G-SYNCとFreeSyncの違いは
HDMIサポートとハードウェアの有無
さてこれらの解決策であるが、GPUの描画のレートとモニターの表示レートが合っていないのが問題なのであって、GPUの描画が終わったタイミングで次のフレームを表示するようにすれば問題ない。
G-SYNCもFreeSyncもこの仕組みをとることで、スタッタリングやティアリングを解消している。もちろん、上の図ではFrame #2の描画(Frame #1の表示)時間が1/60秒を超えることは解消できないが、これは根本的にはGPUの能力不足に起因する問題で、表示側ではどうにも対処できない。
対策としてはより高速なビデオカードに交換するか、描画品質を落とすしかない。ただこれを除けば、G-SYNCとFreeSyncで表示の問題はだいぶ解決することになる。
したがって、やってることはほぼ同じG-SYNCとFreeSyncだが、実装はだいぶ異なっている。比較してみると以下の違いがある。
G-SYNCとFreeSyncの違い | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
G-SYNC | FreeSync | |||||
対応I/F | DisplayPort 1.2a以降 | DisplayPort 1.2a以降またはHDMI 2.1以降 | ||||
対応GPU | GeForce GTX 650Ti以降、 もしくはGeForce GTX 695M以降 |
AMDのAPU、およびRadeon R7 260以降 | ||||
対応フレーム レート |
0Hz~モニターの最大フレームレート | 9~240Hz(FreeSync 2では0~240Hz) | ||||
対応OS | Windows | Windows, Linux, XBox One | ||||
必要となる ハードウェア |
G-SYNC用コントローラーが モニター側に必要 |
特になし | ||||
他の規格との 互換性 |
なし | VESAのAdaptive Displayと互換 HDMIのVariable Refresh Rateとも互換 |
G-SYNCはモニター側にG-SYNC専用のコントローラーを必要とする。このコントローラーの中身はFPGAと768MB分のDDR3メモリーで、ここでリフレッシュレートを変換する仕組みだ。これが理由で、対応I/FはDisplayPort 1.2a以降となっており、HDMIには対応できない(単にFPGAにHDMI用の対応I/Fを組み込んでないだけ、という話ではあるのだが)。
一方のFreeSyncは、同じDisplayPort 1.2aに追加されたAdaptive-Syncプロトコルを利用している。これはVESAが2014年に制定した規格で、このプロトコルを利用してフレームレートを変更している。
時系列では、AMDがまずFreeSyncのコンセプトを開発後、これをVESAに提案。VESAがこれをAdaptive-Syncとして標準化し、DisplayPort 1.2aに追加したという形になる。
Adaptive-SyncはあくまでもDisplayPortだけでしか使えないが、幸いにもHDMIの方もVersion 2.1でVariable Refresh Rate(VRR)という機能が追加され、これを利用することでDisplayPortと同じように動作させられるようになっている。
ちなみにFreeSyncの方だが、AMDは2017年にFreeSync 2を発表している。FreeSync 2は最小フレームレートの制限がなくなったほか、対応できる色空間の大きさを2倍以上に拡大、HDRへの対応なども付け加えられている。
幸いなのは、FreeSyncはハードウェアが標準的なもの、つまりDisplayPort 1.2a/HDMI 2.1の上で動作するので、FreeSync→FreeSync 2はドライバーのアップデートだけでそのまま利用できることだ。
もっとも最小フレームレートはともかくHDRや色空間は、モニターがそれに対応していないと意味がないのだが、逆に言えばいままでsRGBを超える色空間(例えばAdobe RGB)に対応していたり、HDR表示が可能なモニターであっても、FreeSyncを使う限り色空間はsRGBでSDR表示に制限されていたのだが、FreeSync 2でこの制限が取り払われたことになる。
さてユーザーの立場からすれば、両対応のモニターが登場すれば一番話が楽(ビデオカードをなににするかは後で考えればいい)なのだが、そうした製品は今のところ存在しない。
厄介なのはG-SYNCが専用のコントローラー(事実上のフレームレートコンバーター)を必要とすることで、このG-SYNCのコントローラーを搭載したモニターはDisplayPortのAdaptive-Syncのプロトコルを認識してくれない。G-SYNCのコントローラーがAdaptive-Syncをサポートしないからだが、そのためG-SYNC対応モニターではFreeSync/FreeSync 2が利用できない。
逆にFreeSync/FreeSync 2対応モニターは、G-SYNC専用のコントローラーを持っていないため、GeForceからG-SYNC可能と認識されない。
技術的には、DisplayPortはG-SYNC対応とし、HDMIの方をFreeSync/FreeSync2対応にしたり、G-SYNC対応用のDisplayPortとFreeSync/FreeSync 2対応DisplayPortの口を別に設けるなどの対応は可能と思われるのだが、実際にそうした製品が皆無なのはライセンスにあたってなにかしらの条件が付加されており、両対応のモニターが作れないのかもしれない。
この連載の記事
-
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