今回も充実のライトニングトーク、気になるアレの続きも
休憩を挟んで、続いてはライトニングトーク(LT)のお時間。中でも面白かったのは、「あの海底の片隅で」というタイトルで発表したファーストバッターの山崎 奈緒美さん。「とある旅行っぽい感じの会社で海外に232拠点を展開する会社なんですが、諸事情により社名は伏せさせていただきます」(山崎さん)
ということで、とあるユーザー企業の事例としてここでも紹介させていただくが、国内では知名度の高い企業らしい。海外での知名度はさほどでもないため「は? “彼の”って何だ?」と言われてしまうそうだが……あとはお察しください。撮影も禁止でした。
「お正月明けのセール真っ只中、こんなメールが届きました」(山崎さん)
そう言って示されたメールの日付は2017年1月12日。内容は、ベトナムとシンガポールを結ぶ海底ケーブルが切断され、ベトナム支店からAWSのシンガポールリージョンにまったくつながらないというもの。pingレベルで45%ロス、アプリケーションレベルではまったくつながらず、業務にならないというもの。ベトナム-東京間は健全だったため、急遽東京経由でシンガポールに接続するVPNを構築して対応することになった。
「そのときに便利だったのが、Greg's Cable Mapというツールです。海底ケーブルがどことどこを結んでいて、それぞれのケーブルの状態を知ることができます」(山崎さん)
こうしたツールで情報を得つつ、突貫工事で乗り切った山崎さんらが得た教訓は、次の4つ。冗長化だけではなく迂回経路も用意しておくこと、回線が不安定な場所があることを前提に設計すること、場合によってはオンプレミスも選択肢に入れること、最悪の場合に運用で乗り切れるよう回避策を考えておくこと。
「こうした教訓を得たんですが、2月20日にまた切れたらしいです」(山崎さん)
なんという見事なオチ! 日本のリッチなネット環境に慣れて当たり前だと思ってちゃダメってことですね。
もうひとつ取り上げておきたいLTは、NHNテコラス 岩渕さんの「あの日したLTの内容を僕らはもう覚えていない」というもの。タイトルに反して、おそらくほとんどの人が覚えていたに違いない。そう、NGN網で折り返してIPv4 over IPv6 IPsecの実証実験だ。
「今回も濃い話が多くて。ネットワーク初心者歓迎って言っときながらフルボッコにして返すスタイル、いいですね。前回のLTでヤリ逃げしようかと思ったんですが上司から『進捗どうですか』って言われまして。私も部下には言いますが、自分が言われるとシビれますね。進捗どうですかって」(岩渕さん)
そんな訳で上司命令で実証実験の続きを発表してくれた。前回はヤマハのルーターを使った検証環境でLuaが動くというところまでで終わっていたが、ホストのIPv6アドレスを定期的にチェックして、変わっていればRoute53のAPIを叩いて書き換えればいいんじゃないかなというところまで検証されていた。
「で、検証したんですが、IPv4 over IPv6 IPsecって、実はヤマハさんのルーターの機能としてすでにあるんですよね」(岩渕さん)
えっ、ここまでやっといて。じゃあヤマハのRTX5000使えば済むって話じゃないすか。と、拍子抜けしていたところに、畳みかけるように岩渕さんはこう続けた。
「RTXでできることはわかったので、他の機器でも試してみたいなー、netconfとか使える機器があればなーと思っているんですが、あれ、今日はネットワーク機器のベンダーさんがいらしてるんですよね? 見積もりとかいらないんで実機だけ貸していただけると……」(岩渕さん)
という訳で、今回も笑いいっぱいのLTだった。ちなみにLTが盛り上がってしまったため、懇親会の時間が40分から15分に減ってしまうハプニングがあったが、今回も実に楽しい勉強会だった。ビバ!プレミアムフライデー!