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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第206回

Appleがシカゴで開催した修学旅行イベント

2018年03月31日 12時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

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テクノロジーとクリエイティブの役割

 学校にデジタルデバイスを導入する際、生徒が遊んでしまって授業を聞いてくれないのではないか、という懸念が言われます。しかし筆者はこれに自信を持って反論できます。自分の経験をふりかえれば、教室にタブレットがない頃から、興味がない授業には集中していなかったので。

歴史を寸劇にまとめるビデオ活用の授業を体験するAppleのリテール担当シニアバイスプレジデント、アンジェラ・アーレンツ氏

 一方で、デジタルデバイスを使うから楽しい授業というわけでもありません。ひたすらタイピングの練習をしなければならない授業は、無の境地を見出しでもしない限り、続けることも苦痛になっていきます。

 そのため、いかに授業に興味を持ってもらい、あるいは生徒が自分で調べたりして知識を深めたり、生徒同士で議論し始めてくれるような「アクティビティ」が必要になります。

 iPadで授業のテーマとなっている話題について、小さなグループでビデオやスライドを作る授業は、どうすれば理解し伝わるか、という思考を巡らしそれを実現する表現を作ることにつながっていきます。

 そうした理解を助け議論を促進させる活動を作る「道具」として、テクノロジーを教室内で作用させようとしている。そんなメッセージが、今回のイベントの模擬授業からは伝わってきました。

一方で、個人的には葛藤も

 今回の発表会は、テクノロジーを単純な情報手段の道具として、つまり効率的な手段としてではなく活用しようとし、それを取り入れた授業を体験することができたイベントと振り返ることができます。

 1つ1つのテーマについて自分たちで考えて情報をまとめ、発表し合う活動は、授業そのものに体験を与え、興味深いものへと変え、知識を得ること以上の効果を期待することができます。

 ただ、こうした授業の体験を通じて、筆者個人はストレスを感じました。授業の進行が遅すぎる、あるいは学べることが少なすぎるというストレスです。

 授業の中で、アメリカのケネディ大統領の有名な演説「我々は月に行くことを選んだ」という演説を自分で読み上げ、GarageBandで宇宙を思わせるBGMを付ける、という歴史の授業体験がありました。

 思い思いの宇宙っぽい音楽を作る作業自体は楽しいのですが、それ以上に、はやく教科書、あるいはWikipediaでもいいから、時代背景やロケットのスペックなどを調べたい! と思ってしまったのです。

 と、ここまでそのときのストレスを書いてみて、これもまたAppleの狙いだったのかもしれないと思いました。自分で興味を持ったことを学ぶ、というクリエイティブ学習が狙う効果の1つだったのでした。

教科書の表紙をきっかけにしてARで動物が観察できるアプリ。教科書の新しい可能性を楽しく表現していました


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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