さくらインターネットのレンタルサーバで提供される「バックアップ&ステージング Powered by Snapup」は、鹿児島のスタートアップであるユニマルとの協業で実現したサービスだ。ユニマルとさくらインターネットに、創業ストーリーやコラボレーションの概要、サービスのメリットなど幅広く聞いてみた。
「地方にいることをデメリットにしない」ユニマルを立ち上げた2人
今回、さくらのレンタルサーバの機能拡張のためにコラボレーションしたユニマルは創業5年目を迎える鹿児島のITスタートアップだ。「地元にいることがデメリットでない社会をつくる」をビジョンとして掲げ、受託開発ではなく、プロダクト展開をメインに事業を進めている。
ユニマルは地元のIT企業でエンジニアをやっていた今熊真也氏と、都内の大手SIerを辞めてUターンしてきた永田司氏が、地元鹿児島のハッカソンで出会ったところからスタートする。エンジニア肌の今熊氏は、いわゆるスタートアップオタク。「Startup Weekendとかにも出てたし、MOVIDAやOpen Network Labにも足を踏み入れていて、起業の準備だけはずっとしてました。鹿児島でキラキラした会社を作らないとみんなよそに出て行ってしまうし、僕が起業しないといけないと思ってました」と語る。
当時フリーランスとして働いていた一方の永田氏も、いつか会社は立てたいと考えていた。「僕自身はそれほどエンジニア体質ではなかったし、スタートアップ界隈に明るくなかったので、技術やスタートアップに明るい今熊との出会いはベストでした」と振り返る。
こうして二人は意気投合し、2013年5月に鹿児島でユニマルを起業。2014年に複数のプロジェクトでタスク管理やデザインレビューが可能なWeb制作者向けコミュニケーションツール「universions」を世に送り出した。プロダクトについて二人はこう語る。
「Web制作の現場は、コーダーやデザイナーなどいろいろなスキルの人たちが混在して作業をしています。集う人もさまざまなら、使っているツールも多種多様。こうした環境の中、成果物であるファイルをどれだけ簡単に共有できるかを考え、できたのがuniversionsです」(今熊氏)
「最初、発案したときはGitをWebデザイナーや制作者に使ってもらいたいという意図がありました。Gitのいいところって変更履歴がきちんと可視化できること。こうしたGitの特徴を取り込みつつ、デザインファイルに直接指示できるようにしたり、コミュニケーションツールとして肉付けしていきました」(永田氏)
スタートアップ支援でつながった両社が意気投合
そして、ユニマルのもう1つのプロダクトがさくらとコラボした「Snapup」になる。SnapupはWebサイトのデータをまるごとコピーして、バックアップできるほか、必要なときだけ動かせるテストサーバーをブラウザ上から利用できる。
SnapupはUniversionsから派生して生まれた機能だったが、仕組み上、データを保存するサーバーやストレージが必要だった。永田氏は、「universionsのプレビューサーバーの機能をバックアップやマイグレーションのステージングサーバーとして使おうというのがSnapupの素案でした。とはいえ、バックアップに使うとなると、どうしてもサーバーが必要になるので、どうしようかと思って、さくらさんに相談したのがきっかけです」と語る。
東阪と北海道の石狩データセンターを中心に事業を展開するさくらインターネットだが、九州に拠点福岡オフィス九州支社をつくるべくメンバーが現地に滞在していたため、ユニマルとは早い段階でつながっていた。さくらインターネットがユニマルをスタートアップとして支援したことに加え、2015年7月に鹿児島でユーザーコミュニティイベントを開催したこともあり、「なにかやろう」という機運は高まっていたという。
「やはり、さくらのスタートアップ支援が大きいですね。インフラを利用するいちファンとしてコミュニティの立ち上げもお手伝いさせていただきましたし、イベントもいっしょに企画させていただきました。そんな中で、さくらさんのような大きな会社とわれわれのスタートアップでうまくコラボできないかなと画策していました」(永田氏)
さくらのような巨大なインフラで自らのサービスを試したい。「コラボレーションありき」でスタートした両社の協業が本格的にスタートしたのは約2年前、ユニマルの二人がさくらの大阪オフィスを訪れたのがきっかけだ。
ユニマルとのプロジェクトを推進したさくらインターネットの谷口元紀氏は、「さくらのレンタルサーバーはもともとバックアップ機能がなかったので、バックアップができたらなあというユーザーのツイートを見ながら胸を痛めていました(笑)。でも、ユニマルさんの話を聞いたらSnapupをバックアップに活かせるのではと思い、プロジェクトをスタートしました」と語る。
バックアップやステージングがコンパネから容易に利用できる
共同開発は、さくらのレンタルサーバ用にSnapupをカスタマイズする形で進めてきた。「Snapupのベースは、universionsのテストサーバー作成のために作った機能。だから、WordPressの複雑なディレクトリ構造やカスタマイズに対応しており、もともとノウハウを積んできた部分。連携の部分とサービスのブラッシュアップに関して、さくらの方々に相談にのってもらいつつ、基本機能を尊重してもらった感じです」と永田氏は語る。
もちろん、既存のサービスに追加機能として組み込むため、サービス面での立て付けも両社で検討した。さくらインターネットの堀本照氏は「さくらのレンタルサーバに組み込まれる機能になると、今までよりはるかに多くのユーザーが使うことになります。そのため、障害対策やサポートのスキームに関してはけっこう話しました」(堀本氏)。
こうして生まれた「バックアップ&ステージング Powered by Snapup」は、Snapupのスナップショットをさくらのレンタルサーバのコントロールパネルから簡単に利用できる機能。世代やディレクトリ単位でサイトのスナップアップを取得し、さくらのインフラに保存。更新ミスの際に復元したり、動作テストを行なえるステージングサーバーを簡単に作成できる。
「今までのWeb制作者って、ステージング環境として別のドメインに立てていたWordPress環境を、手動で本番環境に戻していたんです。WordPress界隈でもステージングは話題になっていたので、これがワンクリックでできるのはよかったと思います」(永田氏)。
レンタルサーバの機能として追加されるので利用は無料。ライトプランをのぞくすべてのレンタルサーバーの標準機能として提供されるため、Webサイトの運用に苦労しているユーザーにとっては、かなり魅力的な機能と言える。「コンパネを開いてポチポチくらいで簡単にバックアップがとれるので、ぜひ試して欲しいです」と谷口氏と語る。
(提供:さくらインターネット)
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