今回はまたIT用語解説ということでNVMeを取り上げる。主にM.2 SSDなどでおなじみの規格である。NVMe、正確にはNVM Expressと言う。NVMはNon Volatile Memoryの略で、日本語では不揮発性メモリーだが、要するにフラッシュメモリーを暗に指していると考えればいい。
厳密にはフラッシュメモリーのように使えれば他のものでもよく、現に3D XPointを使ったインテルのOptane SSDもNVMeを利用している。端的に言えば、「フラッシュメモリーを利用したストレージを高速に接続するための規格」である。
SATAのAHCIに相当するものを作るのが
NVMe誕生のきっかけ
NVM Expressにつながる規格策定作業が始まったのは2007年までさかのぼる。当初はNVMHCI(Non Volatile Memory Host Controller Interface)という名前での作業が開始された。開発の動機は、SSDの高速化が著しくなってきており、SATAやAHCIがむしろ足を引っ張りかねないという懸念が高まってきたことによる。
2007年といえばもうコンシューマー向けにSSD(ただし容量は32GB程度)が発売されていた時期である。2007年末には東芝の「業界最大級」128GB SSDも発表されたりしたが、この東芝のもので読み込み速度が100MB/秒程度。
ぎりぎりSATA/1.5Gbpsでも間に合うスペックではあるが、コンシューマー向けはともかくエンタープライズ向けではすでにSATAあるいはSASの3Gbpsで足りなくなりつつあり、こちらがボトルネックになる可能性があった。
もっと問題なのは、根本的にSATAにせよSASにせよ、従来型のHDDを前提とした規格であり、NANDフラッシュベースのSSDに最適化された構成になっていないため、NANDフラッシュの性能をフルに生かすのは難しかった。
こうしたこともあって、AHCIと似た構成をベースにスタートしつつも、よりNANDフラッシュに向いたI/Fを策定しようというのがNVMHCIである。最終的にこれはNVHMCI 1.0として2008年4月に標準化が完了している。

この連載の記事
- 第711回 Teslaの自動運転に欠かせない車載AI「FSD」 AIプロセッサーの昨今
- 第710回 Rialto BridgeとLancaster Soundが開発中止へ インテル CPUロードマップ
- 第709回 電気自動車のTeslaが手掛ける自動運転用システムDojo AIプロセッサーの昨今
- 第708回 Doomの自動プレイが可能になったNDP200 AIプロセッサーの昨今
- 第707回 Xeon W-3400/W-2400シリーズはワークステーション市場を奪い返せるか? インテル CPUロードマップ
- 第706回 なぜかRISC-Vに傾倒するTenstorrent AIプロセッサーの昨今
- 第705回 メモリーに演算ユニットを内蔵した新興企業のEnCharge AI AIプロセッサーの昨今
- 第704回 自動運転に必要な車載チップを開発するフランスのVSORA AIプロセッサーの昨今
- 第703回 音声にターゲットを絞ったSyntiant AIプロセッサーの昨今
- 第702回 計52製品を発表したSapphire Rapidsの内部構造に新情報 インテル CPUロードマップ
- 第701回 性能が8倍に向上したデータセンター向けAPU「Instinct MI300」 AMD CPUロードマップ
- この連載の一覧へ