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5月1日ごろから終了する予定だという:

松屋「ごろごろ煮込みチキンカレー」との長いお別れ

2018年04月19日 12時00分更新

文● モーダル小嶋/ASCII

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てりたま丼と入れ替わると思いこんでいた
でも、まだ時間はある

 松屋は12日、「ごろごろチキンのてりたま丼」を4月17日から発売すると発表した。広報画像には、あろうことか「松屋のごろごろシリーズ」とある。

ごろごろチキンのてりたま丼。いつの間にごろごろシリーズは定着していたのだろうか

 もちろん、ごろごろチキンのてりたま丼に、恨みは一切ない。未知のメニューに対する期待だってある。しかし――「松屋のごろごろシリーズ」という宣伝文句に不安を覚えなかったかと言われれば嘘になる。そもそも、鉄板でジューシーに焼き上げたという鶏もも肉は、ごろごろ煮込みチキンカレーの中に入っていた、アレじゃないのか? 思い出せ。メニューは移り変わる。チェーン店に永遠などありえない。出会いがあれば、別れだってあるはず。

 4月17日、ごろごろチキンのてりたま丼の味を確かめるべく、そして(ほんとうに嫌だったが)お世話になった存在への最後の言葉を考えるべく、松屋の券売機にすこしだけ震える指を当てたぼくは、店内だというのに思わず大声を上げそうになった。「まだ、あるじゃないか!」

 そう、ごろごろ煮込みチキンカレーは、どうってことのない顔で(券売機の画面の画像に表情までも見出すあたりに、ぼくのメニューに対する愛情を受け取っていただければ幸いだ)注文可能のままだった。しまった。完全に早とちりしていた。ごろごろチキンのてりたま丼の発売と、ごろごろ煮込みチキンカレーの終売は、イコールではなかったのだ。

 ごろごろチキンのてりたま丼は、甘口のソースと半熟卵による、ずいぶんとまろやかな仕上がりだった。気が動転したぼくをなだめるように穏やかな味わいだった。さながら「松屋の焼き鳥丼」という風情で、なかなか魅力的だ。ちょっと味が単調かなとも思ったが、卓上にある七味やカルビソースなどをかけて変化をつければ、悪くない。

590円という価格は、ごろごろ煮込みチキンカレーと同じだ

 それでも、ぼくは、丼の上に乗っている“ごろごろチキン”に対して、ほんとうにここにいるべきなのか、と問いかけたくなった。よく考えなくても、失礼な話だ。たとえば大好きなスポーツ選手が移籍して、新しいチームで活躍する姿を見て「前のユニフォームが似合っていたのに」とグチをこぼすような、こちらのワガママを押し付ける感情に近い。過去にとらわれているのはこちらで、本人(というかチキン)は新天地でも躍動する気配を見せているのは明らかだった。でも。しかし……。

 松屋から編集部に戻り、「これは読者のためだ、ただしい情報を提供するのがメディアなんだ」と自分に言い聞かせながら、松屋フーズの広報に電話をかけて、「ごろごろ煮込みチキンカレーが終わるのはいつでしょうか」とたずねた。返事は、記事の冒頭に書いたとおりだ。

 もう一度、まとめておく。ごろごろ煮込みチキンカレーは、店舗により違いはあれど、5月1日から8日を目処に終了する予定だという。4月いっぱいまで販売されている、と考えることもできる。もちろん予定なので、前後する可能性もあるそうだ。とにかく、もうすぐなくなることは確かといえる。

 正直に言って、あと何回、松屋に行くべきか、そしてごろごろ煮込みチキンカレーを注文するべきなのか、ぼくは悩んでいる。どれだけおいしくても、どれだけ味わっても、終わりが明確に見えている以上、相手にかけるすべての言葉は「さよなら」になるからだ。その事実を受け止めることがつらくないといえば嘘になる。そんな葛藤を抱えたまま、店内放送で流れる陽気な声の「ごろごろ煮込みチキンカレー、復活!」を何度も聞くことに、耐えられる気がしない。

 しかしながら、逆に言えば、いま行かなければ、もう注文することはできなくなる。今回のような「復活」がまたあるかは誰にもわからない。それもまた、一つの事実だろう。あとは、あのカレーを愛した人たちが、各々で決めればよいことなのだと思う。きっと。

 夢から覚めてしまうときは、いつか来るものだ。でも、ぼくらにはまだ、さよならを言う時間も残されている。

このように、あなたがたにも今は不安がある。しかし、わたしは再びあなたがたと会うであろう。そして、あなたがたの心は喜びに満たされるであろう。その喜びをあなたがたから取り去る者はいない。(ヨハネによる福音書 16:22)


モーダル小嶋

1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。ショートコラム「MCコジマのカルチャー編集後記」ASCII倶楽部で好評連載中!

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