2018年5月22日、高知市のSHIFT PLUSで開催された「コミュニティリーダーズサミット in 高知」には地元四国のみならず、北海道や九州から参集した10人のコミュニティリーダーたちが参集。地元の再発見、コミュニティ転職、地元とコラボした新規事業開発、ネットワーキングなどさまざまなテーマで熱血LTを披露した。
人が多すぎる東京ではできないイベントとは?(田名辺健人さん)
トップバッターは北海道の札幌から来た田名辺健人さん。田名辺さんは東京リージョン上陸前の2009年からAWSを利用しており、初代SAMURAIとしてJAWS-UGの立ち上げに尽力したいわばクラウドレジェンドの一人だ。
田名辺さんは、「当時、クラウドを使っている人なんて誰もいなかった。でも、コミュニティに行ったら、すべてがあった。もっと重要なのは、おかしい人ばっかりだった(笑)」とコメントし、会場を沸かす。震災当時、東京の印刷会社でITを担当していた田名辺さんは、クラウドにデータを全部上げ、家族で札幌に移ってリモートワークすることにしたという。「コミュニティに行って人生変わったという人は多いですが、私の場合、家族で移住してしまった。今では子どももすっかり北海道の子どもになっている」。
現在はフリーランスでITの仕事をするかたわら、「北海道の楽しい100人」というコミュニティを運営している。「北海道版のTED」と説明された「北海道の楽しい100人」は2ヶ月に1回開催されるスピーチイベントで、北海道在住者4人が15分のセッションを繰り広げている。
登壇するのは、映画監督、カメラマン、ミュージシャンなどノンジャンルで、田名辺さんも過去に登壇したことがあるという。「登壇者も楽しいけど、参加者も楽しい人ばかり。類は友を呼ぶで、中には結婚した人もいる」とのことで、濃厚な交流が実現している。「大事なことは、人が多すぎる東京では絶対できないイベントなので、地方ならではのイベント。ぜひ高知でも開催して欲しい!」とアピールし、LTを締めた。
コミュニティ好き女子が巻き込みタイガーになるまで(北川佳奈さん)
「神戸からの刺客」として紹介されたのは、JAWS-UG KOBEやWord Benchに出入りする北川佳奈さん。関西大学3回生というフレッシュな北川さんは、「Makikomi Tiger」になるまでを高速トークで披露した。
コミュニティ界隈でよく語られる「巻き込み」とは、参加者がいつの間にか登壇者になり、さらに運営側になる様を言い表す。JAWS-UGで巻き込みの総本山とも言われるJAWS-UG神戸に出入りする北川さんも当然のように参加者から登壇者へ、登壇者に回るという流れになり、気がつけば今年の「JAWS DAYS 2018」で登壇することになった。しかし、LT資料で北川さんは致命的なミスを犯す。「巻き込みはトリガー(Trigger)になる」と書いたはずなのに、「巻き込みはタイガー(Tiger)になる」と書いてしまったのだ。
オランダ在住のコミュニティメンバーから指摘を受け、秋田在住のコミュニティメンバーから命名されたことで、北川さんは完全に「Makikomi Tiger」となり、ロゴやステッカーまで作ってもらったという。JAWS DAYSでLTした後にインターンしないかとお誘いがかかったというMakikomi Tigerは、「コミュニティにはチャンスもいっぱい。まずは自分の好きなコミュニティに入って、ぜひ“噛まれた人”になってもらいたいと思います」とコメント。短時間にあっという間に参加者まで巻き込んだLTは、JAWS-UG KOBEや大阪で開催されるJAWS FESTAの宣伝、アルバイトの相談まで、きっちり5分に収まった。
「地元の人に地元のよさを知ってもらいたい」(四宮琴絵さん)
地域クラウド交流会について説明したのは、初の高知という四宮琴絵さん。北海道釧路市出身の四宮さんは専業主婦を経て、現在はkintone専業のSIerであるジョイゾーに勤務。その関係でサイボウズの手がける地域クラウド交流会の認定オーガナイザーを務めている。
