21社/組織参加の「xData Alliance」、衛星データ基盤「Tellus」を軸に事業創出や人材育成を狙う
衛星データの民間活用を促す、さくらが異業種アライアンス設立
2018年08月01日 07時00分更新
さくらインターネットは2018年7月31日、日本初の衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」の開発と利用促進を行うアライアンス「xData Alliance(クロスデータアライアンス)」の発足を発表した。記者発表会にはアライアンス参加各社や、Tellusの委託元である経済産業省が出席して、国内の幅広い業界における衛星データの利用活性化への期待を語った。
さくらでは今年5月、経済産業省の「平成30年度政府衛星データのオープン&フリー化およびデータ利用環境整備事業」にかかる委託契約を締結している。これは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)などが保有する政府衛星データ群を広く利用しやすいかたちで提供することにより、これまで限定的な活用にとどまっていた衛星データ利用を活性化していくというもの。
この事業の中で、さくらでは同社が所有する大規模ストレージ環境(2018年度で5PB)を生かし、衛星ビッグデータの分析/解析に必要なコンピューティングリソース(さくらのクラウド、Arkus、高火力コンピューティングなど)も併せて提供するプラットフォームとしてTellus(Open & Free Platform)を構築/運用する。2018年内にベータ版を、2019年2月下旬からは正式版を提供開始する予定だ。なお政府受託事業として、当初3年間は研究者や学生などさまざまなユーザーを対象に無料枠を設け提供するが、4年目(2021年度)からは完全に民営化される予定になっている。
今回のxData Allianceは民間での取り組みとして、このTellusプラットフォームの開発に対する貢献や利用促進を目的に組成された業界団体となる。スタート時点では宇宙産業関連企業を含めた21の事業者/研究機関/団体が参加し、東京大学 空間情報科学研究センター 教授の柴崎亮介氏がリーダーに就任している。
発表会に出席したさくらインターネット 代表取締役社長の田中邦裕氏は、Tellusの開発/提供におけるキーワードは“みんながチャレンジできる世界を作る”ことだと語った。従来、衛星データを利用するためには専門的な知識と専用のハードウェア/ソフトウェアが必要であり、気軽にチャレンジすることが難しかった。こうした参入障壁を引き下げ、大きなコストをかけずにチャレンジできる環境=Tellusを提供することで、衛星データの活用による生活利便性の向上、新規ビジネスの創出を促していく。
さらに田中氏は、単に衛星データが「利用できる」だけの環境ではなく、それをベースとしたイノベーション、チャレンジが生まれる環境を作っていきたいと語った。具体的には、Tellusにおける「オープン&フリーな衛星データ」や「クラウドリソース」の提供だけでなく、データ利活用のためのさまざまなドキュメントをまとめた「ライブラリ」、データを扱う各種ツールの「ストア」、さらには新しいアイデア創出を促す「データコンテスト」、技術的ハードルを下げるための「勉強会」なども積極的に提供/展開していく。
前述したとおりTellusは4年目からは民間事業となるため、これから3年間で「持続可能なもの、(さくらが)プラットフォーマーとしてしっかり稼げるものにしていかなければならない」と田中氏は述べ、xData Allianceにおける取り組みを通じて幅広い業界での衛星データ利用とイノベーションの創出、人材育成に注力していく方針を示した。
さくらインターネット フェローの小笠原治氏は、スピードを持ってTellusの目指すプラットフォーム世界を構築、発展させていくのはさくら1社では難しく、データやアプリケーションの提供者、幅広い業界の利用者、さらにビジネス開発や人材育成に関わる主体など幅広いパートナーからの意見が必要になると述べ、そのためにxData Allianceを立ち上げたことを説明した。
その言葉どおり、xData Allianceにはデータ収集/データ利活用/ビジネス開発/防災・セキュリティ/プロモーション/競争促進・人材育成/投資の各領域に知見を持つ、21の企業/組織が参画している。発表会ではmercari R4D、G空間情報センター、双日、アクセルスペース、SIGNATEからも登壇し、それぞれがTellusに期待することについてコメントした。
また発表会には、衛星オープンデータ事業の委託元である経済産業省から、製造産業局 宇宙産業室 室長補佐の國澤朋久氏が出席し、Tellusを通じた衛星データ利用の活性化に対する期待を語った。
國澤氏によると、宇宙産業は年間3000億円程度の市場規模を持つものの、そのうちの民需は1割程度にとどまっている。この民需を伸ばしていく鍵を握る分野が宇宙データ、衛星データだと捉えており、今回の事業は「その一丁目一番地になる」と語る。
今後、衛星データを活用する民間のユースケースが拡大し、新たな種類のデータや衛星に対する需要も拡大していくことで、ひいては機器産業にもプラスの影響を与えるというエコシステムを作ることが政府が目指すところだと、國澤氏は説明した。