10月24日、KDDIはSoftware-Definedの技術を活用した企業向けWANサービス「KDDI SD-Network Platform」とクラウド型のセキュリティサービス「KDDI Security Cloud」を発表。ICT基盤、パートナーシップ、グローバルサポートを提供し、企業のデジタルトランスフォーメーションを次のステージに引き上げていくという。
クラウド接続に最適化されたSD-WANをワンパッケージで提供
「KDDI SD-Network Platform」はSoftware-Definedの技術を用いたネットワークの仮想化を実現する企業向けのWANサービス。米Versa NetworksのVNF(Virtual Network Function)のテクノロジーを採用しており、日本を含む37の国と地域において提供される。
KDDI SD-Network Platformはユーザーの拠点に設置された専用機器によって実現される。専用機器ではルーティングや可視化などの基本機能のほか、用途や品質に合わせて回線を使い分ける「マルチパス制御」や、特定のパブリッククラウドへのアクセスのみ拠点から直接インターネット接続させる「ローカルブレイクアウト」、1つの物理回線上に論理的に異なる複数のネットワークを構築できる「セグメンテーション」などのSD-WAN機能が利用できる。また、2018年3月からはアプリケーション単位でアクセスを制御する次世代ファイアウォールの機能も提供される予定となっている。
専用機器のハードウェアは処理性能をベースにした「Small」「Medium」「Large」の3種類が用意されており、ベーシックな機能としてルーティングや可視化の機能を提供。アプリケーションの通信状況にあわせてSD-WANや次世代ファイアウォールを組み合わせたり、モバイル接続を追加することが可能になる。Webの問い合わせ、メールや電話による通知といった運用・監視、センドバックやオンサイトの保守もすべてサービスとしてパッケージ化されている。
提供料金は専用機器1つあたり月額1万円~(ルーター、トラフィック可視化、センドバック保守を利用した最小構成)で、提供開始は2017年12月5日からとなっている。
あわせてクラウド型のセキュリティサービスである「KDDI Security Cloud」も発表された。シマンテックの技術を用いることで、クラウドアプリの可視化や利用制御を行なうCASB(Cloud Access Security Broker)やフィルタリングやアンチウイルスなどのWebセキュリティ、アンチスパムやアンチウイルス、サンドボックスなどのメールセキュリティなどの機能が提供される。
ICT基盤、パートナーシップ、グローバルサポートの3つを提供
サービス登場の背景には企業ネットワークの動向の変化がある。従来、拠点間をVPNで接続していた時代から、データセンターへITリソースを集約する流れが訪れ、現在では閉域網とインターネットを利用して複数のクラウドを利用する形態に変化しつつある。クラウドのインパクトはネットワーク利用においても顕著に表れている。KDDIの梶川真宏氏は、「クラウドへの接続は8割がインターネットで、クラウド向けのトラフィック自体も2020年には2015年から比べて4倍に拡大する見込み」と語る。
こうした中、顧客からはネットワークの期待も大きく変わってきているという。たとえば、パフォーマンスも単に帯域を増速するだけではなく、インターネットを含めた有効活用が必要になる。また、変化への対応に関しても、ネットワーク単位での変更をせず、小さく早く必要な箇所に適用できる必要がある。さらにセキュリティに関しては、オープンな環境でも安心してクラウドにつなげる環境が求められているという。
これに対してKDDI SD-Network Platformは、小さく始めて選択・拡張でき、利用中のVPNサービスやインターネット回線をそのまま導入できる。また、複雑な設定が不要なため、海外拠点の利用も迅速に行なえるほか、インターネットとVPNを組み合わせることでパフォーマンスを最大化することが可能になるという。さらにOffice 365などのクラウドサービスを快適に利用できるほか、KDDI Security Cloudとの併用でデータ保護やシャドーIT対策も実現するという。
KDDIの藤井彰人氏は、ITが業務効率化のツールからすべてのビジネスの牽引役になるデジタルトランスフォーメーションの時代が到来したことをアピール。国内企業でも関心が高まっている新規事業やイノベーションの領域を推進する変化に追従できるICT基盤やアジャイル開発やクラウドに長けたパートナーシップ、190ヶ国以上をカバーするグローバルサポートの3つを提供するというKDDIの法人ビジネス戦略を説明した。
このうちICT基盤に関しては、顧客の価値を基軸においてサービスを投入していき、短い周期でリリースを続け、継続的に価値を高めていく。「スタートアップや海外の企業であれば当たり前のようにやっていることを、われわれも進めていく」(藤井氏)。