Googleは、2018年7月24日~26日(米国時間)にサンフランシスコで開催したイベント「Google Cloud Next 2018」において、Google Cloud Platform(GCP)から“3つのハイブリッドクラウド”を発表した。
1つ目は、アクセンチュアとのパートナーシップによる、OracleワークロードをGCPで実行可能にするための専用ハードウェアとGCPのハイブリッドクラウド。2つ目は、オンプレミス版GKE(Google Container Engine)「GKE On-Prem」と既存のクラウド版GKEによるコンテナ基盤のハイブリッドクラウド。3つ目は、シスコシステムズとのパートナーシップによるハイパーコンバージドインフラ製品「Cisco HyperFlex」とGKEのハイブリッドクラウドだ。
Oracleが稼働可能な専用HWをGCPに閉域網接続したハイブリッドクラウド
従来からGCPにはOracle製品のライセンスが提供されておらず、現状でも、オンプレミスのOracle DBをGCPに移行することや、GCPの仮想マシンでOracle DBを自主運用することはできない。
Oracleのライセンス改定を待たずにGCPでOracleワークロードを扱うために、今回Googleは、アクセンチュアと新たなパートナーシップを締結。Oracle製品が稼働可能な専用ハードウェアとGCPをCloud Interconnectで閉域網接続して、GCPの管理画面からOracle製品を運用するハイブリッドクラウドソリューションをアクセンチュアから提供することを発表した。
GKE/GKE On-Premハイブリッドクラウド
GKEとGKE On-Premのハイブリッドクラウドは、Kubernetesによるコンテナアプリケーションプラットフォームをハイブリッドクラウドで提供するもの。Googleは今回のGoogle Cloud Next 2018で、GKE On-Premを発表すると同時に、オンプレミスとGCPでコンテナアプリケーションを統合管理するための新しいプラットフォームビジョン「Cloud Services Platform」を打ち出した。
Cloud Services Platformは、GCPのコンテナ関連の機能を集約したプラットフォームで、次のような、マイクロサービスアプリケーションを実装するためのサービスメッシュ、コンテナ向けのサーバーレスアプリケーション実装機能、CI/CDツールなどが含まれている。
- GKE On-Prem
- オープンソースのサービスメッシュIstioのマネージドサービス「Managed Istio」と、既存のApigee Edge API管理プラットフォームを使用してIstioサービスメッシュで作成したマイクロサービスを操作する「Apigee API Management for Istio」
- アプリケーションのパフォーマンスをモニタリングする「Stackdriver Service Monitoring」
- Kubernetesクラスタをポリシー管理する「GKE Policy Management」
- Kubernetesでサーバーレス(FaaS)を実行するオープンソースフレームワーク「Knative」と、KnativeをGKEのアドオンとして利用する「GKE serverless add-on」
- フルマネージドのCI/CDサービス「Cloud Build」
このようにGKEのハイブリッドクラウドは、マイクロサービスやサーバーレスの実装を含むコンテナアプリケーションをGCP上とオンプレミスの両方に展開し、GCPから統合管理するコンテナアプリケーションプラットフォームだ。加えて、オンプレミスのレガシーなアプリケーションをコンテナ化して、GCPから管理するユースケースも想定した設計になっている。
GKE On-Premのハードウェア要件や提供形態はまだ明らかになっていないが、Googleのブース担当者によれば、ハードウェアパートナーから、GKE On-Premをセットアップ済みのアプライアンスとして出荷される見込みだという。
シスコのハイパーコンバージドインフラとGKEのハイブリッドクラウド
一方Googleは、シスコとのパートナーシップによるコンテナアプリケーションプラットフォームのハイブリッドクラウド化にも取り組んでいる。2社が8月に提供を開始するオンプレミスのCisco HyperFlexとGKEのハイブリッドクラウドソリューションは、GKE/GKE On-Premハイブリッドクラウドとユースケースが似ている。
Googleとシスコは、2017年10月にハイブリッドクラウドにおける提携を発表し、Kubernetesのコンテナオーケストレーション環境をハイブリッドクラウドで提供するためにオンプレミスとGCPをセキュアに接続するソリューションの開発で協力する方針を明らかにしていた。そして今回のGoogle Cloud Next 2018で、提携の成果物であるCisco HyperFlexとGKEのハイブリッドクラウドソリューションを8月に提供開始することが発表された。
このソリューションは、オンプレミス環境のハイパーコンバージドインフラ製品Cisco HyperFlex上に構築された「Cisco Container Platform」(シスコが提供するKubernetesベースのコンテナアプリケーションプラットフォーム)と、GCPのコンテナアプリケーションプラットフォームGKEを、「Cisco Cloud Services Router(CSR)1000V」(企業WANをマルチテナント型クラウドへ拡張するネットワークサービス)で接続するもの。IstioによるオンプレミスとGKEでのマイクロサービスの統合運用、Apigeeによるオンプレミス/GKEのコンテナアプリケーション接続、「Cisco CloudCenter」によるアプリケーション管理、「Cisco Stealthwatch Cloud」によるネットワークセキュリティなどの機能を備える。
シスコ Cloud Platform and Solution担当SVPのKip Compton氏は、同ソリューションについて、「エンタープライズ向けのセキュリティ、ポリシー管理機能を提供するもの」と説明する。「シスコとGoogleのハイブリッドクラウドにおいて重要なコンポーネントはIstioだ。シスコは、Istioのオープンソースプロジェクトに早期から参加してきた。エンタープライズで、オープンテクノロジーを使ったコンテナのマイクロサービスを、セキュアに運用できる」(Compton氏)。
GKE/GKE On-PremハイブリッドクラウドがGCPのコンテナ基盤をオンプレミスに拡張してGCPから統合管理するものであるのに対して、Cisco HyperFlex/GKEハイブリッドクラウドは、オンプレミス側のコンテナ基盤をシスコのネットワークサービスでGKEに接続し、シスコの管理サービスから統合管理するものだ。
オンプレミス/GKEの両方に、サーバーレス(Knativeプロジェクトにはシスコも参加している)やマイクロサービス実装のコンテナアプリケーションを展開・統合運用できるという点では、2つのハイブリッドクラウドは用途が酷似している。また、シスコとGoogleのハイブリッドクラウド提携で重要なコンポーネントとされていたIstioは、GCPのCloud Services Platformにフルマネージドの形で内包された。今後、2社のハイブリッドクラウド提携はどう変化するのか、注目したい。