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深層学習のイベント「DLLAB DAY 2018」基調講演レポート

エッジAIを加速する深層学習:PFNが「Menoh」発表、MSは「Brainwave」をエッジへ

2018年07月02日 12時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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Chainerで乳がん診断精度が99%まで向上

 PFNは、自動運転、産業ロボット、医療などの分野で、Chainerによる深層学習の産業応用を進め、成果を上げている。

 自動運転の領域ではトヨタ自動車と共同で「深層学習を使って車から見える物体(対向車や道路など)を認識する」研究に取り組んできた。自動運転の画像認識の領域では、気象条件などによって見え方が異なってくるので、事前に特徴を設計しなくてもよい深層学習のテクノロジーが有効に使える」(西川氏)という。産業ロボット領域ではファナックと共同で「深層学習で産業用ロボットの異常を検知する」研究を行ってきた。「正常時のデータのみから深層学習で異常判定モデルを学習することで、異常発生の約40日前に予兆を検知できるようになった」(西川氏)という。

深層学習で車から見える物体を認識

正常時のデータから産業用ロボットの異常判定モデルを学習

 また、医療領域では国立がん研究センターと包括提携し、深層学習を使った乳がん診断の精度向上で成果を上げている。乳がんの診断精度は、従来のマンモグラフィ(乳房超音波検査)で80%、リキッドバイオプシー(腫瘍細胞の生検と血液などの体液サンプルの検査を組み合わせた診断手法)で90%だった。ここで、リキッドバイオプシーの診断に深層学習を適用することで、診断精度が99%まで向上した。

リキッドバイオプシーの診断に深層学習を適用することで乳がんの診断精度が99%まで向上

 さらに、これまでの「認識する深層学習」に加え、今後は「モノを制御する深層学習」にも注力していくとする。すでに、トヨタ自動車と共に深層強化学習を使って車を自動走行する技術研究や、ドローンを自動操縦する実験をスタートしている。

 産業用ロボットの制御についても、「ばらばらに積まれた部品をロボットアームで取ってくる」「自然言語でロボットアームを操作する」といったことに深層学習を適用している。「産業ロボットは従来、決まりきった動きをすることに最適化されており人間がルールを書いていた。ここで、人間がルールを書く作業を深層強化学習に置き換えたところ、8時間の学習で9割の精度が達成できた。これは、熟練のロボットチューニングエンジニアの仕事に匹敵する」(西川氏)。自然言語でのロボットの操作についても、「自然言語のあいまいな指示をすべて人がルールに書いては破綻する。(自然言語でのロボット操作は)人の指示を入れず、たくさんのデータを与えることでモデルを学習する深層強化学習に大きな可能性がある領域」(西川氏)だとした。

あいまいな自然言語の音声指示で、その場に置かれた様々なモノをロボットが取ってくるシステム

自然言語でロボットに指示したモノを取ってこさせるシステムのアーキテクチャ

Python環境以外にChainerモデルをデプロイする「Menoh」リリース

 PFNとマイクロソフトは、ChainerMN on Azureの提供のほか、国内ではDLLABコニュニティを共同運営するなど、グローバルで戦略協業している。

 協業の一貫として、2018年1月に、マイクロソフトとFacebookの共同プロジェクト「ONNX(Open Neural Network Exchange)」にPFNとChainerが参加した。ONNXは、異なる深層学習フレームワーク間で共通に使える深層学習モデルのフォーマット。マイクロソフト、Facebookのほか、AWS、IBM、AMD、ARM、Intel、Huawei、Qualcommがプロジェクトに参加しており、ONNX形式のフォーマットは、Chainer、CNTK、Caffe2、MXNet、PyTorch、TensorRTなどの深層学習フレームワークが対応している。

 同日、PFNから、ONNX形式の学習済みDNN(ディープニューラルネットワーク)モデルを読み込んで動作させる推論専用のライブラリ「Menoh(メノウ)」がリリースされた。Menohは、リリース時点でC++版ラッパー、C#版ラッパー、Haskell版ラッパーが提供されており、今後、Ruby版ラッパー、Node.js版ラッパー、Java(JVM)版ラッパーが追加される予定になっている。

Chainerの推論専用のライブラリ「Menoh」

 「これまでChainerはPythonしかサポートしていなかったが、この仕様はエッジにDNNモデルを活用しようとする際に大きな問題だった」と西川氏。Menohを使うことで、Chainerで学習したモデルをPython以外の言語で実装したアプリケーションにも瞬時にデプロイできるようになる。また、MenohのバックエンドにはIntelのMKL-DNNを採用し、GPUが無くてもIntel CPUが使える環境でモデルの推論が可能になっている。「Chainerは、もともと研究開発を加速する用途で開発されたが、ユーザーが増えて、応用範囲が広がってきた。今後は、深層学習モデルをデプロイしやすくする仕組みについて考えていかなければいけない」(西川氏)

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