アスキー・ジャンク部リターンズ 第207回
「ブラックサンダープリティスタイルチョコミント」を食べた:
チョコミント流行に困惑する自分をブラックサンダーが慰める
2018年04月24日 17時00分更新
「ブラックサンダープリティスタイルチョコミント」
4月24日発売(ファミリーマート・サークルK・サンクス店舗限定)
108円
有楽製菓
http://www.yurakuseika.co.jp/
チョコミント流行が信じられずにいた
チョコミントがここまで流行するとは、思っていなかった。
今回食べるのは、有楽製菓「ブラックサンダー」シリーズの新作「ブラックサンダープリティスタイルチョコミント」。4月24日から全国のファミリーマート・サークルK・サンクス店舗にて数量限定で販売する。内容量54g。価格は108円。
シリーズから「ミント味」が登場するのは初。コーンフレークを配合することで、いつものブラックサンダーに比べ軽い食感を実現したそう。ミント味のチョコチップは甘みのあるものを使用。また、カバーチョコレートのココア感を通常のブラックサンダーよりも少し強くしており、まとまりのある味わいが楽しめるとしている。
ぼくはチョコミントが好きだ。まだ保育園のころだったか、スーパーのフードコートで親にアイスを買ってもらう機会があり、緑色に惹かれて、なんとなくチョコミントのフレーバーを選んだ。一口食べたときの感動を忘れることができない。スッと後をひくさわやかな香りと、チョコのほどよい甘さ。たちまち虜になってしまった。
それ以来チョコミントが好きだと言い続けてきたから、もう四半世紀を数えることになる。しかし最近では、チョコミント味の商品が市場にあふれるようになり、うれしい半面、率直にいって困惑している部分もある。最初のうちは「ワハハすっかりチョコミントも市民権を得たぞ」と素朴に考えてバリバリ食べていたけれど、近ごろは新製品が多すぎて、チェックが追いつかないほどだ。
みなさんの認識とギャップがあったら申しわけないが、アスキー編集部にいて、日々リリースや広報からのメールなどに目を通していると、明らかにチョコミント系の商品が増えている。人間というのはぜいたくなもので、選択肢がなければないで文句を言うくせに、いざ増えてくるとなんだか複雑な気分になるのだ。
たしか2〜3年ほど前(言葉自体はもっと前からあったと記憶しているけれど)から「チョコミン党」なる表現も流行ってきた。チョコミントが好きな人のことを指すようだが、ぼくはこの言葉になじめず、ASCII.jpで書いた記事でも、おそらく数えるほどしか使用していないと思う。どうも、ただ好きなだけで「党」とくくられるのが納得いかないのだ。別に、チョコミント味を好む人たちに何らかの党派性があるわけではないだろうし、「甘党」「辛党」ほど世間でおなじみになっている表現でもない。
(ところでぼくは「チョコミントが苦手だ」という人に文句を言うつもりはまったくないが、「チョコミントは歯みがき粉の味だ」なる意見はよく理解できない。ミント味だけならともかく“チョコ”の味があることについてどう説明するのかと思う。チョコの味がついた歯みがき粉なんてそうそうあるか?)
もちろんこれが個人的な葛藤であることは、よーく理解している。インディーズ時代から熱心に追いかけていたバンドが売れだして、急に「遠くに行った気がする」などと言い出すファンのような愚かしい心理に近い(もとからあなたの近くにいなかったじゃないか)。
えらく前置きが長くなってしまった。とにかく、ここまでチョコミントという個性のあるフレーバーに人気が出るとは思わなかった、というのが正直なところ。だから、チョコミント味のブラックサンダーが出ると聞いたときも、ちょっと醒めている自分がいたのは事実だ。「ふーん、有楽製菓もチョコミントを出すのね」ぐらい。
チョコとミント、甘さと清涼感
それで十分じゃないか
とはいえ、さきほど「醒め」という言葉を使ったが、ブラックサンダープリティスタイルチョコミント(しかし長い名前だ)に対して、期待がまったくなかったわけではない。むしろ、流行をキャッチアップすることに定評のある有楽製菓だけに、ミント味がいままでなかった意外さにも興味が湧いていた。「いつ何時、どこのチョコミントでも食べる」「一番スゲエのはチョコミントなんだよ」とチョコミントストロングスタイルを掲げる自分としては、見逃す理由がない。
食べてみると、ちょっと拍子抜けした。というのはいつものブラックサンダーとほとんど変わりがないように感じたからだ。ザクザクした食感、少し舌に残るチョコレートの味わいは、食べ慣れたブラックサンダーそのままに思える。
ただ、2個、3個と口に運んでいくうちに、ミントの「主張」がかなりよくできていることに気付いた。香りと味わいがたしかにあるものの、ブラックサンダーとしてのまとまりが壊れるほどキツくはないようだ。カバーチョコレートのココア感を通常のブラックサンダーよりも少し強くしているのが効いているのだろう。つまり、ミント感がある分だけ、チョコの味も負けないようにしている。さすがのバランス感覚。
