。ど真ん中に座ってくれたので、そこから動かないでおくれと願いながら撮る。
このお堂は猫のお気に入りなようで、一周して最後に見つけたのは冒頭写真。人の目の高さくらいの場所なんだけど、端っこ感を増すためにしゃがんでローアングルで狙ってみた。実はこの日、普段使ってるズームレンズも持っていったのだけど、一度も取り出すことなく終わったのだった。意外に単焦点レンズ1本でいろいろ撮れるもんである。
帰宅したらもちろんうちの猫を撮るのである。テーブルの下に隠れていたのでそーっと電灯を付けて、隙間からそーっと撮影してみた(そーっと撮らないとすぐこっちにとことこと出てきちゃうのだ)。
まあなんというか、この手のレンズ、家の猫を撮るときはめちゃ重宝します。前後がけっこうボケるから部屋がちらかっててもあやしい本が積み上がっててもバレないもの。
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筆者紹介─荻窪圭
老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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