ログバーは都内にてプレス向け発表会を開催。オフラインで使用できる翻訳機「ili」シリーズの新モデル「ili PRO」を発表。あわせてインバウンド対策を行なっている事業者向けに、多言語支援サービスの「iliインバウンド」の提供を開始した。
従来モデルの「ili」は個人旅行者などに向けたコンシューマーモデルだが、今回発表された「ili PRO」は接客専用のビジネス向けモデルで、あらたにチューニングされた第2世代オフライン翻訳エンジン「STREEM 2」を搭載。iliでは、旅行会話に特化してチューニングすることで精度を高めていたが、「STREEM 2」では接客向けにチューニングを施すとともに、広い範囲の会話をカバーできるよう調整されている。
そのため、ターゲットは宿泊施設や販売店、病院といった接客業務を行なう事業者で、海外からの旅行者などインバウンド向けの製品となっている。ちなみに翻訳エンジンには国立研究開発法人情報通信研究機構が開発した翻訳アプリ「VoiceTra」も使われており、翻訳精度とスピードのアップに貢献している。
さらにクラウドを使ったカスタマイズ機能も搭載し、「単語カスタマイズ」、「ローカライズ」、「ショートカット」の3つのカスタマイズが可能。「単語カスタマイズ」では、特定の商品名や店名などオリジナルの単語を登録できるので、ショップオリジナルの商品やサービスを誤訳せずにスムーズに説明できる。
「ローカライズ」は「関東」や「関西」など「全国網羅型」を含めて7つのエリアに分かれた「エリア辞書」が選択可能。地名や特産品といったその地方の独特の単語もしっかり翻訳できる。実は「ili」はこういった地域の地名や料理名などに弱点があり、タクシーなどで地名を指定して翻訳するといったときに誤訳しやすいポイントだったが、それがローカライズによって解消されるわけだ。
「ショートカット」は、ショートカットキーワードと翻訳文を登録しておくと、ショートカットキーワードを音声入力した際に翻訳ではなく、登録した翻訳文を読み上げてくれる機能。たとえば商品説明などあらかじめ決まった説明をする際に、毎回全フレーズを入力する必要がないので便利だ。
発表会に登壇したログバーの代表取締役CEO 吉田卓郎氏は「ショートカットキー機能がいちばんのポイント。テスト導入しているところでは、こればかり使っているケースもある」と新機能について説明した。
そのほか、iliでは日本語から英語もしくは英語から日本語と、日本語、英語、中国語、韓国語の4つのうち特定の言語から特定の言語への翻訳のみだったが、ili Proでは、英語、中国語、韓国語のマルチ言語待ち受けが可能。ボタンなどで言語切り替えをする必要がない。ただし入力を日本語に切り替える際は、従来のモデル同様再起動が必要で、数分の切り替え時間がかかる。
「ili PRO」は単体での発売はなく、「ili インバウンド」としてili PRO本体とクラウド、さらに電話通訳がセットになったサービスとして法人向けに提供される。価格はili PROが1台のライトプランが月額2980円で、クラウドサービスはローカライズのみ利用できる。ili PROが2台で3つのクラウドサービスが利用できるベーシックプランは月額5980円。ili Proは一方通行の翻訳機なので、吉田氏は「店員と顧客両方に持って貰えるベーシックプランをオススメしている」と語っている。
またサポートについては東京海上日動火災保険と提携。端末の補償などのほか、ili インバウンドで提供される電話での翻訳サービスも東京海上日動火災保険のサービスが使われる。
ハードウェア的にはスペックも含めてiliからのアップデートはなし。ただし音声に関しては、子どものようなかわいい声だったiliとくらべて、より落ち着いた音声に変わっている。また本体カラーも使用頻度が多くなると予想されるため、汚れやすいホワイトからブラックに変わっている。そのほか、ボタンひとつで翻訳したり、翻訳した内容をリピートできる機能などはそのまま搭載しているので、使い勝手はiliと同等だ。
実際に発表会のデモコーナーで使ってみると、やはり翻訳精度や反応は従来モデル同様速く、このあたりは一般的なオンライン翻訳機よりも上。さらに「ショートカット機能」は、海外展示会の取材ではブースを回るたびに同じ質問をすることが多いので、筆者的にもかなり使える機能と感じた。
残念ながら個人向けの発売はなく、iliにili PROと同等になるようなアップデートは予定していないとのこと。今後はレンタルなどで個人向けにili PROが使えるサービスが登場することを期待したい。