Hi-Fi指向で緻密、高解像度系サウンド
実際に音を聴いてみる。まずは「LIVE SEED FOLKS SPECIAL in 葛飾 山崎まさよし」から。アコギの抜け。空間の残響の消え去り方。ボーカルの質感などが聴きどころ。中音域をたっぷりと聴かせつつ、想像を上回る細かなディティールの再現性があって、初めて聞いた際には、思わず「いい」とつぶやいてしまった。
次に上白石萌音の「なんでもないや」。バランスの良さと解像感の高さを感じる。今回組み合わせたのは、AK70だが恐ろしいぐらいよくマッチする。バランス接続にすると、中低域がさらに充実し、メリハリ感が出てくる。
AK70はAKシリーズの中でのローエンド。上位機になればもちろん相応にクオリティーが上がっていくと思うが、ポタ沼の入口として非常に危険だ。むしろこの実売12万円程度の組み合わせをひとつのゴールにして、残りの予算は、ハイレゾ音源を買うほうに回した方が賢明かもしれない。
さてMichelle+AK70の組み合わせで筆者が感じた音質傾向は、大体以下の通り。
- 兄貴分と比較すれば低音が少し軽いが、中~高音の抜けがよく高解像度指向
- 多ドライバーながらつながり感がすぐれ、ボーカルなどはフルレンジのように自然
- クリアーで音の広がり感もある
ポップス・ロックだけではなく、室内楽の演奏として、ハープシコードとバイオリンの三重奏曲も聴いてみたが、鮮やかな色彩感があって音楽性も感じるし、楽器がより近くにある感じを味わえる。
全体を通じて、JH Audioのある意味マッチョ(というかグラマラス)なサウンドに対して、自然で繊細な面も垣間見せる機種という感じである。JH Audioの機種としては異色な感じだが、細いとか神経質とかといった意味ではない。トーンバランスも、JH AudioのSIRENシリーズ自体がちょっと個性的なサウンドに対して、一般的なHi-Fiイヤフォンに近い、フラットサウンドである。クッキリしていて高解像度だ。これに低域の重さやタイトさがほんの少し加わったら完璧な感じではある。
ただし低音の軽さについては、あくまでもJH Audioの中での話だ。一般的なBA型イヤフォンと比較すると音にしっかりとした実在感があり、ダイナミック型のようなしっかりとした支えや音圧感がある。
密閉型ではあるがこもりが少なく開放的な表現で、S/N感がよく、弱音の表現が優れている。特に中音域の滑らかさ自然さについては、Shure 4cで高級イヤフォンに目覚めた筆者としては、なかなか好印象であった。ボーカルなどの質感は滑らかで割合ウエットだけれど、メリハリ感や透明感、空気感なども十二分に伝える。