ファズ内蔵シールド「RAT Tail Distortion」
昔々、オレンジスクイーザーという、ギター直差し型のコンプレッサーがあった。エフェクターの筐体にオスのプラグが付いていて、それをギターに差し込むのだ。ラリー・カールトンも使っていた。日本でもMaxonブランドで、似たようなデザインのブースターが売られていた。
でもギターにでっかい箱がくっついているの、なんかブサイクだよね。じゃあそれをググッと進めて、いっそシールドのプラグに内蔵してしまえ。
まさにコレが、そういう感じの製品。ProCoから独立したブランドとなった RAT Distortion が世に問う「RAT Tail」である。これはNAMMが始まる前から話題になっていた。
あのディストーションペダルの名作「RAT」を、そのまんまプラグケースにイン。中身はクリッピングダイオードを使った往年のRATと同じだ、とメーカーは言っている。
見た感じ、プラグはそんなに大きくもなく違和感はない。プラグにはロータリースイッチがついていて、エフェクトのオンオフとゲインのレンジを切り替えられるようだ。ちなみにオフにするとトゥルーバイパスになるので、ただのシールドとしても使える。
ただ、気になるのは、バッテリーに何を使っているのかが、今の段階でも不明なこと。ケーブルの抵抗値のようなスペックは公表されているものの、公式サイトにバッテリーのデータはない。検索の根性が足りなかったせいかもしれないが、YouTubeのデモ動画でも、その点に触れているものは見当たらなかった。
こうしたものを自作しようと考えると、まず壁に当たるのがバッテリー。信号劣化を防ぐバッファーや、ゲインを稼ぐブースターはプラグに内蔵したほうが早いし、基板も十分に小さくできる。でも電池が006Pでは大きくて困ってしまうのだ。
でも、すでにUSでは販売が始まっているので、買って確かめればいいだけの話だ(ヤッホー!)。小売希望価格は10フィートが57.99ドル(約6366円)、18フィートが59.99ドル(約6585円)、25フィートが62.99ドル(約6914円)となっている。
茶こしフィルターマイク「TB-1」
いつも頭がおかしい(いい意味で)ザッカリー・ベックス氏率いるZVEX EFFECTSは、マイクロフォン「TB-1」を発表。お茶の葉をこすステンレス製のフィルターを外装に使ったもので、はっきり言ってクオリティーとしては自作レベル。日本のmakeの人たちの方が、よほどプロっぽく仕立てると思うのだが、そこがいいのだ。
おい、たまたま作ったら変な音が出ただけだ、アイデアさえあれば君にもすぐ作れるぜ、でもお金を出して買うのかい? じゃあどうぞ。それが製品に込められた裏メッセージではないかと、私は勝手に思っている。
で、そのTB-1のお値段は249ドル。どうやら口を近づけないと全然音を拾わないという特性のようだ。
それ一体何に使うんだという話だが、離れた音はほとんど拾わない、大音量のアンプの前に持って来てもハウリングを起こさない。そこに利点があるようだ。なにしろ、あの馬鹿でかい音のマーシャルに直接つないでも平気なのだから大抵のことは大丈夫だ。
のみならず、そのほかの頭おかしい(いい意味で)同社のエフェクター群を通し、歪ませ、フィルターでレゾナンスを立てても全然平気。ゲインは相当上がっているはずだし、アンプのすぐ目の前でやっているのに、まったくハウらない。
自分の声をジェネレーターとして使って、シンセ的な音も出せるし、極悪なノイズを奏でることもできる。音源は自分の声だから、カオシレーターよりも直感的でコントローラブル。これは素晴らしい! そう思ったら買うべし。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