ASCII.jpでは、油没冷却PCを過去に何度か検証している。直近では、Core m版スティックPCの油没を行ない、Core mまでならば問題なく冷却できるローコストなフォーマットを生み出す成果を得た。
では、次はというと、デスクトップPCをどうにかしたい。とはいえ、過去の実験ではAPUの「A10-6800K」の熱に完全敗北しており、方法が思い浮かばない。
そこで、なにかヒントを得られるかもしれないと思い、海没コンピューターの実験を行なっている国立情報学研究所 鯉渕研究室の門を叩いてみることにした。
えっ、海没? そう、その名の通り「海に没して冷却するPC」である。
ASCIIが海没コンピューターを調べているとき
国立情報学研究所はASCIIの油没PCをチェックしていた
PCの冷却は、ファンや自然流入を利用した空冷が主流だ。これは自宅のPCを見てもわかるだろう(ASCII.jp読者の一部は水冷や液体窒素冷却かもしれないが)。ただ空冷では大規模なPCの発熱への対応に限界があり、また施設の規模も大きくなってしまう。
これはサーバーやスーパーコンピューターでもそうだし、小型PCにパワフルな構成をインストールしようとすると、冷却問題にぶつかるため、自作PCファンであればおなじみのジレンマともいえる。
それに対して、スーパーコンピューターではフロリナートやNOVAC、オイルなどを使用した液浸冷却が進んでいる。空冷よりも冷却効率に優れ、小規模で済むメリットが大きい。デメリットとしては液体のコストがあり、おいそれと導入は難しく、まだ普及しているとはいえない状況だ。
では、高価な液体を使用しないで済む手段があればいいということで、マイクロソフトは海底データサーバー「Project Natick」の実験を開始、国内では国立情報学研究所も海没コンピューターの技術開発を進めている。自然にある膨大な冷却源を使用するというわけだ。
ふわふわっと進めているASCIIの油没PCもカテゴリーとしては液浸冷却であり、なにげに最先端に属する(と、書いていて気がついた)。
ただ、マイクロソフトの「Project Natick」は、金属製の巨大な容器内に機器を設置して沈める。それに対して、国立情報学研究所は基板にコーディングを施すことで、直接的に冷却を行なう。つまり、これまでの油没と同じ路線というわけだ。
1年で動かなくなった
油没デスクトップPC
ASCII.jpで以前油没させた「A10-6800K」一式は、6ヵ月目の時点での起動を確認していたが、2017年2月の起動実験では、ファンは回転するものの、ブート画面が出ない結果になった。マザーボード上の液体電解コンデンサ周りに油が浸透して起動しなくなった可能性がありそうだ。
なお、油没デスクトップPCよりも前に制作した油没スティックPCは、油を交換せず1年経過したが元気に動いている。これは、スティックPCには液体電解コンデンサが搭載されていないからだと考えられる。
ともあれ、マザーボードに対してとくに保護をかけない場合、1年ほどで起動しなくなるというデータを得た。この点については後日の記事で触れる。
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