らしいフィット感と中華っぽさ
実際に着けてみると、まず装着感が素晴らしい。耳の形に沿うように整形されたイヤーモニターは、この点で個人差も大きいはずだが、私の場合、ほぼ完璧にフィットした。自分の耳型を採って作るカスタムイヤーモニターには及ばないが、万人向けに作られたユニバーサルフィットのハウジングとしては文句なく合格。
出音は、シングルのダイナミック型をワイドレンジ化した印象で、まさしくハイブリッド型。バランスドアーマチュア2発というスペックから期待できるほどではないが、解像感の伴う高域には、この構成ならではのメリットを感じられた。
対する低域は、前面に出てくることこそないが、やや奥の方でベースラインがしっかり分離して聴こえるところが好印象。遮音も良いので、低域の設定にまったく不満は感じない。総じて一点突破的な長所を訴求するのではなく、バランスで勝負するチューニングのように感じられるのが、とても良い。
個人的にはフィット感の良さだけで使うメリットを感じたが、合わない人には、音質も含めて不満だらけのものになる可能性もある。試着してフィットせず「中高域が刺さる」「低域がスカスカ」のように感じられた場合は、縁がなかったと思うべきかもしれない。
製品としてのクオリティーは、価格から言ってシュアの偉大な定番「SE215」あたりと勝負になるのだろう。そして1万円台前半の価格帯は、中華製ハイブリッドイヤーモニターの激戦区となりつつあり、それなりにハードルの高いセグメントになっている。
そこでの課題はモノとしての質感にある。メーカーロゴや、ケーブルのY字部分やストッパーのデザインなど、細かい部分の処理やデザイン、パーツの選び方に配慮が欲しいところ。実用を追求したシュアであっても、機能美は感じられるのだし、同じ中国のブランドでも、1MOREはプロダクトとしてあか抜けている。そこは次回作に期待したい。
四本 淑三(よつもと としみ)
北海道の建設会社で働く兼業テキストファイル製造業者。