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さくらの熱量チャレンジ 第15回

コミュニケーション機能の向上で今後はますます人間に近づく

ロボット開発歴35年のALSOKに聞いた警備ロボットの現在と将来

2017年05月15日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

提供: さくらインターネット

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「ALSOK」としておなじみ綜合警備保障といえば、防犯対策・セキュリティの会社として知られている。しかし、常駐警備員の不足を見越した警備ロボットの開発では、実は35年の歴史を持っている。進化を続ける警備ロボットの現在と将来についてALSOKの担当者に聞いてみた。

警備と案内の機能を備えたALSOKのロボットは30年前から開発されていた

 ALSOKのロボット開発は、顧客の設備を守るという常駐警備の効率化のほか、少子高齢化による人手不足、警備員の受傷事故を防ぐといった目的のため、1982年から進められている。ALSOKでロボットの開発に携わる恒次創氏は、「一部のハードウェアなどは協力会社にお願いしていますが、駆動関連のソフトウェア制御などはずっと自社開発しています。自動巡回や充電などの技術がなかった頃から開発を手がけてきました」と語る。

ALSOK 開発企画部 開発企画課 課長代理 恒次創氏

 同社が企業向けの警備ロボットを商用化したのは、今から15年前の2002年。それまでは純粋な警備ロボットとして開発されていたが、実証実験を重ねているうちに施設の案内というニーズにも気がついた。「案内も警備員の仕事の1つです。ですから、ロボットも昼間はタッチパネルで来訪者を案内し、夜は警備するというコンセプトになりました」(恒次氏)という。

 案内と警備というコンセプトを継承した最新のReborg-Xは、流線型の丸みを帯びたフォルムの筐体を採用。従来モデルに比べて長時間での駆動が可能になったほか、音声合成による人間とのコミュニケーション機能、案内に利用する高解像度のディスプレイも用意されている。

 Reborg-Xは天井等に設置したランドマークで自身の位置をカメラで検知することで、自律走行と自動充電が可能だ。営業推進部の田原英雄氏は、「部屋をきれいにするという目的のために動きが任されているお掃除ロボットと違って、警備ロボットは基本的には決められたところを巡回するという動き方になります」と語る。その上で、決められたエリアに人物が侵入してくると、音と光で警告を発しつつ、常駐警備員等に通知を行なう。

ALSOK 営業推進部 ブロードマーケット営業室 課長代理 田原英雄氏

社員の一員として活躍している事例もある

 市場参入が早かったこともあり、ALSOKのロボットはすでにいろいろなところで使われている。科学技術館や富士急ハイランドなど著名な施設での導入も多いが、通常のビジネスビルでも警備の役割を果たしている。「大手町のあるビルは普段は常駐警備員が詰めていますが、今回はロボットが追加されています。常駐警備にロボットを追加することで、ロボットが監視中にセキュリティラインを超えたら、人間の警備員を呼び出すというフローになっています」(田原氏)とのことで、常駐警備員との連携が一般的な利用方法だという。

 ロボット自体による集客効果を期待する向きも大きい。「富士急ハイランド様の使い方は面白くて、侵入者を発見するというアトラクション自体で使ってもらっています。いかにしてReborg-Xに見つからないで、ゴールまでにたどり着けるかが勝負です」(恒次氏)。

 コミュニケーションや顔認証の機能を活用している事例もある。ピアノの買い取りを手がけるタケモトピアノでは、Reborg-Xがビルのエントランスで顔認証による入退室管理を行なっており、出社時はReborg-Xが従業員の方々を顔認証。『田原さん、おはようございます。今日もお仕事がんばってください!』と言って、ドアを開けてくれるという。もちろん、終業近くだと『あと少しなので、がんばってください」とコメントが変わる。「経営者の方が、従業員のモチベーションアップのためロボットを活用したいとおっしゃってくれたので、社員の一人として受け入れてくれています」(田原氏)とのことで、現場に根付いた使われ方がすでに行なわれている。

 さまざまな現場で利用されるロボットの開発で同社が特に配慮しているのは安全性。「警備を業務とする弊社のロボットは、とにかくお客様に危害を加えてはいけません。ですから、お子様が急に飛び出してきたというときにきちんと止まれるかといったテストはかなりやっています。140kgありますので、お子さんが押しても倒れませんし」(恒次氏)とのことで、設計やテストの面で安全性を重視しているという。また、さまざまな利用用途を想定しており、点字ブロックやバリアフリーの坂道も登坂できるという。

安定したLTE通信があれば行動範囲が拡がる

 Reborg-Xは無線LANを用いて通信を行なっている。現状では利用が屋内になるため、無線LANで事足りているという認識。「決められたルートを安定して動くことを重視して、無線LANを使っています。異常があったときに、画像が送れないという事態が起こると本来の役割を果たせないことになるので」(恒次氏)ということで、帯域よりは通信の安定性から無線LANを用いているという。

利用が屋内であり、通信の安定性を考えると現在は無線LANという選択肢(恒次氏)

 とはいえ、さくらインターネットのIoTプラットフォームサービス「sakura.io」のようなLTE通信の利用は当然視野に入れているという。「無線LANの場合、数多くのアクセスポイントやルーターを設置する必要があるので、コストもかかります。でも、LTE端末が載せられれば、単純に行動範囲が拡がりますよね。安定した通信が可能であれば、当然LTEの導入も考えられます」(恒次氏)とのことで、通信が拡がれば、使用用途も増えてくる。

 また、ロボットにおいては、利用する通信にはそれぞれ特性があるため、LTEと無線LANを使い分ける必要が出てくるという。「たとえば、音声認識エンジンなど学習データの更新頻度の高い通信が予測される場合は、やはりLTE通信を積極的に使っていった方がよいと思っています。今後は処理の精度がどんどん要求されることになるので、外部のクラスターマシンに処理させるというパターンは増えてきそうです」と恒次氏は指摘する。将来的に機械学習の精度を上げていくためには、さくらの高火力コンピューティングのような演算基盤も必要になってくるかもしれない。

 今後の開発の方向性は、安全・安心を提供する警備の機能をベースとしつつ、案内という機能でコミュニケーション能力を上げていくことだという。先日は、羽田空港のロボットの実証実験にも参加し、公共空間でのロボットの実用度を検証してきた。「コミュニケーション能力を高め、ロボットが利用者を気遣ってくれる。今後は公共空間でも利用できるロボットに仕上げていきたいです」と恒次氏は語る。

(提供:さくらインターネット)

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