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インフラ構成と製品ポートフォリオが複雑化する中でもCSを維持したい

非Linuxへ経営の舵を切るレッドハット、クラウドアーキテクト強化へ

2017年03月27日 09時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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 OSSコミュニティが開発したLinuxカーネルと周辺ソフトウェアをパッケージしたLinuxディストリビューションでビジネスをするRed Hatにとって、商用サポート(サブスクリプション)は事業の心臓部とも言えるものだ。

 同社は、サブスクリプション契約者向けのカスタマーサポートに対して、AI導入などの技術開発投資を継続的に行っている。さらに、非Linux領域での事業拡大を進めるにあたって、新たなカスタマーサポートの提供も開始した。Red Hatのグローバルサポートサービス部門のトップであるマルコ・ビル-ピーター氏に話を聞いた。

Red Hat カスタマーエクスペリエンス&エンゲージメント部門 バイスプレジデント マルコ・ビル-ピーター氏

カスタマーポータルが6年連続Award受賞

 Red Hatは、Linuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux(REHL)」、RHEL上で動作するOpenStackディストリビューション「Red Hat OpenStack Platform」のほか、非Linux製品として、クラウド管理ソフト「CloudForms」、「JBoss」などのミドルウェア、PaaS基盤の「OpenShift」や「Mobile Application Platform」といったOSSパッケージ製品を提供している。

 これらの製品はすべて、OSSコミュニティが開発したソフトウェアを同社が検証し、パッケージして配布しているもの。同社は、配布したパッケージの有償のカスタマーサポート(サブスクリプション)で収益を得ている。

 サブスクリプションで提供するのは、企業向けサポートのほか、無制限の「アップグレード」、システム構築やセキュリティ管理についての「ナレッジ」、Red Hat製品と併せて使う周辺ソフトウェアとハードウェアの動作を保証する「認定」などだ。

 これらのサービスは同社のサブスクリプション契約者向けのカスタマーポータルに集約されているが、「このカスタマーポータルは、2011年にオープンして以来、6年連続で“Best Web Support Sites”のAwardを受賞している」とビル-ピーター氏は自慢する。「Red HatはOSSで商売をしている。有償の価値を感じてもらうために、ポータルにも力を入れているし、ポータルから提供する有償サービスにも多くの開発投資をしている」(ビル-ピーター氏)。

Red Hatのカスタマーポータル

AIがシステム上のリスクを診断して解決策を提案

 同社のカスタマーサポート方針について、ビル-ピーター氏は、「オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドのどの環境においても、またこれらが混在したハイブリッドクラウド環境においても、一貫したサポートを提供する」と説明する。OSSを使ったハイブリッドクラウド環境は、インフラとソフトウェアの組み合わせの自由度が高く、様々な構成上の問題や、脆弱性の問題が起こり得る。ビル-ピーター氏らに要求されるのは、インフラの複雑性が増すなかで、カスタマーサポートの品質と満足度を維持することだ。

 同社のサポートサービス部門では、データサイエンティストが過去のサポートデータをもとに技術リスクやセキュリティリスクを分析し、ルールエンジンや、将来のリスクを予測して予防策を提案するAIの形でサポートサービスに実装している。

 同社がポータルサイトから提供しているシステム監視ツール「Red Hat Insights」は、同社が蓄積した膨大な技術サポート事例とテクニカルドキュメントをディープラーニングの手法で学習し、監視対象システムの構成や設定によって起こり得る問題を未然に検知して、その解決のための具体的なコマンドラインを提示するサービスだ。「複雑なハイブリッドクラウド環境でのシステム構成管理やセキュリティ対策をサポートするにあたっては、ユーザーにとって分かりやすく使いこなせるツールを提供することが価値になる。Insightsは、ユーザーに具体的なアクションをレコメンドするという分かりやすいツールだ」(ビル-ピーター氏)。

 Insightsは、国内では2016年3月に提供を開始し、これまでに東京海洋大学など数例の導入事例がある。

「Red Hat Insights」

非Linux製品の導入支援でその後のサポートコストを下げる

 Red Hat製品を展開するインフラが複雑化していることに加えて、同社の製品ポートフォリオの拡大も、サポートサービス部門への要求を難しくしている。同社は中長期的な経営戦略として、RHEL以外の非Linux製品の売上比率を高めていくことを目標に掲げており、今最も注力しているのはOpenShiftやJBoss、Ansibleなど近年買収した製品群の拡販だ。

 特に、ハイブリッドクラウド環境での非Linux製品のカスタマーサポート強化のために、同社サポートサービス部門では、新しく「クラウド・サクセス・アーキテクト」と呼ぶクラウドアーキテクト人材を置いた。クラウドアーキテクトは通常、顧客に製品を提案するプリセールスの立場で営業部に所属するエンジニアであり、Red Hatの営業部門にもプリセールス担当の「ソリューション・アーキテクト」と呼ぶチームがある。

 クラウド・サクセス・アーキテクトは、プリセールス部隊とは別に、サポートサービス部門の中でOpenShiftやOpenStack環境構築の支援を担うという。「非Linuxのソフトウェア製品は、案件ごとに使い方も要求も異なる。カスタマーケースごとに、細かなデプロイメントのプランニングをし、本番稼働させるまでのお手伝いするのがクラウド・サクセス・アーキテクトの役割だ。導入時のサポートを手厚くすることで、その後のサポートコストが削減できる」(ビル-ピーター氏)。

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