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口座情報はプライベートクラウドから動かさずネットバンクのAPIを外部公開

PaaSのみでオープンAPI基盤をスピード開発、セブン銀行がAzure導入

2017年12月22日 13時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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 セブン銀行は今年、外部のFinTech企業や提携先銀行と連携した新規サービスを提供するための基盤を、パブリッククラウドのMicrosoft Azureで構築した。プライベートクラウドで運用している既存のオンラインバンキングのシステムと、外部サービスをセキュアにAPI連携する仕組みを、AzureのPaaSのみを使ってスピード開発している。

 この基盤を使って、フィリピン最大手銀行BDOと連携し、スマートフォンアプリからフィリピンへ海外送金するサービスを8月3日から開始した。また、FinTechスタートアップのドレミングが提供する勤怠・給与計算サービス「Doreming」にAPIを公開し、Doremingからの振込指示によってセブン銀行(の企業口座)から従業員口座に給与をリアルタイムで振り込む「リアルタイム振込機能」を同基盤上で実現した。

 11月に開催された日本マイクロソフトの技術カンファレンス「Tech Summit 2017」に登壇したセブン銀行 システム部ITプラットフォーム室 次長の平鹿一久氏は、同行がAzure PaaSを導入した背景を語った。

FinTech企業との提携が最重要課題

 「銀行というと、規制産業で動きが遅い業界だと思われているが今そうではない。低金利、人口減少、異業種からの参入という事業環境の変化によって、大変な危機感がある」と切り出した平鹿氏。セブン銀行も、キャッシュレスの拡大や競合増加を背景に、決済・口座事業における手数料収入依存からの脱却を目指し、新規サービスの創出を急いでいる。

セブン銀行 システム部ITプラットフォーム室 次長の平鹿一久氏

 新しい金融サービスを立ち上げるにあたって、銀行業界が最重視しているのは新興のFinTech企業との提携だ。「かつては、FinTech企業が既存の銀行を破壊すると言われていたが、今はITに長けたFinTech各社のサービスを銀行事業にバンドリングして、消費者に付加価値の高いサービスを提供することに取り組んでいる」(平鹿氏)。

 FinTech企業と銀行が広く連携するために、銀行がオープンAPIを用意して、外部サービスから銀行の情報へのアクセスを可能にする動きが加速している。海外に目を向けると、欧州では2016年に施行された「決済サービス指令(PSD2)」により、2018年1月までに銀行はオープンAPIを整備することが法律で義務付けられている。PSD2では、消費者の権利として、自分の銀行口座の情報を利用した第三者のサービスを利用できるようにすることが規定されており、免許を取得したFinTech企業に対して銀行は等しく自行の情報を提供しなくてはならない。その仕組みを実現する具体的な手段がオープンAPIになる。

 また、英国ではOpen Data Instituteという標準化団体が「Open Banking Standard」の名称のレポートを公開しており、ここで銀行のオープンAPIのデータ項目、セキュリティ、プロトコルについて詳細な標準化を規定している。この標準に基づき、英国の大手主要銀行は2018年1月にAPIを公開することになっている。

 国内では、2017年5月に成立した改正銀行法によって、電子決済等代行業者に認定されたFinTech企業などに対して、銀行がオープンAPIを提供する努力義務を負っている。

「スモールスタート」のためにPaaS活用が前提だった

 このような背景から、セブン銀行は2016年2月、今後のAPIオープン化と、それに伴うFinTech企業と連携した新規サービス開発案件の増加を見据えて、サービスを「スモールスタート」できるIT基盤をPaaSで構築することを検討し始めた。「スモールスタートのコンセプトを可能にするインフラとして、最初からPaaSの活用を検討した。PaaSであれば、必要な部品を組み合わせてシステムを短期間で構築できる。何より、非機能要件をクラウドにまかせられることが大きい」(平鹿氏)。

 もう1つ、セブン銀行が外部サービスとAPI連携するクラウド基盤の構築にあたって重視したのは、プライベートクラウドで運用中の既存システムと「ハイブリッド構成」をとれることだ。「顧客データや取引情報はプライベートクラウドの既存の仕組みで保持し、外部サービスとはPaaSをフロントにして機能だけ連携する構成にしたかった」と平鹿氏は説明した。

 これらの要件を満たすPaaSを比較検討した結果、スモールスタートの実現性、PaaSのサービスの品ぞろえ、FISC基準への準拠の度合い、プライベートクラウド側のプラットフォームがWindowsだったなどの評価により、Azureの採用に至ったという。システム構築は、電通国際情報サービス(ISID)が手掛けた。

事業のスモールスタートを可能にする基盤としてAzureのPaaSを採用

 Azureの採用決定が2016年9月。同月、第1弾サービスとしてフィリピン送金のシステム開発に着手し、2017年5月に完成。検証を経て8月にサービスをリリースした。「開発期間は実質8カ月間。銀行のシステムとしてはかなり短期であり、(PaaSを使わない)他システムと比較して開発工数が50%削減されている」(平鹿氏)。開発コストについても、「オンプレミスと比較対象がないので精査はできないが、少なく見積もって基盤部分は50%削減できた」(平鹿氏)という。

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