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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第446回

業界に痕跡を残して消えたメーカー ネットワークプロセッサーを作り続けたAMCC

2018年02月19日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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プロセッサー事業が不振
赤字続きで会社を売却

 話をAMCCそのものに戻すと、Hooshmand氏の下で売上こそ2億ドル前後をキープしていたのが、2008年度には1億9410万ドルで1億1510万ドルの純損失、2009年度には2億1420万ドルまで売上を戻すものの、3億930万ドルの純損失を出した責任を取り、Hooshmand氏は辞任する。

 ちなみに最大の要因はまたもやのれん代の減損費用で、これが2億2300万ドルにもおよんでいる。後任がHooshmand氏の時代にCOOを勤めていたGopi博士で、従来のSONET/ATMが主流になっていた製品ラインを10Gイーサネットやその先に切り替えるとともに、ARMベースのプロセッサービジネスをなんとか軌道に乗せようとする。

 たとえば2005年におけるAMCCの売上比率を見ると、79.9%が通信関連、9.9%がストレージ(つまり3ware)、そして10.6%がその他で、プロセッサービジネスはこの「その他」に入っていた。

 ところが2012年になると通信とプロセッサーが50%:50%のところまで増えてきていた(ちなみに3wareの部門は2009年に赤字対策の一環としてLSI Corporationに売却されている)。

 ただそのあと再びプロセッサー部門は不調に陥る。2015年は39.8%、2016年は43.1%と、再び通信関連の売上の方が高くなっていた。主な理由はX-GeneとX-Gene 2が思ったほど売れなかったこと、としていいだろう。

 やっと昨年あたりから64bit ARMへのソフトウェア対応が本腰を入れて始まったところで、今年あたりはもう少し広がっていくと思われるのだが、その意味ではAMCCの決断は5年とは言わないものの3年ほど早過ぎた気がしなくもない。

 そうこうしているうちにも赤字は累積していく。下表に1994年度~2016年度の売上と収益を示すが、倒産しないほうが不思議という結果になっている。

AMCC 1994年~2016年の業績
会計年度 売上 粗利 営業利益 純利益
1994年 4970万ドル 2050万ドル 170万ドル 1020万ドル
1995年 4700万ドル 1940万ドル -80万ドル -110万ドル
1996年 5030万ドル 1610万ドル -340万ドル -370万ドル
1997年 5750万ドル 2740万ドル 700万ドル 630万ドル
1998年 7660万ドル 4230万ドル 1480万ドル 1520万ドル
1999年 1億0500万ドル 6710万ドル 2390万ドル 1710万ドル
2000年 1億7240万ドル 1億2210万ドル 6110万ドル 4860万ドル
2001年 4億3550万ドル 2億7240万ドル -4億9270万ドル -4億3620万ドル
2002年 1億5280万ドル 1080万ドル -37億1950万ドル -36億0570万ドル
2003年 1億0160万ドル 3970万ドル -6億7910万ドル -7億4550万ドル
2004年 1億3120万ドル 7360万ドル -1億5000万ドル -1億0490万ドル
2005年 2億2020万ドル 1億1570万ドル -1億2770万ドル -1億2740万ドル
2006年 2億1460万ドル 1億1990万ドル -7770万ドル -1億4840万ドル
2007年 2億4250万ドル 1億2670万ドル -3670万ドル -2420万ドル
2008年 1億9410万ドル 9540万ドル -5200万ドル -1億1510万ドル
2009年 2億1420万ドル 1億1310万ドル -2億5750万ドル -3億0930万ドル
2010年 2億0560万ドル 1億1270万ドル -2610万ドル -750万ドル
2011年 2億4770万ドル 1億5240万ドル -1130万ドル -100万ドル
2012年 2億3090万ドル 1億3210万ドル -2億2560万ドル -8270万ドル
2013年 -1億9560万ドル 1億1260万ドル -1億3490万ドル -1億3410万ドル
2014年 2億1620万ドル 1億3100万ドル -1050万ドル -570万ドル
2015年 1億6500万ドル 9570万ドル -5070万ドル -5210万ドル
2016年 1億5930万ドル 6970万ドル -3550万ドル -3260万ドル

 結局AMCCはやはり通信関連の大手であるMACOMに、2017年1月に完全に買収される。MACOMは昔のAMCCのように、物理層に近いところの製品を扱う大手であり、AMCCの持つ通信関連製品はそのまま取り込まれたものの、プロセッサービジネスはまったく不要だった。結果、X-Gene関連製品とその部隊は2017年10月、カーライルグループ傘下のProject Denver Holdingsに売却されることになった。

 ここで冒頭の話に戻る。インテルを辞職したRenee James氏はその後カーライルグループに入り、ここでOperating Executiveの職についていた。そうした中でX-Geneの部隊と資産丸ごとが同グループに転がり込んできて、現在はJames氏がこの再生を担っているというわけだ。

 それなりに長い歴史を持っていたAMCCであるが、消えるときは他の会社と同じく、一瞬とは言わないまでもあっという間に消えたなぁ、というのが筆者の実感である。

 AMCCらしい製品という意味ではプロセッサーよりもむしろ通信関係の方がメインであり、これはMACOMの一部に取り込まれてしまった。かつてBroadcomに買収されたSiByteやRMI Corporation(Raza Microelectronics)、NetLogic Microsystemsの製品のように、製品そのものはこのままひっそりと消えていくのだと思われる。

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