地域クラウド交流会は、起業家支援と地域活性化を目的としたイベントの開催プログラム。地域の若手起業家に地元に根付いたプレゼンし、それを聞いた参加者が応援したい人に対してクラウドファウンディングするというスキームになっている。四宮さんが第一号の認定オーガナイザーになったのは、サイボウズの知名度を活かして、地元釧路をアピールする目的だった。「オーガナイザーになるための育成プログラムがあり、巻き込み力、交渉力、広報力を徹底的に叩き込まれます。自分の地域をアピールしたい方は、まずこのオーガナイザーになってもらいたい」と語る。
地域クラウド交流会は全国に拡がっており、四宮さんの地元である釧路でもすでに7回開催し、毎回参加者は100人超え、のべ参加人数は1000人(!)を突破している。地方紙でも取り上げられ、参加した大学生からも「地元を知るいいきっかけになった」という声をもらった。
でも、四宮さんは「私は人数を集めるイベントがやりたかったわけではない」という。「みんな『地元にはなにもない』と言うけど、私はこの言葉がとても嫌い。だってなにもないわけがない。地元の良さを地元が一番知らないので、地元にスポットを当てたイベントがやりたかった」とちいくらに参加した背景を振り返る。四国での開催は愛媛のみということで、「高知での『ちいくら』開催もぜひお待ちしております!」と期待を寄せた。
地元を巻き込むコラボレーションのハブになりたい(藤崎優さん)
次は福岡の藤崎優さん。クラウドインテグレーターであるオルターブースCOOを務めつつ、JAWS-UGやJAZ-UG、Stripe、PHPなどのITコミュニティに参加している。
今回はソースの話。ソースと言ってもソースコードではなく、世界でたった1つのオリジナルソースを作れる「マイソースファクトリー」の紹介だ。ベースの味に自身が配合した調味料を加えることで、自分のソースが工場で受注生産されるという仕組みになっている。
マイソースファクトリーが提案しているのは、自身のデータを取得することで、健康になること。「塩分取り過ぎだぜとか、逆レコメンドもできると思っている」(藤崎さん)。そして、サービスを成長させることで、地域活性化のコラボレーションにもつなげていきたいという。「農家とコラボレーションして、あまった野菜でソースを作って売る。買った消費者がSNSで拡散して話題になる。こんなコラボレーションが高知でもできたらよいなと思って、今回登壇した」と藤崎さんは語る。
最近では地元アイドルのLinQとコラボレーションして、ファンにオリジナルソースを販売したという。「コミュニティの中で、地産外商を進めたり、ユーザーと企業をコラボレーションして新しい提案ができるのではないか。そんなコラボレーションのハブになっていきたい」と語り、仕組み自体の横展開やパーソナライズまでを視野に入れている。
コミュニティ運営で周りの人から応援してもらえるように(中山亜子さん)
札幌から来た中山亜子さんはネオラボでkintone関連の開発などを手がけている。会社は東京だが、2人のお子さんとともに札幌に在住し、リモートワークで勤務しているという。
コミュニティに関しては、リモートワークジャーニー、kintone Cafe札幌、ChatWork Cafe札幌などの運営を手がけているが、今回メインに話したのはこのうちリモートワークジャーニー。自身のリモートワーク勤務を元に、おもにワークショップを主体に進めている勉強会で、2016年の開始以降、札幌、東京、福岡などで開催している。
中山さんは「子どものイベントに気軽に参加できるようになった」「仕事の効率が上がった」「副業が可能になった」などリモートワークジャーニーの参加者の声を紹介する。先ほど登壇した四宮琴絵さんもリモートワークジャーニーがコミュニティ初参加で、そこで運営を学んだという。
中山さん自身も「いろいろなところに登壇することで、応援をもらえるようになった。シングルマザーなのでワンオペ育児が大変だったけど、コミュニティを運営することで、自分一人で解決できない問題をいろいろなメンバーがいっしょに解決してくれた」といった変化があった。「コミュニティは人生を変えるきっかけになるし、自分の周りだけではなく、もっと遠くを知ることができる」と語る中山さんは、リモートワークジャーニーの高知開催を希望し、LTを締めた。