ヨーロッパではもはやEVでなければクルマにあらず・・
フランクフルトショーレポート=VWもメルセデスもBMWも電気自動車しか作らなくなる!
2017年09月14日 20時00分更新
9月14日にドイツで開幕したフランクフルトモーターショーで、ヨーロッパの大手自動車メーカーが、一斉にEV=電気自動車を発表した。イギリス・フランスによる2040年以降のガソリン・ディーゼル禁止方針に続き、中国も規制を強化するため、ヨーロッパの全メーカーが一斉に急ハンドルを切ったものだ。
日本メーカーはガソリン・ディーゼルから、電気モーターとの共用=HV=ハイブリッドをステップとして、より電池容量の大きなPHV=プラグインハイブリッド、そして電池のかわりに水素による発電を使う燃料電池車と、電池と電気モータのみのピュアEVへと段階的に進もうとしているが、欧州勢は一気にEVへ突入せざるをえなくなっている。そんな欧州メーカーが公開したEVをみていこう。
(以下HV/PHVを含めた電気モーター内蔵車種を「電化モデル」、完全に電池だけの車種を「EV」と呼ぶ)
2025年のEVモデル数を30から50へと加速
Volkswagen「I.D.クロス」
欧州最大手のフォルクスワーゲングループは向こう5年間で60億ユーロ(約7800億円)をEV開発に投入すると発表。2025年には50モデルのEVを発売し、総販売台数約1000万台のうち25%がEVになる予定だ。
フランクフルトでは2020年に発売予定のEV「I.D.クロス」を初披露した。カタチとしてはSUVと4ドアクーペをクロスオーバーしたデザインで、室内の空気清浄機能や音声案内によるドアの開閉、ドライブモードの変更などができる。2モーターの4輪駆動で、最高速度は180km/h、最高出力は225kWで、航続距離は500km、急速充電によって30分で80%を充電可能とする。
ちなみに2020年にはゴルフのEVモデル、そして70年代ヒッピー世代になつかしいバン「Bulli」も2022年にEVとして発売する予定。すべてのI.D.モデルには「vw.OS」というオペレーションシステムを採用して、常にアップデート可能とするという。スマホなみですね。
2022年には10モデル&スマートは完全電化
Daimler=メルセデス「コンセプトEQA」
メルセデスも全車種において電化モデルを選択できることを目指しており、2022年までに10モデルのEV発売を目指す。EQというのは同社のEV車ブランド名で、第一弾として「ジェネレーションEQ」というSUVを昨年のパリモーターショーで発表していた。
今回発表したコンセプト「EQA」は、その名のとおり同社の「Aクラス」にあたるEVで、全長4285ミリ、全幅1810ミリの3ドアハッチバック。電気モーターを2台搭載して最大出力272hp、最大トルク51kgm、0-100km/h加速は約5秒というスポーツカー並みの性能を誇る。バッテリーはリチウムイオン60kWhを搭載して航続距離は400km、急速充電では10分間で100km走行ぶんを充電できる。
傘下のスマートは、欧州と北米で全車種をEVにすると発表。「ビジョンEQ」はスマートの2人乗りモデルの将来型コンセプトカーで、カーシェアエングを想定した自動運転のEV。デモを見ていて、1970年大阪万博の自動車館を思い出した(当時実物に乗りましたよもちろん)。
2025年に12モデルのEV発売
BMW「iビジョン・ダイナミクス」
BMWは2020年までに全ラインアップに電化モデルを投入すると宣言しており、2025年には12モデルのEVを発売すると表明。フランクフルトではに発売しているi3の新型とi3S、MINIのEVモデルを公開した。
発表会の最後にワールドプレミアしたのは「i5」になるといわれている4ドア・グランクーペの「ビジョン・ダイナミックス」だ。
航続距離は600km、最高速度200km/hで0-100km/h加速時間は4秒というスポーツ性能も持つ。i5だとすると、まさにBMWのメインモデルのEV版ということになり、フロントにギリギリ残されたキドニーにちょっと安心した。
50年前の名車もEVでよみがえる
Jaguar Land Rover「I-PACE eTROPHY」
ジャガー・ランドローバーも2020年には全車種に電化モデルを出すと発表しているが、今ショーに向けて往年の名車「E-TYPE」の完全EVレストアモデル、そして2040年以降を見据えたコンセプトモデル「FUTURE-TYPE」を公開した。
「E-TYPE ZERO」は1968年式のE-TYPEのシリーズ1.5ロードスターをベースに、電動パワートレインを搭載して0-100km/h加速時間5.5秒を実現(当時のエンジンモデルより1秒速い)。バッテリーは40kWhの容量で、航続距離は270kmである。
「E-TYPE ZERO」のパワートレインは出力220kWでリチウムイオンバッテリーパックはオリジナル車に搭載していた6気筒のXKエンジンと同寸法同重量にしてある。そのためサスペンションやブレーキなどの基本構造を変更する必要なくEV化できた。
このエンジンはXK120やMarkII、XJ6など、当時以降の大半のモデルに採用していたので、これらの車両すべてを電動化することも容易であるという。
「FUTURE-TYPE」は完全自動運転を想定したデザインモデルで、インテリジェント・ステアリングホイール「Sayer」を搭載。音声で動作するAIを内蔵した世界初のハンドルで、取り外して持ち運ぶこともできる。
さらに、2018年の市販が決まっているEV「I-PACE」を使ったレースシリーズ「I-PACE eTROPHY」を発表した。電動のフォーミュラーカーで世界の主要都市を転戦している「Formula-E」シリーズと同じ日程で実施するもので、20台で戦われる予定。電気自動車の量産車によるグランプリシリーズはもちろん世界初である。
クルマが家の一部になれば、それは部屋ごと移動すること
Renault 「SYMBIOZ」
ルノーが2030年を想定したEVコンセプトカー「SYMBIOZ」の特徴はずばり「家と繋がる」である。電力をやりとりするのはもちろん、家のなかに入って部屋にもなる。逆に言うと、部屋がそのまま外へ出て行くともいえるわけで、家にいるのと同じリラックスしたまま移動できるということだ。完全自動運転が実現したら、これもアリなのである。
完全自動運転はもちろんハンドルなし
Audi「Aicon」
VWグループのアウディはレベル5=完全自動運転の電気自動車「Aicon」を公開。デザインスタディではあるが、ハンドルもペダルもないデザインでAudiAIが運転してくれる。。
レベル4=高度自動運転の「Elaine」、レベル3の自動運転機能を搭載した「A8」も発表した。
新型車すべての電化を宣言
HONDA 「アーバンEVコンセプト」
ホンダはすでに2025年には全販売数の3分の2を電化車両とると発表しており、欧州では今後発売する新型車すべてに電化モデルを用意する。
フランクフルトでは「アーバンEVコンセプト」を公開した。アーバンEVも単なるコンセプトではなく2019年には欧州向けとして発売する。インテリアは、リビングルームのような心地良い空間と大型ディスプレイの採用に加え、AI技術を用いたHonda Automated Network Assistantで"人とクルマとの新しい関係性"を提案しているという。