あらゆる面で「IoT導入後の効果」は「導入前の期待」を上回る。では導入障壁は?
IoT投資のROIは「20~40%」が約半数、HPE Arubaが世界調査
2017年04月19日 07時00分更新
日本ヒューレット・パッカード(HPE Aruba事業統括本部)は4月18日、IoTのビジネス活用に関するユーザー企業へのグローバル調査結果レポートを発表した。すでにIoT導入を進めている企業層では「事前の期待」よりも「実際の効果」が上回ると評価されている一方で、8割以上の導入企業がIoTシステムに関する「セキュリティ侵害」を体験しているという。
同日の記者説明会では、調査結果から見るIoTの導入効果、業種ごとのユースケース、導入障壁、日本企業のグローバルとの意識差、そしてHPE ArubaとしてのIoT導入企業を支援するソリューションなどが説明された。
「IoT導入後に大幅増益」は35%、「セキュリティが大幅改善」は50%
同調査は、日本を含む世界20カ国のユーザー企業(従業員500名以上)で、IT部門と事業部門の意思決定者(ITDM/BDM)3100名を対象にインタビューを実施したもの。調査対象は、エンタープライズおよび製造、政府機関、小売、医療、教育、建設、金融、IT/テクノロジーを中心とする全産業で、3100名のうちアジア太平洋地域の回答者は1150名、日本の回答者は150名だった。
グローバルでの調査結果を見ると、IoTの導入後に得られたメリット(効果)が導入前の期待よりも高い、という結果が出ている。
たとえば、「IoT導入後に大幅増益した」という導入済み企業のビジネスリーダーは35%に及び、今後のIoT投資によって多額の増益を見込むビジネスリーダー(2年以内に導入予定)の15%を大きく上回った。同様に、IoT導入によって「セキュリティが大幅に改善した」とする経営幹部は50%で、事前の期待値である35%を上回っている。そのほか「イノベーション」「業務効率」「ITの効率」などいずれの項目でも、導入前の期待値を導入後の結果が上回っている。
導入済み企業におけるIoT投資のROI(投資対効果)については、「約20~40%のROIを実現している」が全体の47%を占めた。さらに「約40~60%」の企業も17%、「約60~80%」も10%あり、数年で投資回収できる見込みの導入企業が、全体の約4分の3を占める結果となっている。
また、IoT導入済み企業群において具体的にビジネス効果が発揮されているユースケースについては、「モニタリングおよびメンテナンス」「遠隔操作および運用」「位置情報に基づく各種サービス」「監視」「コネクテッドカー」の5つが上位だった。
IoTの成熟度にはセグメントごとにばらつきがあり、IoT導入率が高いのはエンタープライズ(72%)、製造業(62%)、医療(60%)、小売(49%)、行政(42%)の順だった。各業種での効果的な活用事例としては、たとえば製造業では「製造プロセスのモニタリングとメンテナンス」が最も効果的だったと回答されており、導入済み企業の83%が「事業効率が向上した」と回答している。また小売業界の導入済み企業では、81%が「カスタマーエクスペリエンスの向上」を報告している。
発表の中でHPE Arubaのマーケティング担当VPであるクリス・コザップ氏は、IoTのビジネスメリットが「期待」を上回っていることから、「企業が2019年までにIoTのより大規模な採用に向かうことはほぼ間違いない」と述べている。
障壁は「コスト」と「既存技術との統合」、日本では「セキュリティ」
同調査では、IoTの高い導入効果やメリットが明らかになる一方で、導入障壁となる課題も指摘している。「導入コスト」(50%)、「メンテナンスコスト」(44%)、「従来のテクノロジーとの統合の難しさ」(43%)がトップ3だ。なお、日本では「セキュリティ上の懸念」(54%)がトップに挙がっている。
IoTシステムのセキュリティに関しては、すでにさまざまな方面から検討/対処すべき課題として強く指摘されている。そして実際に、IoT導入済み企業の84%(日本企業では91%)が、「IoT関連でのセキュリティ侵害」を一度は経験していると回答している。このセキュリティ課題が、IoTの恩恵を享受し、あるいはIoT戦略を推進するうえでの大きな障害となっていると考える企業は半数以上だった。