2017年の国内クラウド事業戦略を説明、InterConnect新発表製品も詳細を紹介
「IBMクラウドの戦略は『リフト&シフト』」日本IBM 三澤氏
2017年04月10日 07時00分更新
日本IBMは4月6日、2017年のクラウド事業への取り組みについて記者説明会を開催した。
IBMクラウドが「企業活用に最適なプラットフォーム」である理由とは
先月開催された「IBM InterConnect 2017」において、米IBM 会長、社長兼CEOのジニー・ロメッティ氏は、IBMクラウドの特徴と戦略を「Enterprise strong」「Built for data」「Cognitive to the core」だとまとめ、IBMクラウドこそが「企業が活用するに当たって最適なプラットフォーム」であると強調した。
三澤氏は、IBMのクラウド戦略を次のように説明する。
「IBMのクラウド戦略は『リフト&シフト』が中心となる。(既存のアーキテクチャを)変えなくていいシステムは、オンプレミスに残したり、ベアメタルを活用してクラウド上で稼働させることができる。ここでクラウドへ『リフト』できるのは、ベアメタルベースのIaaSを持つIBMだけだ。また、変えたほうがいいシステムでは、クラウドに『リフト』したうえで、クラウド環境に最適化されたアプリケーションへと『シフト』していくことができる。顧客システムのこうした変化を、日本IBMは手伝いたい」(三澤氏)
ここで言う「リフト」は、現状のアーキテクチャを変更することなくクラウドに載せること、また「シフト」は、クラウドに最適化されたアーキテクチャ(マイクロサービスなど)に変更していくことを指す。InterConnect 2017基調講演では、IBMによるリフト&シフトの事例として、アメリカン航空、カナダロイヤル銀行が紹介された。
「クラウドネイティブアプリやマイクロサービスを活用しているIBMユーザーは、国内ではまだ少ないが、今後は増えてくるだろう。そうした企業を、これから支援していくことになる」(三澤氏)
開発生産性を高めるために、日本IBMでは、マイクロサービスの設計から開発、運用に至るシステム開発に関わるすべての工程を「IBM Bluemix」上で包括的に支援するフレームワーク「Open Toolchain」を提供している。IBMが考案したアプリケーション開発手法「IBM Bluemix Garage Method」に対応したツールを、あらかじめプリセットしたテンプレートとして提供することで、開発者が使い慣れたツールとの組み合わせによる自由度の高い開発体制の整備、開発チームごとのプロジェクト管理と複数チームによる大規模なクラウドネイティブアプリケーション開発などが可能になるという。
「さまざまなサードパーティーのツールや、オープンスタンダードなツールを自由に利用できる。また、複数チームによる並行開発管理が可能であること、各ツールがシームレスに接続されることで、ワークフローのガバナンス向上と可視化を実現できる。日本の企業は、クラウドネイティブアプリやマイクロサービスアーキテクチャーを採用して開発することは難しいと考えているが、従来の開発手法を残しながら、クラウドアプリを開発できる環境が整い、敷居を下げることができる」(三澤氏)
マルチクラウド自動化、低価格オブジェクトストレージ、VMware機能強化など
さらに、マルチクラウドやオンプレミスなどの多様なシステムやインフラ環境を一元的に管理する「IBM Cloud Automation Manager(CAM)」も新たに提供開始することを発表している。
IBM Cloud Automation Managerは、アプリケーションをさまざまなインフラで利用するためのデプロイと運用管理を容易にするBluemixサービス/オンプレミスソフトウェアで、マルチクラウド/マルチベンダー環境に対し、一貫した操作性でインフラの環境構築とITプロセス自動化を実現する。
「ある特定のアプリが、IBMクラウドにデプロイした方がいいのか、AWS、Azure、あるいはオンプレミスにデプロイした方がいいのかという判断を自動的に行うことができる。Pure System、Tivoliといった、IBMが持つ技術をクラウドに実装したもので、IBM独自のものになる」(三澤氏)
そのほか、高い信頼性を持ちながら他社比で最大47%のコスト削減を実現する「IBM Cloud Object Storage(ICOS)」、Hyperledger Fabric V1.0をベースにしたエンタープライズ対応ブロックチェーンサービスの最新版「IBMブロックチェーン」、インテルおよびハイトラストとのパートナーシップにより、ハードウェアレベルからセキュリティを向上した「VMware on IBM Cloud」の機能強化などを紹介した。
「VMware on IBM Cloudの機能強化は、2018年から施行させる予定のEU GDPR(EU一般データ保護規則)が求めるデータ保護規制に対応したものであり、これは世界で最も厳しいものになる」(三澤氏)
また、InterConnectの直前に発表された米セールスフォース・ドットコムとの提携では、Watsonが提供する洞察を用いてCRMの高度化を進めるとともに、気象データなどのIBMクラウドが提供するデータを利用することでのサービスの質的向上を図ること、そして両社クラウドサービスのインテグレーション支援において協業を行う。
日本IBMのクラウド事業の進捗について、三澤氏は「グローバルや競合他社よりも、はるかに高い成長率を達成している。これは母数が小さいのが理由ともいえるが、今年度、来年度も遙かに高い成長率を実現していく。日本においても、金融機関などへのクラウド導入が本格的に開始されており、今後のクラウド事業の成長には自信がある」と述べた。
なお日本IBMでは、2017年2月にクラウドとコグニティブシステムを組み合わせたソリューションを提案する専任組織を新設。新たなクラウドサービスの提供とあわせて、クラウドネイティブアプリケーションの迅速な開発、運用の支援を通じて、企業の競争力向上を推進するとしている。