もちろん有楽製菓の商品だから、高級なチョコレートと比較してどうこうというつもりはない。舌触りにチープなところもある。しかし、シンプルな味のミントのチョコチップが、うまくハマっている。ブラックサンダーとしての個性を保ちつつ、ミントのテイストもわかる、そんな塩梅。
チョコの中に、ミントがあって、別に凝ったこともしていなくて、でもチョコ単体にはないアクセントがあって。チョコミントって、これだけでよいのかもしれない。いやむしろ、こういうのでいいんだよ。こういうので。
雨後の筍のようにあらわれるチョコミント関連商品にとまどっていたぼくは、ブラックサンダープリティスタイルチョコミントを食べて、なんだか変な言い方かもしれないけれど、なぐさめてもらったような気分になった。「何をむずかしく考えているんだ? チョコミントが好きなんだろう? 流行っていようがいまいが、あなたの好みは変わらないはずだよ」と。
今回は家電担当の盛田さんと、グルメ担当のナベコさんにも感想をうかがった。
盛田さん「おいしー。味としては『チョコミント風味』くらいで、バリバリのチョコミントを期待するとちょっと物足りないところもありましたが、もともとブラックサンダー好きなのでおいしくいただきました。ユーラクには帰りがけのニューデイズでたびたびお世話になってます。レジ横でまんまと買わされそうだ」
ナベコさん「私は食べた瞬間、これだ!! と思いました。ブラックサンダーのライトなチョコレートの甘さといっしょにミントのビビットな香りが飛び込んできます。このミントなのですが、チョコレートに対してボリュームは少なめ」
「チョコミントというか、完全チョコの中にミントが含まれている感じ。でもミントのアクセントが強いのでかなりよい塩梅です。甘いのにほんのりピリッとしてジャンク。言ってしまえば、かなり庶民的なチョコミントです。私のチョコミントの原体験は『明治エッセル スーパーカップ』なのですが、それに共通する親しみやすさがありました。チョコミントはこうでないと」
チョコミントのあるべき姿、とはなんだろうか。自己完結してしまうけれど、きっとそんなものはない。各々が自分の好みの中で決めればいい話だと思う。
食で例えるなら、ラーメンに近いかもしれない。「魚介系がどうのとかこだわりがどうのとかしゃらくさい、昔ながらの中華そばが一番だ」というような主張を見るたびに、ぼくはいぶかしんでしまう。それはあくまで世代(そして地域)の問題ではないか? いまの若い人たちは、物心付いたときから多種多様なラーメンを楽しんでいる。ラーメンのあるべき姿が中華料理店によくある中華そばである、というのは、あくまで個人の思い出に由来するものではないか。それに、たとえば九州の人などは、ラーメンといえば醤油のスープだ、という意見にはうなずけないだろうし。
なんだか話が逸れてしまった感もあるが、「基本」「定番」、あるいは「原点」などといっても、人によって考え方は異なるものだ。料理そのものではなく、あくまでフレーバーを指す言葉の“チョコミント”ともなれば、ますます個々人が持つイメージは多種多様にわたるだろう。繰り返すけれども、ぼくは「チョコミントが苦手だ」という人に文句を言うつもりはまったくないし、チョコミントが好きな人の中にもいろいろな価値観があると思っている。ミント感が命という主張もあれば、すこし香る程度で十分さ、という考えもある。
そのようなことを念頭に置いたうえで、それでもなお、チョコミント味のブラックサンダーは、なんだかぼくらにスタート地点を思い出させてくれた気がした。チョコとミント。甘さと清涼感。それがあれば十分じゃないか。
ブラックサンダープリティスタイルチョコミントそのものは、決して多様性の否定でもなければ、流行への逆張りでもないはずだ。ただ、あまりにも多すぎる選択肢にさまよいかけて、すこし後戻りしたくなったときに、ささやかな安心で満たしてくれる「人生の落ち着き」のようなものがそこにあったということを、ぼくは伝えたい。相変わらずのお手頃価格も含め、有楽製菓の姿勢を高く評価したい。
本日から発売されているので、気になった人はぜひチェックしてほしい。ただ、ファミリーマート・サークルK・サンクスでの販売ということで、近くに店舗がないという人は遠出が必要になるかもしれないけれど。ちなみに数量限定だそうなので、お早めにどうぞ。
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。ショートコラム「MCコジマのカルチャー編集後記」ASCII倶楽部で好評連載中!
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