そしてスマートスピーカーが3000円でやってきた
彼らの話が特に心に響いたというわけではないのだが、我が家にもスマートスピーカーがやってきた。件の「Clova Friends」だ。
いや、だって買うでしょ!6000円を3000円で買えるんだから!(ちょっと違う?)
理由はともかく、私もスマートスピーカーを使ってみたかったのだ。それは否定できない。とはいえ、いきなり1万円も2万円も出して購入するほどなのか?という疑問はまだ払拭できていなかったのだ。
さて、どう使ったものか。ここでは、細かい設定の話などは端折って、実際に使ってみた感触だけお伝えしていきたい。
LINEのスマートスピーカーに搭載されているインテリジェントAIはClovaという名前で、「クローバ」と話しかけることで起動する。
「クローバ……(照)」
これだよ、これ。これがまずハードル高いよね。ものに話しかけるっていう行為がね。この時点ですでに「あっ……」という感覚になってしまう人は多いと思う。よくテレビに向かってツッコミを入れている人がいるが、ああいう人はモノにも普通に話かけたりできるのだろうか。先の談話に出てきた西牧くんなどは、スマートスピーカーと会話するのが日常になってるということだが、私の場合、モノに話しかけるという行為自体に抵抗を覚えてしまうタイプなのだ。
とはいえ、恥ずかしがってばかりもいられない。せっかく我が家にやってきたのだから、何か役に立ってもらわねば。
「クローバ、今何時?」
『午前2時30分です』
「げ!もうそんな時間か。早く寝なきゃ!クローバ、8時にアラームセットして!」
『8時にアラームをセットしました。もうお休みですか?今日も1日、おつかれさまでした』
意外と気が利いたことを言うじゃないか。そして、ここで気付いたのだが、スマートスピーカーは、家のどこか一個所に置いて使う機器ではないのだということだ。書斎で設定やらなんやらをしていたのだが、朝起こしてもらうには、寝室にもって行かなければならない。キッチンでタイマー替わりにしようと思ったらキッチンへ、子どもに寝物語を聞かせようと思ったら子供部屋へ。そういった意味では、Clova Friendsは、手軽に持ち運びしやすいサイズと重さだと思う。
そうして初日は就寝。明日はもう少し遊んでみよう。
『トゥントゥ・トゥントゥ・トゥントゥン・トゥントゥ・トゥン』
クローバの鳴らすアラーム音は独特だ。しかも、結構な音量。
「クローバぁ、アラーム止めて~」
やっぱり、寝起きのちょっとヘナヘナした声になったけど、ちゃんと反応してくれた。スマートスピーカーなら起きやすい説はちょっと眉唾っぽい(笑)。
とりあえず、朝の一連の作業を常態化するところから始めよう。
「クローバ、今朝のニュースを教えて」
『最新のニュースをお伝えします。〇〇〇〇……』
「クローバ、今日の予定は?」
『〇月〇日の予定は……』
ちなみに、クローバでその日の予定を読み上げさせるには、スマホのアプリ上でグーグルカレンダーなどと連携させておく必要がある。
「クローバ、朝の曲をかけて」
爽やか系の洋楽が流れ出した。悪くない選曲。
この流れでひとつ、あれ?と思ったのが、先に曲をリクエストしてから、ニュースの読み上げなどを指示すると、曲の再生は止まらずに、ニュースがほぼ聞こえない。どうやら、楽曲再生のほうが優先されてしまうようだ。順序も大切なのね。
次にちょっとおしゃべりしてみよう。不思議なもので、実はこのあたりで、すでにクローバに話しかけること自体には抵抗がなくなっている。これが慣れということか。
「クローバ、好きな食べ物は?」
『カレーに勝る食べ物はないですね。なんでもカレー味にすれば美味しく食べられる、が私の持論です』
開発者の好みが反映されているのだろうか。でもちゃんと応えるな。
「クローバ、好きなタレントは?」
『LINE MUSICで聴ける歌は、全部私のお気に入りですよ』
なるほど。さりげなく宣伝をぶっこんで来たか。
「クローバ、趣味は何?」
『ウィキペディアによりますと……』
いや、「趣味」の意味を知りたかったわけじゃないんだけど(笑)。
どうやらクローバは、何か言葉の意味を調べる際に、ウィキを参照しているようだ。読み上げられる記述は、基本的に目次項目のある前の一文を参照しているので、それ以上突っ込んだ内容には答えられない。まぁ、これなら宿題の答えをベラベラ教えてしまうこともないだろうけど(笑)。
一通り会話して遊んでみたが、やっぱりスマートスピーカーはそれ自体との会話を楽しむためのものじゃない気がする。現在搭載されているインテリジェントAIがさらに賢く進化していけば、その先には本当にスピーカーを通してAIと会話する、という未来があるのかもしれないけど、今はまだ時期尚早のようだ。
会話、といえば、やはり人とのコミュニケーションだ。そういった意味では、Clova Friendsは、他のスマートスピーカーにはない強みを持っている。LINEの無料通話に対応しているのだ。Clova Friendsは、スマホのアプリを通して設定を行なうのだけど、そのスマホのLINEと連動して、LINE上の友だちに無料のLINE通話をかけることができるのだ。
LINEの無料通話を利用するには、自分のスマホのLINEに登録されている友だちに、アプリ上で「呼び名」を設定する必要がある。設定した呼び名に「○○に電話して」と指示すると、呼び出しをしてくれるのだ。
実際に、娘にLINE通話をかけてみたが、LINEアプリ上で対象の人物を探して、通話ボタンを押して呼び出して……といった手間がいらない分、かなり楽だ。たとえば、Clova Friendsを車に積んで、スマホのテザリングでWi-Fi接続し、ハンズフリーフォンとして利用する、なんて使い方だってできてしまう。ちょうどカップホルダーに収まるような形状だし、これは便利かも!
もちろん、まだスマホを持てない、LINEで文字のやり取りをすることができない小さな子どもでも、「クローバ、ママに電話して!」とお願いするだけで、母親と連絡を取ることができる。これはClova Friendsだけの大きな利点だ。
Clova Friendsは、安価なぶん、上位機のClova Waveなどと比べても、まだできないことも多い。赤外線装置がないので、家電のコントロールはできず、テレビや電器を点けたり消したりすることはできなし(今後、オプションで赤外線付きクレードルが発売予定)、応えられる質問も、ウィキ頼みで少々心許ないところがないでもない。でも、LINE通話ができる、というだけで、そのデメリットをある程度解消し得るだけのパワーがあるように思う。
4月1日までのキャンペーンで3000円強で買える、しかも、月額960円のLINE MUSICの利用権が6ヵ月分付いてきてさらにお得ということで、スマートスピーカーのお試しにぴったりだと考えて導入してみたClova Friendsだけど、スマートスピーカーがある生活がどんなものか、その可能性を知るという意味では、買って損はなかったかもと思わせてくれるものだった。その存在にまだ半信半疑でいる人も、未来の生活の一端に触れられるよい機会だと思う。
ちなみに、Clova Friendsは、360°スピーカーで、音質も悪くない。さらに、Bluetooth接続が可能で、スマホやPCと接続すれば、Bluetoothスピーカーとしても活躍してくれる。購入した結果、やっぱりスマートスピーカーは必要ないかも、という結論に至った人でも、3000円の持ち運べるBluetoothスピーカーだと考えれば悪くない買い物だと言えるのではないだろうか。