馬力勝負では安定したパワーを発揮
それではマルチスレッド対応度の非常に高い3DCGレンダリングを利用したベンチマーク「CINEBENCH R15」のスコアー比べから検証スタートだ。
3DCGのような計算力が問われる分野では、コアの多さが快適さに直結する。その点においてRyzen勢は抜群に強い。定格クロックではRyzen 5 1600Xの方がRyzen 7 1700より高いが、このテストでは8コア16スレッドのRyzen 7 1700に軍配が上がった。だが実売3万円強のCPUとしては、ライバルであるCore i5-7600Kをほぼダブルスコアーで退けている。
また一方でシングルスレッド性能はKaby Lake-S(Core i5-7600K)に負けているが、今回テストしたRyzen勢の中では、1600Xが頭ひとつ抜けた存在であることもわかった。
CGレンダリング以外にマルチスレッド性能を活かせる分野といえば、動画のエンコードも挙げられる。「TMPGEnc Video Mastering Works 6」を使い、再生時間3分のAVCHD動画(1080p)をMP4形式の動画に2パスでエンコードする時間を比較する。
コーデックはx264およびx265を使用し、エンコード時のパラメーターはそれぞれデフォルトのものを使用している。
全体傾向はCINEBENCH R15に似ている。コア数の多いRyzen 7が圧倒的な速さを見せつけているが、3万円クラスのCPUとしては、Core i5-7600Kに対しRyzen 5 1600Xが安定して速い。
4コア4スレッドのCPUに6コア12スレッドのCPUが勝つのは当たり前の話だが、今までCPUだけで最低5万円のLGA2011-v3版Core i7でしか味わえなかった領域が、3万円台で手に入るというのは驚くべきことだ。
4コア8スレッドのRyzen 5 1500Xに関しては、4コア4スレッドのCore i5-7600K相応の性能に収まっている。クロックの低さとIPCの低さをSMTの力で挽回した格好だが、こちらもコスパ的には悪くない。ただRyzen系の特性として、TMPGEnc VMW6におけるx265の処理が弱いようだ。
クリエイティブ系処理にマルチスレッドが効くことはわかったが、ゲームに関してはどうだろうか? まずは軽く「3DMark」の評価を見てみよう。テストは“Fire Strike”および“Time Spy”を使用する。
ご存じの通り3DMarkのスコアーにはCPUによる物理演算性能も加味され、コア数が多いCPUほどスコアーに上乗せされる。
そこでFire StrikeはPhysicsスコアー、Time SpyではCPUスコアーの数値も併記した。Ryzen 7 1800Xが突出し、そのやや下にRyzen 5 1600XとCore i5-7600Kがほぼ同じポジションについているが、PhysicsやCPUスコアーは圧倒的にRyzen環境が高い。
ただこれはCINEBENCH R15のスコアーを考えれば順当な結果。実際のゲームでもう少し検証する必要がある。
そこで最近Ryzen対応パッチが出たという「Ashes of the Singularity」でテストする。画質は“Extreme”、解像度は1920×1080ドットに設定。“CPU Focused”と“GPU Focused”テストをそれぞれ実施し、“Average CPU Framerate”を比較する。マルチスレッドの恩恵が活かしやすいDirectX12モードでの実施だ。
AMD系GPUに親和性の高いOxideエンジンを使ったゲームだが、CPUはAMD系有利……とは限らなかったようだ。GPU FocusedテストではCore i5-7600Kに大きく水をあけられてしまった。
ただCPU Focusedに関していえば、Ryzen 7がトップ(高価だから当たり前か)、続いてRyzen 5 1600X、そしてCore i5-7600Kという3DMarkと同様の傾向が見られた。多量のユニットが入り交じってバトルするような環境では、Core i5よりもRyzen 5の方がややベターな結果が期待できるかもしれない。

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