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AMD「RYZEN」の性能と価格を発表!同性能のCore iの半額以下⁉

2017年02月23日 03時00分更新

文● 本間 文(Bun Honma) 編集●ジサトラ ハッチ

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 AMDは、2月21日米カリフォルニア州サンフランシスコ市内において記者発表会を開催し、同社のリサ・スー社長兼CEOが、アーキテクチャを刷新したCPU「RYZEN 7シリーズ」を3月2日より発売するとともに、2月22日より先行予約販売を開始すると発表した。ただし、日本では予約販売は行わず、3月3日0時(すでに一部店舗で告知が始まっている。参考記事:http://ascii.jp/elem/000/001/440/1440534/)に販売が開始となる。

RYZENが、いよいよ市場に登場する

 リサ・スー氏は、AMDは4年前からZenアーキテクチャの開発に着手し、そのパフォーマンス目標として、Excavatorコアと比べてIPC性能(クロックあたりの命令処理性能)を40%引き上げるという、ある意味実現不可能なゴールを設定した。しかし、実際には、研究開発の努力により、ZENアーキテクチャを採用する初めてのCPUとなるRYZENでは、52%ものIPC性能の引き上げを実現したと言う。そして、そのRYZENが、いよいよ量産出荷を開始し、自作市場にも登場することになる。

RYZENの量産モデルを披露するリサ・スーCEO

RYZENの開発には4年を費やしてきたと説明

ZENアーキテクチャの開発にあたり、やや無謀とも言えるExcavatorコアから40%ものIPC性能向上を設定

しかし、RYZENでは、52%もの性能アップを実現した

 AMDは、RYZENの最初の製品群として、もっとも性能が高い8コア/16スレッドのデスクトップCPUとなる「RYZEN 7シリーズ」を投入。CPUソケットにはSocket AM4を採用し、DDR4メモリー対応を果たす。

RYZEN初の製品は、8コア/16スレッドのRYZEN 7シリーズ

 その中核モデルとなるRYZEN 7 1700Xは、ベースクロック3.4GHz、Boostクロック最大3.8GHzを95WのTDPで実現。CINEBENCH R15のCPUマルチスレッド性能ベンチマークの結果で比較するならば、その競合となるIntel Core i7-6900Kとほぼ同等ながら+4%のパフォーマンス、Core i7-6800Kとの比較では+39%のパフォーマンスを実現するとアピールした。

 さらに、AMDは、RYZEN 7シリーズの最上位モデルとして、ベースクロック3.6GHz、Boostクロック最大4.0GHzを実現するRYZEN 7 1800Xも用意。8コアデスクトップCPUではもっとも高速な製品となるとして、Core i7-6900Kを上回るマルチスレッド性能、そしてシングルスレッド性能では同等のパフォーマンスを発揮すると、ベンチマーク指標を公開した。さらに、同社は下位モデルとしてRYZEN 7 1700もラインナップ。ベースクロック3GHz、Boostクロック3.7GHz動作をTDP 65Wで実現し、同価格帯のライバルとなるCorei i7-7700Kに比べて、大幅なマルチスレッド性能を実現すると言う。

RYZEN 7 1700Xは、ベースクロック3.4GHz、Boostクロック最大3.8GHzを95WのTDPで実現。そのマルチスレッド性能は、Core i7 6900Kを上回ると言う

最上位モデルのRYZEN 7 1800Xは、ベースクロック3.6GHz、Boostクロック最大4.0GHzを95WのTDPで実現。

8コアデスクトップCPUではもっとも高速な製品となるとして、Core i7-6900Kを上回るマルチスレッド性能、そしてシングルスレッド性能では同等のパフォーマンスを発揮するとアピール

下位モデルのRYZEN 7 1700は、ベースクロック3GHz、Boostクロック3.7GHz動作をTDP 65Wで実現し、同価格帯のライバルとなるCorei i7-7700Kに比べて、大幅なマルチスレッド性能を発揮する

 AMDは、実際にCINEBENCHによるマルチスレッドベンチマークのライブデモを実施し、RYZEN 1800Xが、Intel Core i7-6900Kを上回る性能を発揮することをアピール。さらに、ビデオエンコーティングのデモとして、HandBrakeのトランスコード時間を、RYZEN 1700とCore i7-7700Kで比較(Quick Syncは使用せず、CPUのみで処理)し、コンテンツクリエーションでも8コア/16スレッドCPUを使うメリットは大きいと説明した。

