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小島寛明の仮想通貨&ブロックチェーンニュース解説 第6回

技術より「記録する行為」そのものが問題だからだ:

公文書問題 ブロックチェーンが特効薬にならない理由

2018年07月30日 09時00分更新

文● 小島寛明

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●役所側は個人のメモと行政文書をうまく使い分けてしまう

 大分県竹田市とインフォテリアは、ブロックチェーンを使い、公文書が改ざんされると検知できるシステムの実験を進めている。

 ブロックチェーン関連企業で組織するブロックチェーン推進協会は、「トレーサビリティ部会」をつくり、野菜などの産地偽装、文書の偽造、検査偽装を防止するため、ブロックチェーンを活用する準備に取り組んでいる。

 一日も早い実装を期待したくなるが、ブロックチェーン導入を検討する前に、あらためて考えなおす必要があるのは「公文書とは何か」だ。

 公文書は1枚1枚すべてが国を運営する営みであり、歴史そのものだ。一定の期間が過ぎたら公開され、事後的な検証ができるように、すべてを残せるなら、それが一番いい。

 とはいえ「すべて」にも範囲がある。以前から様々な場面で指摘されてきたように、役所側は、個人のメモと行政文書をうまく使い分けてきた。外部に見せたくない記述は個人のメモに書いて、公文書にはよそいきの内容を書く。

 役所の職員が個人的に書いたメモは情報公開の対象からも外れている。「全部残して!」と言いたくもなるが、電話を受けたとき、ふせんに走り書きしたメモまで残せと言われたら、さすがに職員の負担が大きすぎる。

 改ざんが難しいブロックチェーンに文書を残すのは効果的だが、技術の導入だけが先行しても、公的な文書と個人的なメモの使い分けがさらに進むだけだろう。

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