ファンの要望で内容を変える小説家も……
中国系コンテンツも目立つようになった。サブカルショップでも本を中心に販売する店では、漫画やライトノベル(軽小説)で地場中国コンテンツが目立つ。
ラノベは中国でのKADOKAWAと地場企業の合弁会社「天聞角川」などが出版しているが、2016年の売上がよかったものでは「ソードアート・オンライン(シリーズ累計で300万部)」や「Re:ゼロから始める異世界生活」といった日本のコンテンツに加え、中国産コンテンツのオンラインゲームのプロゲーマーの戦いを描いた「全職高手(マスターオブスキル )」という作品が人気だ。
また漫画でも、壇九氏が描く百合の要素が入った学園生活「SQ」など、さまざまな中国のタイトルが人気になりつつある。
天聞角川に聞くと、日本発のラノベの翻訳中文版は男性に人気で、中国のオリジナルタイトルは中高生から大学生くらいの女性に人気だとか。
中国ではオンライン小説は一定の人気がある。無名のオンライン小説でも面白ければ、それを気に入ったイラストレーターが自ら挙手をして挿絵を描き、作品が膨らみ、さらにファンを取り込んでいく環境ができている。
オンライン小説サイトでの掲載も注目を集めるが、むしろ作者がブログや「微博」(Weibo)、「微信」(WeChat)などのSNSに作品を掲載してファンを集め、やがて作者がアイドル的な存在となり、ファンを増やし、信頼関係を構築していく。
作品が人気になれば有料購読による収入や、電子マネーを活用したファンからの「お布施」が作者へと入る。そのため、お布施をするファンの声に従い、作者がストーリーをころころと変えていくという現象がしばしば発生する。
オンライン小説を作って膨らます土壌があるように、中国では全土で無数の数えられないほどのイベントがある。動画ライブ配信も2016年から普及し、自己アピールする場が増え、アニソンやダンスなどをアピールし、ファンを集めることで、電子マネーでの投げ銭を受け入れる体制ができている。
リアルでのイベントの繰り返しによる経験値上昇と、ITサービスの登場で、自己表現の場が増えた。
以前は「サブカルはお金のない学生の趣味で、大学を卒業し社会人になれば、お金があるので消費する趣味に走る」という状態だったが、今はサブカルファンの年齢層は広がり、自らサブカル関連の会社を立ち上げる人も少なくない。
日本の残り香のあるコンテンツを作る会社の社長は、20台後半から30台前半が多く、金と人を使って昔ながらの作りたいコンテンツを作っていく。
中国で一般層まで巻き込んでヒットしたゲーム「陰陽師」は、中国人の作り手が若いころにはまった日本の声優をふんだんに使ったことが大ヒットの背景にある。
加えて今、サブカル産業は、動画サイトなどによる高額な支払いによるコンテンツ配信権の取得のほか、業界への余剰金の投資(一過性の可能性がある)により金が動くので、サブカル会社を立ち上げれば儲かるという打算がある。
もっとも、ユーザーの間で「コンテンツは無料」の概念が残る中国では、テキストだろうが漫画だろうが動画だろうが、プラットホーム配信側はあまり儲からないという状況で、他所からの投資で事業が成り立っている状況だ。
経済が悪化したり、サブカルへの投資ブームが引けば、サブカル産業は打撃を受けるので、「投資ブームが終わる前に買ってもらおう」というチキンレースの様相もある。
イベントは単価、来客数ともに盛況
投資金額に比べれば小さいが、以前に比べてサブカルファンが金を持っているのは救いだ。入場料が1000円前後かかるイベントに大量に押し寄せる。
2016年は杭州のイベントで138万人を動員したほか、広州の「CICF」というイベントで6日間で延べ22万5000人、上海の「CCG EXPO」というイベントで6日間で延べ20万人を動員した。
加えて、中国全土で無数のイベントがあるのは前述したとおりだ。そうした場所や出版社のオフィシャルサイトのショップチャンネルでフィギュアなど、さまざまなファングッズが売れていく。
現状から察するに、中国ではアニメであれゲームであれ日本のコンテンツが引き続き注目を浴び、並行して日本テイストの中国発の作品と、純粋に中国らしい作品が出てくる。そして、それぞれにファンがつき、ファン同士が最新のネットプラットフォームで繋がるだろう。コスプレをする、踊る、アニソンを歌う、イラストを描くなどといった自己表現も評価される場が広がりそうだ。
天聞角川は「今、中国のサブカル文化はカジュアルに膨れている。換言すれば、オタクのアイデンティティーが認められている状況だ。そしておそらく日本人が思う以上に夢があふれている」という。
また「ファンは純粋にコンテンツを楽しんでいて、イベントなどでもコンテンツを楽しんでいる感がすごく伝わってくる。高校でもアニメサークルがあり、独自のイベントをする、それくらい裾野が広がっていて、携わっている立場としても中国サブカル産業の未来は明るいように思う」と語ってくれた。
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