Core i7-6900Kのマルチスレッド性能が1474なのに対し、RYZEN 1800Xは1619をスコア

HandBrakeによるビデオトランスコード性能の比較。RYZEN 1700が61.8秒だったのに対し、Core i7-7700Kは71.8秒となった

 また、スー氏は、RYZEN 7シリーズの発売にあわせ、主要マザーボードベンダーから82以上の対応モデルが順次投入されると語った。自社ブランドでPCを展開する19のSIベンダーから第1四半期中に200モデル以上のRYZEN 7シリーズ搭載製品が投入される予定で、大手OEMベンダーからも、今年前半のうちにGAMINGタワーPCが投入される予定になっていることを明らかとし、順調なデザインウィンを勝ち取っている模様だ。

 発表会の会場には、詳細なスペックは明らかにされていないが、レノボのゲーミングタワーPC「Lenovo Y720 GAMING TOWER」と、ビジネス向けPCの「Lenovo Ideacenter 720」も参考展示された。

展示ブースでは、RYZEN搭載システムやデモなどが公開された

RYZEN対応マザーボードは、主要ベンダーから82製品以上が投入される計画だ

SIやOEMからも、RYZEN搭載システムは、続々と登場予定

レノボのゲーミングタワーPC「Lenovo Y720 GAMING TOWER」

ビジネス向けPCの「Lenovo Ideacenter 720」

展示エリアでは、Vegaもこっそりと披露された

Socket AM4に対応する高性能CPUクーラーも展示

ASUSのAM4マザーボード

GIGABYTEのAM4マザーボード

MSIのAM4マザーボード

ASRockのAM4マザーボード

 スー氏は、高性能CPU市場動向を分析し、99%のユーザーは500ドル以下のCPUを求める一方で、プロにせまるコンテンツを制作し、SNSなどに投稿したいと考えており、RYZEN 7は、こうしたユーザーに優れたパフォーマンスを提供し、高性能CPU市場の裾野を大きく拡大する価格付けをすると宣言。

 同シリーズの米国における市場想定価格を公開した。RYZEN 7 1800Xは、Core i7-6900Kの半額以下となる499ドル、RYZEN 7 1700XはCore i7-6800Kより高性能ながら、若干安い価格となる399ドル、RYZEN 7 1700は、Core i7-7700Kを大きく上回る性能ながら、それよりも安い329ドルで市場投入される予定であることが明らかにされた。なお、日本国内における市場想定価格は、下記のとおりだ。

高性能CPUマーケットでは、99%のユーザーが500ドル以下のCPUを求めていると分析

RYZEN 7 1800Xの価格は499ドルと、Intel Core i7-6900Kの半額以下に設定

RYZEN 7 1700Xは、Core i7-6800Kよりも安い399ドルに設定

RYZEN 7 1700は、Core i7-7700Kよりも安い329ドルに設定

発売は3月2日に決定。(日本では3月3日に販売が開始となる。)

2月22日より、全世界で先行予約販売を開始する。(ただし、日本では予約販売は行われない。)

RYZENシリーズの概要
製品モデル RYZEN 7 1800X RYZEN 7 1700X RYZEN 7 1700
コア数 8 8 8
スレッド数 16 16 16
ベースクロック 3.6GHz 3.4GHz 3GHz
Boostクロック 4GHz 3.8GHz 3.7GHz
TDP 95W 95W 65W
価格(米ドル) 499ドル 399ドル 329ドル
日本における希望小売価格(税抜)
製品モデル RYZEN 7 1800X RYZEN 7 1700X RYZEN 7 1700
価格 5万9800円 4万6800円 3万8800円

 AMDは、このRYZEN 7シリーズの投入を皮切りに、次世代GPUとなるVegaを今年第2四半期に、サーバー・データセンター向け高性能CPUの“Naples”(ネイプルス、開発コードネーム)も第2四半期中に投入する計画であり、さらに今年後半にはZenアーキテクチャを採用するモバイル向けSoCの“RYZEN Mobile”(これまで、開発コードネーム“Raven Ridge”と呼ばれていた製品)と、深層学習やデータセンター向けGPUのRADEON INSTINCTの投入を控えるなど、アグレッシブな1年の正式スタートを切った形だ。

RYZENの投入を皮切りに、2017年は、AMDにとってアグレッシブな製品展開が待っている

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