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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第444回

業界に痕跡を残して消えたメーカー メモリーの需要で急成長を遂げたAlliance Semiconductor

2018年02月05日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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メモリー価格の暴落が業績を直撃

 1997年にはほかにもいくつかの動きがあった。同社はファブレスのビジネスモデルなので、生産はファウンダリーに委託することになる。同社は台湾のUMCと日本のRohm、それとシンガポールのChartered Semiconductor(現GlobalFoundries)に生産を委託していたのだが、1995年にUMCとの間で2つのジョイントベンチャーを立ち上げる。

 1つはAllainceとUMC、それにS3が加わったもので、台湾にUSC(United Semiconductor Corpotation)を設立している。USCは台湾の新竹市に拠点を置き、0.35μmプロセスでAllianceのDRAMおよびグラフィックチップの生産を行なった。

 もう1つはUMCとさらに別の企業との組み合わせによるUSI(United Silicon Inc.)で、こちらも新竹市に拠点を置き、1998年から操業を開始する予定だった。加えて、USCのプロセスも0.35μmから0.25μmに移行させようとしていた。

 さて、こうした動きはどう決算に反映されたのか? というのが以下の表だ。

Alliance Semiconductor 1997年~2001年の業績
  1997年 1998年 1999年 2000年 2001年
売上 8257万ドル 1億1840万ドル 4778万ドル 8915万ドル 2億 868万ドル
営業利益 -2741万ドル -3292万ドル -3920万ドル 20万ドル -1269万ドル
純利益 -1667万ドル -574万ドル -2204万ドル 6億4810万ドル -2億7232万ドル

 1997年は説明によれば、台湾のメモリベンダーのダンピング攻勢によって大幅にメモリー(主にDRAM)の市場価格が下がり、これによって売上、利益ともに大幅に下落した。これは一時的なもの(実際翌年には回復基調になった)という説明であった。

 ただその1998年も若干回復したものの、同業他社に比べるとダメージはやや大きかった。これをカバーするために4Mbitと16MbitのDRAMの量産を開始するが、同時に“当社は今後、そもそもメモリー価格が安定するか、安定するとすればいつかを予測できない状況になっている”という弱気の文面も目立つ。

 実際この後もう一度暴落(今度は世代交代の波が押し寄せてきた)により、同社が主力としていた16Mbit DRAMは大幅に小売価格をさげることになり、売上が激減する。

 おまけに4本目の柱だったはずのグラフィックスも、1997年には売上の11%を占めていたのが、1998年には7%、1999年には1%まで下がることになり、結局1999年にグラフィックスから撤退することになる。

 1997年にはProMotion AT3Dの後継として、AGP 1xに対応したProMotion AT3D+や、その改良型で133MHz AGPに対応したAT4D、さらに2MB分のフレームバッファをEmbedded DRAMでオンダイに搭載したED4Dや、ここから3D機能を省いたED2Dといった派生型をいろいろ検討していたようだが、こうした製品はいずれも世に出ることなく消えることになった。

 かくしてメモリ専業メーカーに戻ったAlliance Semiconductorだが、PC市場向けでは収入が安定しないこともあり、新たに組み込み向けメモリー事業部を1998年から立ち上げる。

 こちらは長期契約に基づき安定供給を約束するビジネスモデルなので、大きく儲けるのは難しいにしても、予測可能な売上が立つという見込みだった。そうしたこともあり、2000年には少し売上も回復する。

 ちなみに純利益が急増しているのは、株式の売却益である。先に書いたUSCやUSI、それとUIC(United Integrated Circuit Corporation)とUTEK Semiconductor Corporationの4社が1999年にUMCに吸収合併されることになり、この結果として同社はUSC/USIの分に相当するUMCの株を受け取ることになった。

 これの半分(残りの半分は2002年まで売却できない契約になっていた)の売却と、さらにBroadcom Corporationほかいくつかの会社の株を売却して税引き前で9億ドル近い売却益を得たのがこの結果である。

