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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第61回

「モノをコトに」するための宣伝企画とは

『妹さえいればいい。』が示すアニメコラボの理想形

2018年03月22日 18時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史

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アナログゲームと話の展開が絶妙に噛み合いながら進む『妹さえ』。現在は、作中に登場したオリジナルのボードゲームを実際に開発中だとか。 (C)平坂読・小学館/妹さえいれば委員会

作中の架空ボードゲーム「ラノベ作家の人生」を本気で製品化

―― レーベルごとにデビューのしやすさや報酬の大きさが変わる、実写化されるとなぜか作家の幸福度が下がるなど妙にリアルな作中ボードゲーム「ラノベ作家の人生」ですが、製品化も進んでいるとか?

田中 もともと原作に登場する架空のボードゲームなのですが、これを本当に作ってしまったら面白いということで、同人ゲーム作家ユニットの「大気圏内ゲームズ」さんと開発をがんばって進めています。これが中々難しくて、まだ悪戦苦闘しているのですが……。平坂先生は大気圏内ゲームズさんの以前からのファンだそうで、原作の作中に「モテねば。」も登場していますね。

(C)平坂読・小学館/妹さえいれば委員会

岡村 実際にゲームを作ろうということになったのは、9月頭のアニメ化発表の少し前のことで、お恥ずかしいことに、かなり急な話だったのです。そこから12月のゲームマーケット(年2回開催される国内最大のアナログゲームイベント)に間に合わせようと、大気圏内ゲームズさんとバンダイビジュアルさん、また、原作のイメージを仲介しながら、急ピッチで開発を進めていただきました。

 大気圏内ゲームズさんも、拘りとゲームへの熱意は半端ない人たちなので、打ち合わせは楽しくも、すごいボリューム感があって、残り日数を睨みながら内心冷や汗かきながらの進行でしたね(笑)

 そしてゲームマーケットでテストプレイを実施しましたが、大盛況で整理券はすぐなくなってしまい、2日間のイベントではプレイできなかった方も出てきてしまったため、後日、ここJELLY JELLY CAFEでもコラボイベントを実施しました。ビッグサイトのイベントからも含めて、なかには4回以上プレイされた猛者もいました。

 なお、テストプレイにご協力いただいた方は、作品EDにクレジットされています。皆さんのフィードバックをゲームに反映していますので。

大気圏内ゲームズにより現実化したボードゲーム「ラノベ作家の人生」。取材時点では、鋭意開発中とのことだった

ラノベ作家らしく「所属レーベル」の概念があるのも興味深い

田中 アニメから製品に至る過程で、ルールやディテールはかなりブラッシュアップが図られています。アニメの進行の関係上、どうしてもボードゲーム版と見た目を合わせられなかったのですが、そのぶんゲームとしての完成度には磨きが掛かっています。

岡村 例えば、「出会い」という要素が加わっています。良い出会いを引くと、その後は出目に補正がつく、といった具合です。アニメでは幸福>おカネでしたが、こちらはでそもそもおカネが少ないと取材旅行に行けなくなったり、幸福度が上がりにくい設定になっています。システムも「作家ボード」と「人生ボード」の2つのコマを動かすギミックになるなど、ゲーム性が増していますね。

―― そして、クリアしても基本的に幸福度はマイナスというのは原作・アニメ通りですね……。物書きとしては身につまされます。

岡村 ラノベ作家は基本不幸だ、という面白さというか味わいがありますね(笑)

田中 しかし……ボードゲームって採算が本っ当になかなか合わないんです……(笑)

 実際試算してみてすごいなと思うのですが、全国規模で売ろうというロット数で作るか、それとも採算をほぼ度外視しないと箱や盤面も中々大きくできなさそうでして……。単独の商品として動かす、という形の他にも、色々と方向を模索中です。もし形になったら、ぜひ、皆さん、お手に取ってやってください!(笑)

取材場所のJELLY JELLY CAFE渋谷店は、隠れ家風の空間に古今東西のアナログゲームがぎっしり詰まった濃厚な空間

電源・無線LAN完備のカフェであり、500種類以上のボードゲームをプレイできる

―― 個人的にも楽しみにしています。商品化という部分では、フィギュア製品を中国語(簡体字・繁体字)でも紹介するなど、多言語対応に気を使われているイメージもありました。

田中 中国・台湾での可児那由多と白川京のフィギュア販売に合わせたものですね。また、中国や台湾でビリビリ動画などにて本編も配信していますので、作品紹介も兼ねています。

 特に台湾ではご好評をいただいていたようです。現地のファンの方々の間で、すでに基本的な番組情報は共有されているようなのですが……とはいえ、公式サイトやTwitterから「海外の方にも見てほしいと思ってます!」というメッセージが伝わればという思いで、できる限り多言語対応にも挑戦してみておりました。

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