株価が急上昇
企業買収でさらに事業を拡大
AMCC製品の中で特に当たった分野が高速ネットワーク向け製品である。特にBiCMOSを利用したネットワーク物理層向けチップは非常に評判が良く、1997年度の売上の37%は高速ネットワーク向けのものだった。当時高速ネットワーク向けといえば、IBMとAnalog DevicesがSiGeを利用したチップを開発していたが、AMCCはBiCMOSでこれに匹敵する性能を出していたそうだ。
翌1998年には2度目の株式公募を行なっている。新規株式公開の際は1株8ドルだったのが、2度目には1株19.375ドルまで跳ね上がっているあたり、AMCCが株式市場からどう判断されていたかがわかる。
その1998年に同社はIBMとの間でSiGeに関する技術提携を結ぶ。1Gbps程度の転送速度であればBiCMOSでも足りるが、これを超えるとなるとBiCMOSでは難しいと判断されていた。
当時市場ではOC-192(10Gbps)に向けた開発が各社で進んでおり、AMCCとしてもこれを実現するためにはSiGeを利用するのが早道であり、IBMと提携を結ぶのが技術的にも時間的にも一番妥当、と判断したようだ。
このIBMのSiGe技術を使い、1999年にはOC-192に対応した製品を投入する。1999年度の売上は前年比33%増しの7660万ドル、純利益は前年比2倍の1520万ドルになった。
その1999年、NACCはCimaron Communications Corp.を株式交換により総額1億5500万ドルで買収する。CimaronはSONET向けのASICを製造していた会社であるが、要するに従来のAMCCが物理層に近いところの製品をそろえていたのに対し、Cimaron Communicationはその上位層向けの製品を提供しており、うまく補完関係があった。
Cimaron Communicationが開発したSONET向けのMapper(プロトコル変換チップ)はAMCC NILEという名前で発売されることになる。さらに同年、IBMのSiGe技術を利用した製品も投入する。こうした攻めの姿勢は業績に反映され、2000年度の売上は1億7240万ドルで前年比64%増し、利益は4860万ドルで184%増しとなった。
株価が高騰したためAMCCは株式分割を行なうが、分割後の株価は150ドルあまりで売買されていたというから、1997年比で37.5倍に高騰した形だ。好調な業績をベースに、AMCCは次にMMC Networkを45億ドルで買収する。これは半導体業界としては2番目に大きな買収金額だったそうだ。
MMC Networkはネットワークプロセッサーという、さらにネットワーク上位層向けの製品を提供しており、非常に広範な市場シェアを得ていたが、1999年にIBMとCiscoという2大顧客を失って減速状態にあったため、この買収に応じた感がある。この買収により、AMCCはネットワークに関するすべてのソリューションを提供できるようになった。
これ以外にもYuniNetworks, Inc.、Chameleon Technologies, Inc.、pBaud Logic, Inc.、SiLUTIA, Inc.といったネットワーク関連の企業を次々と買収し、自身のポートフォリオを固めていく。
さらに光ファイバー分野への進出や、10Gイーサネットへの進出も始めるようになった。こうした企業の買収費用の関係で、2001年は売上こそ4億3550万ドル(これは買収した企業の売上も合算されている)に達したものの、純利益もマイナス4億3620万ドルというすさまじいことになった。
もっともこれは折り込み済みの数字である。折り込まれていなかったのは、2001年に弾けたドットコムバブルである。このバブルは通信業界を思いっきり直撃することになった。単にネットワーク機材が売れなくなったり、売り掛けが回収できなくなった以上に、買収した企業ののれん代の償却がシャレにならないことになった。
2002年度の決算は、売上が前年比65%減の1億5280万ドル、粗利は前年の2億7240万ドルから1072万ドルにまで下落したが、純利益に至ってはなんとマイナス36億570万ドルに達した。このうち31億180万ドルがのれん代の減損費用である。
翌年はのれん代減損こそずっと減った(「ほんの」1億8640万ドルである)ものの、売上は1億160万ドルまで低下している。このあたりでドットコムバブルの後遺症から抜け出した企業からの発注が増えてきた関係で、翌年以降のAMCCの売上は2億ドル程度まで戻すものの黒字転換はついに最後まで実現していない。
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