快適に着続けるための工夫がいっぱい
素材の紹介をしてきましたので、つづいて、機能の話をします。
冬場にありがちなのが「外は寒いが室内は暑い」状態。外気温に合わせた服装で出かけたところ、車や電車の中で汗だくになった経験はないでしょうか。あるいは、すこし駆け足で待ち合わせ場所にいったら暑くなってしまった、みたいな。
水沢ダウンには脇下にジッパーが取り付けられており、開閉することでメッシュから外気を取り入れ、体温を調整できます。この機能自体は、アウトドアウェアとしてはそれほどめずらしいものではありません。
ユニークなのは、フロントのジッパーにもベンチレーションシステムをそなえていること。前たてのジッパーが2列になっており、内側のメッシュ素材を出すか出さないか選べるのですね。メッシュを外に出すように閉めると、通気性が高まります。
少し暑いかなと思ったら、外側のジッパーを閉めると、風が入っていく。さらに脇下を開けていれば、ダウンの中を空気が抜けていく。寒いなら、メッシュが出ない方のジッパーを締めればよいわけです。
ところで裏地(脇腹のあたり)には、明らかに物が入らない謎のポケットがあります。「OPEN FOR USE : WATER INFILTRATION VENT FOR WASHING OF INSULATION」とある。直訳すると「使うとき(洗うとき)に開けてください:断熱材の洗浄のための水の通気口」。
つまり、このポケットは、クリーニングのときに水や洗剤を全体に行き渡らせるために開けるもの。気密性が高すぎて、これを開けないと十分に洗濯できないのです。気密性にすぐれた水沢ダウンならではといえるかもしれません。
買ってよかったけど
自分よりダウンをていねいに扱っている現状
ざっと紹介してきましたが、実際に着てみると、どうなのか。
やはり、着心地が別格によい。軽さは正義です。そして素材にストレッチ性があるので動きやすい。冬場に着る上着は、脱いだときに「はぁ……」と一息つくぐらい、重く厚手のものである……そんな固定観念を吹き飛ばしてくれます。
それだけ着やすいのに、気密性が高いので、十分すぎるほどあたたかい。さらに濡れを気にしなくていいから、雨の日でもそれほど不安を感じない。とりあえず、これを着ていけば大丈夫という安心感がある。
実は、編集部にもう1人、水沢ダウンの愛用者がいます。家電担当の盛田さんです。快適性と機能性を追求したハイスペックモデル「マウンテニア」を着ています。価格は10万8000円。
盛田さん「一見すると細身なのですが、1枚だけでめちゃめちゃあったかいですこれ。冬の朝パジャマに水沢ダウンを羽織ってゴミ出しとかよくやってます。ユニクロのダウンジャケットが他界した翌年、ネットでたまたま在庫があるのを見かけておよそ10万円を一括払いしたのは大正解でした」
「ユニクロはステッチのすき間から羽根がよく抜けてしまうのが不満の1つでした。水沢ダウンはステッチがないため抜けません。あとユニクロは水に弱く、雨や雪の日に着づらかったのですが、水沢ダウンは耐水性があるので普通に着られるので便利です。パラフードシステム(使わないときはフードを閉口し水などがたまらないようにできる機能)など、便利機能がいろいろあるらしいので使いこなしていきたい」
盛田さんも水沢ダウンの力を実感しています。なんだか健康食品のCMみたいな文言になってしまいましたが、実際、その通りなのです。軽いのにあたたかくて、ほんとうにすばらしい。
……ただ、水沢ダウンを買ったことに後悔はないのですが、外出時、あきらかに自分よりもダウンをていねいに扱っている現状がある。取材で展示場などを訪れた際、床に座るのはまったく苦ではない。しかしダウンは、汚れないようにと、カバンや机などの上にそっと置いています。「これは8万円! 汚してはならない」と。
この前はダウンを着ているときに雨に降られ、風雨に強いのがウリの水沢ダウンなのにも関わらず「大変だ、濡れてしまう」と思ってあわてて建物の中に逃げ込みました。自分は濡れてもいいから、ダウンは濡れて汚れないように。落語じゃないんだから。
もう一つ、困ったことがあります。ポケットに物を入れられないのです。そうそう破れないとは思っているのですが、何かを入れて、もし穴が空いたら1週間ぐらいひきずりそうで……。結局、スマホ一つも入れられずじまい。寒いときに手を入れて温めるぐらいです。そのときも「爪を生地にひっかけないように」と、かなり怯えている。
だから「買ってよかった」ではあるのですが、生活が完全にダウン優先になっているような気がします。現在、水沢ダウンは筆者の部屋の中央にあるソファーに鎮座しているのですが、まるで部屋の主が筆者ではなく、ダウンになってしまったかのようです。ふと気がついたら、筆者の仕事も、生活も、何もかもがダウン優先になり、主従関係が逆転し、最後には自分自身がダウンのための存在になるかもしれません。でも、満足しています。買ってよかった。
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。ショートコラム「MCコジマのカルチャー編集後記」ASCII倶楽部で好評連載中!
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