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ヤマハルーターのアイデンティティ「ISDN」のこだわりとは?

ヤマハルーターの“語り部”平野氏にRTX1000誕生の秘密を聞く

2015年09月11日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ヤマハルーターの新製品が出るたびにコンセプトやテクノロジーをわかりやすく語り続けてきた平野尚志氏。ヤマハネットワーク機器20周年を機に、ヤマハルーターの語り部である平野氏にメモリアルなRTX1000の思い出を聞いてみた。

よりよいモノを作るために力を合わせられるメンバーだった

ヤマハ 音響営業統括部 SN営業部 営業推進課 営業支援担当課長 平野尚志氏

 今回話を聞いた平野尚志氏は、長らくヤマハのルーターについてメディアに説明してきた人物。われわれから見て、“ヤマハルーターの語り部”とも言える存在だ。

 1987年、新卒で地元のヤマハに入社した平野氏はデジタルシステム研究所(当時)を経て、光学ドライブの開発を担当した後、1997年にルーターの開発部門に異動した。平野氏は「頭に血が上って議論しても、よりよいモノを作るために力を合わせられるメンバーだったことが大きかった。あと、お客様の声を反映したものづくりがやりたかったので、メーリングリストやホームページを使って、お客様と日常的にコミュニケーションができる環境も魅力的だった」と語る。

 ルーターの開発部門に配属された平野氏は、ヤマハルーターの技術情報ページ(www.rtpro.yamaha.co.jp)のWebマスターとソフトウェア開発を担当した。Webマスター業務としては、FAQ作成、OCNエコノミー向け常時接続設定例の調査と制作、検索エンジンの実装など進め、利用者の立場に立った情報提供を行なった。また、ソフトウェア開発業務では、ヤマハとして初めてのブロードバンドルーターであるRT140eの利用イメージ設計・仕様決定・複数LAN対応・NATディスクリプター開発などのブロードバンド回線対応などを進めた。さらに、RTA52i/RTA54iにおけるWeb設定機能の開発を通して利用者の要望に合わせてISDNやブロードバンド回線へ接続し、セキィリティを高める設定を自動生成する機能も実現してきた。

 「当時、ISDNリモートセットアップ機能で遠隔からヤマハルーターに入ることはできたけど、その先のLAN内のホストをメンテナンスするための、アクセスする手段がなかった。そこで、ルーターにTelnetクライアント機能を搭載して、サーバーなどのLAN製品をリモート操作できるようにしました」(平野氏)。要求仕様はシンプルなクライアントだったが、メール機能の動作確認などサーバーメンテナンスに汎用できるよう、Telnet以外のプロトコルやポートで通信できる機能も追加していたという。

ISDNバックアップがRTX1000に搭載されるまでの道のり

 このように開発に携わっていた平野氏が商品企画部門に移ったのはRTA54iの開発を終えた2001年7月。開発メンバーとして、商品企画や仕様に課題を感じていたという点もあり、上流の商品企画をやってみようと思ったという。とはいえ、もともと営業と開発しかなかったため、「師匠はなし。全部自分でやれ」というイチからの立ち上げ。「ベースは直感なので、それを周りの人が納得できるように情報を集めてくるのが商品企画だと考えていた」と平野氏は語る。

 ADSLの普及が本格化してきた2001年、RT105e/RT105pの商品企画は既定路線だったが、ブロードバンド時代に対応し、コンセプトを作り直したのが、2002年のRTA55i/RT56vやのちに大ヒット商品となるRTX1000/2000だ。「商品企画のスタートラインはRT105eの速いもの。ただ、私にはRT140eで実現していた使い方イメージがあったので、そちらに路線変更を提案したんです」と平野氏は振り返る。

ヤマハのイーサアクセスVPNルーター「RTX1000」

 この使い方イメージがISDNによるブロードバンド回線のバックアップだ。その着想を得たのは2001年12月に行なわれた某社のセミナーでのこと。セミナーではネットワーク構築事業者から拠点側のRT140eとセンター側のRT300i間で構築されたインターネットVPNをISDNでバックアップするというユーザー事例が披露された。しかし、この構成を実現するためにはADSLとISDNで2台のルーターが必要で、コスト面で中小企業や流通業での普及は難しい。平野氏は「ブロードバンド回線とISDN回線を1台で収容でき、しかもRT140eよりも、速くて安い装置が必要だと実感しました」と語る。

 しかし、検討の遡上にあがったISDNのプランに現場は半信半疑だったという。速いRT105eを作らなければならないというのは共通認識だったが、ISDNを搭載する意味がにわかには理解されなかった。「なぜISDN入れるんだ?の大合唱(笑)。ISDNなんてなくなる技術じゃないかと言わました。でも、他社と違って(LSIを自社開発している)われわれがISDNを組み込むのは負担にならない。負担なく差別化できる可能性があるのであれば、入れましょうよと話してまわってみた」と平野氏は当時を振り返る。

 バックアップのニーズを掘り起こしたい営業やマーケティング、他社との差別化を図りたい開発のメンバーの意見もあり、2002年4月には商品計画が承認。その後、マーケティングメンバーから「ブロードバンド回線って切れて信頼性が低くて困っているらしいよ」と一本の電話が入って、平野氏はヒットを確信したという。「企画段階で疑問を持っていたメンバーも、最後はさまざまなバックアップ機能の開発に打ち込んでくれた」(平野氏)とのことで、複数のLANポートとISDNを組み合わせた多彩なバックアップソリューションが用意された。

お客様の声に向き合った製品は信頼を勝ち取れる

 企画承認から半年後の2002年10月、RTX1000は発売された。過去から型番も大きく変えたRTX1000は、ブロードバンドというベストエフォートな回線を、ISDNという信頼性の高い回線で補うことで、インターネットVPNを安心して使えるようにした名機であった。結局、RTX1000は予想を超える勢いで売れ続け、ヤマハルーターの代表製品となった。

 そして、商品価値に気がついたのが、国内最大手の通信事業者であるNTTだ。フレッツ・ADSLやFTTHの普及に注力するNTTは、VPNパッケージ「OCNビジネスパック」のルーターとしてヤマハ製品を採用。ユーザーベースを拡げることになる。「ブロードバンド回線用のVPNルーターなので速いのは前提。ただ、速いだけであれば、他社製品でもよかった。でも、OCNビジネスパックでヤマハルーターはISDNバックアップオプションの製品として選択されているんです」(平野氏)とのことで、速度以外の付加価値を追求した結果だという。

 RTX1000はブロードバンドの普及期、企業向けのVPNルーターの標準機としてスモールビジネス市場に長らく君臨。2005年にハードウェアの底上げしたRTX1100、2008年に筐体を一新したRTX1200が登場。一方、RTX1000は2008年3月に生産を終了する。あの頃を振り返り、「お客様の声に向かってできた商品は、信頼してもらえるんだという実感を得られた」と語る平野氏。ユーザー主体の商品企画・開発は、今も変わらずヤマハのネットワーク機器に息づいている。

「お客様の声に向かってできた商品は、信頼してもらえるという実感を得られた」(平野氏)

特設サイトではWebメディア3社座談会も掲載中!

 

ヤマハのネットワーク機器20周年の特設サイトでは、Webメディア3社(ASCII.jp、ImpressWatch、マイナビニュース)によるの記者による座談会「メディアから見たヤマハ」が掲出されている。アスキーからはTECH.ASCII.jpの大谷イビサが参加しているので、ぜひ内容をチェックいただきたい!

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(提供:ヤマハ)

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