 翌2001年は再びDRAM/SRAMともに売上を大きく回復、1996年に迫る売上を記録している。営業利益や純利益は芳しくないが、これは前年の利益をベンチャーキャピタルに投資した関係による(およそ5億ドルを複数のファンドに振り分けて運用した)。

事業内容が迷走
メモリー以外に手を出しことごとく失敗

 このあたりから同社は本気で迷走を開始する。2005年までの決算は下記の通りである。

Alliance Semiconductor 2002年~2005年の業績
  2002年 2003年 2004年 2005年
売上 2655万ドル 1852万ドル 2667万ドル 2360万ドル
営業利益 -7914万ドル -6383万ドル -3444万ドル -3614ドル
純利益 -2億4072万ドル -1億 605万ドル -1941万ドル -4981万ドル

 2000~2001年にかけて、メモリー以外の柱はやはり必要だろうということで、Mixed-Signal回路(ノイズ抑制のPulseCoreという製品をラインナップ)やSystem Interconnectソリューションを提供し始め、その一方で2002年にはフラッシュメモリーの生産を中止したほか、Network Hardware Acceleratorに手をだすものの製品化に失敗、撤退している。

 その一方で、メモリー価格はまたもや暴落、1993年レベルまで売上が落ちることになった。2003年にはインターコネクト事業をベースにシステムソリューション事業部が発足し、ハイパートランスポート関連製品を手がけるほか、Mixed-Signalでは電源管理ソリューションも追加するものの、売上はどんどん落ちていく。

 そもそも2000年を越えたあたりからDRAMチップの高速化と大容量化は著しく、2003年にはすでに512Mbit品が主流になっている状況で、同社のDRAMの売上は急速に先細りになっていった。

 幸いなのは、Analog/Mixed-Signal製品やシステムソリューションの比率が高くなってきており、2005年段階でみると売上比率はSRAMが43%、DRAMが7%、Analog/Mixed Signalが31%、システムソリューションが19%という比率になっている。

 ただこれはAnalog/Mixed-Signalやシステムソリューションの売上が伸びたのではなく、単にメモリービジネス、特にDRAMビジネスが壊滅したに過ぎない。結局Alliance Semiconductorは2005年7月に会社更生法の適用を受ける。

 会社更生法の元、同社の資産は切り売りされた。まずメモリー部門は、新しく発足したAlliance Memoryという会社に丸ごと売却された。同社は現在も健在で、特に組み込み向けに古い規格のメモリーを継続生産するビジネスを行なっている。

 たとえば原稿執筆時点で一番新しい製品は、256MbitのSDRAM(最大166MHz)である。要するにPC166 SDRAMのことだ。こうした古い製品を長く安定して供給する、というビジネスを行なっている。

 一方同社のシステムソリューション事業部はTundra Semiconductorに売却された。Tundra Semiconductorは、非x86プロセッサー向けのチップセットを得意とした会社で、Allianceのハイパートランスポート関連資産を評価した模様だ(そのTundra Semiconductorも2009年にIDTに買収されてしまった)。

 残ったAnalog/Mixed Signal事業部は、Shah Capital Partnerというファンドにやはり売却してしまい、その意味で事業部はきれいさっぱりなくなったことになる。

 「会社更生法なのに事業部がなし?」と思われるかもしれないが、実は最後まで残ったのが、ベンチャーキャピタルへのファンドビジネスである。

 会社更生法適用時点でも、まだ結構な金額を扱っており、将来的にここからのリターンで会社が運営できるというメドが立ったのだろう。

 このあと同社はAlliance Semiconductorという社名を維持したままファンドビジネスを継続していくが、2017年1月に社名をAlimco Financial Corporationに変更した。Alliance SemiconductorのマークとAlimco Financial Corporationのマークがよく似ているのは、そういう理由である。

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