今回のことば
「私が長年この産業に携わって感じているのは、創造的破壊が最大の醍醐味であるということ。そこにチャレンジしていきたい」(レノボ・エンタープライズ・ソリューションズのロバート・スチーブンソン社長)
レノボが「3-Wave Strategy」という新たな戦略を発表した。
レノボ・ジャパンの留目 真伸社長は「レノボが目指す、豊かで、安全で、自由な世界を目指すという姿勢は、これまでとは変わらない。だが大きな変革を迎えるなかで、それを改めて整理しなおしたのが、今回の3-Wave Strategyになる」と位置づける。
では、3つの波とはなにか。
オープンイノベーションを目指す
「ライフスタイル提案」「インフラ提供」「イノベーションの共創」
1つめの波が「PC事業を中心とした働き方改革とライフスタイル提案」である。レノボの発祥事業であるPC事業とタブレットによる同事業は、引き続き世界および日本におけるトップシェア維持を目指しながら、あくまでも同社の基幹事業であることを強調してみせる。
2つめの波は「サーバー、モバイル事業による業務、生活へのインフラ提供」。「豊かで、安全で、自由な世界を目指す上で、PCやタブレットだけでは実現できない部分を、サーバーやモバイルという専門性の高い領域からも拡張していくことが狙いとなる」とする。
そして、3つめの波が「Device + Cloudによるイノベーションの共創」だ。「デバイスとクラウドを活用することで、社会の大きな変革を実現していくことになる」とした。
こうした3つの波を示しながら「レノボ・ジャパンは、スマートデバイスとコンピューティングを組み合わせた第1の波に加えて、サーバー事業とモビリティー事業によって構成される第2の波では、それぞれの専門性を持たせて、それぞれの顧客にあった事業を進め、それぞれに日本で事業を拡大していくことになる。そして第3の波であるDevice + Cloudでも、今後新たなデバイスを投入し、クラウドと連携したサービスを新たに提供していくことになる」と発言。
「だがそれぞれの技術が発展するだけでは、社会の課題が解決するわけではない。社会の業界の課題に対して、ライフスタイル提案、インフラ提供、イノベーションの共創という観点から取り組み、さらにオープンイノベーションをテーマに活動していくことが大切である」などとした。
こうしたレノボの新たな方針のもとで、体制を一新したのが、サーバーやストレージ、ネットワークに取り組むデータセンター事業である。いわば、2つ目の波に位置づけられる事業だ。
「レノボ・エンタープライズ・ソリューションズが取り組むデータセンター事業は、3-Wave Strategyの構成する重要なピース。本社および日本も新たなリーダーとなり、統合したコンピューティングの世界を実現する新たなブランド、データセンター事業を発展させるための新たな製品を投入。データセンター事業を再定義し、新たな成長に向けて強化する」と留目社長は語る。つまり、「リーダー」「ブランド」「製品」が新しくなる。
データセンター事業では本社において、インテル出身のカーク・スコーゲン氏がエグゼクティブ・バイス・プレジデント兼データセンター事業担当プレジデントに就任。
日本においては、6月28日付けでレノボ・エンタープライズ・ソリューションズの社長にロバート・スチーブンソン氏が就任した。
スチーブンソン社長は、BEAシステムズ、日本アバイアで社長を歴任。日本在住35年というキャリアを持つ。また、合気道では六段師範の資格を有する。
スチーブンソン社長は流ちょうな日本語で「レノボ・エンタープライズ・ソリューションズは、日本では独立した組織として展開してきたが、これまで以上に専門性を高めて、深く入り込み、本気で取り組んでいく。データセンター事業部門は、心臓よりも頭脳の部分を担う事業。コストやパフォーマンスでも、いままで以上のものを提供していく」とする。
また、新たなブランドとしては、「ThinkSystem」および「ThinkAgile」へと一新する。
一新されるデータセンター事業
新たなコンピュート時代に向けて積極的に踏み出す
ThinkSystemは、サーバー、ストレージ、スイッチなどのデータセンターを構成するプラットフォームの統合ブランドで、従来のSystem X、ThinkServerに加えて、ストレージ製品のLenovo Storageシリーズ、ネットワーク製品のLenovo RackSwitchシリーズを統合。
さらに、ラックサーバーを2モデルから6モデルへと拡張し、独自技術を搭載したハイエンドサーバーの強化、およそ4倍の性能向上を図ったオールフラッシュアレイモデルの投入などをした。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ データセンターソリューション事業本部製品本部の工藤 磨本部長は「DCI、SDDC、ハイパースケール、HPC&AIという4つの市場に対応した形で製品ラインナップを強化し、多様なワークロードに対応する業界最大規模のポートフォリオを実現できる」と自信をみせる。
また、ThinkAgileは、Software Defined Centerを最適化し、Converged SystemやHyper Convergedを統合したブランドと位置づけており、NutanixによるハイパーコンバージドインフラストラクチャーのHXシリーズ、CLOUDIANやNexenta、DataCoreによるSDSアプライアンスのDXシリーズに加えて、XClarityやAzureStackとして提供するSXシリーズで構成される。
「導入から投資回収までの時間を80%短縮し、OPEXを23%削減できる。さらに顧客に対しては、ホワイトグローブサービスを提供していくことになる。ホワイトグローブサービスとは、ホテルに入るとポーターが荷物を持ってくれるのと同じように行き届いたサービスを提供することを指す。そしてXClarityでは、導入、運用、更新までの統合管理による連携によって、ライフサイクルマネジメント全体を実現することができる」などとした。
スチーブンソン社長は「レノボのデータセンター事業は、世界ナンバーワンのサーバー技術と、世界最大級のグローバルサプライチェーンを持っている。これをベースに、新たなコンピュート時代に向けて、ハイパースケールな世界と、ハイパーコンバージドの世界にも積極的に踏み出していく。私が長年この産業に携わって感じているのは、創造的破壊が最大の醍醐味であるということ。そこにチャレンジしていきたい」とする。
同社のデータセンター事業は、これまでにもサービス体制の強化や、NECパーソナルコンピュータの米沢事業場を活用したHCIの組立など、信頼性向上や品質向上に向けても取り組んできた。
だがレノボのサーバーのシェアは、IBM時代の水準にはまだ戻っていない。PC事業が統合によってシェアを拡大しているのとは大きな差がある。これは、まだレノボのサーバーが市場に認知されていないことの裏返しともいえるだろう。
新体制とThinkを冠した新たなブランドで本気になったレノボのデータセンター事業がどんな成長戦略を描けるのか。新体制での一手が注目される。
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